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激闘の行方・・・とちょっとした悪戯?

「ナティ!アッティス!こやつの正体が見えた。死ぬ気で力を貸せ」


 呼応するように覚悟を決めた二人が左右から挟み込む様に教祖に対峙する。


 その覚悟を見て取った教祖が嫌な顔をしている処を見ると、魔王様が見えたという正体が当たらずとも遠からずだという事を証明していた


 アッティスさんとナティさんもそれに感付いたのか全身から立ち上るオーラを強めつつジリッジリッっと教祖との間合いを詰めていく



 周囲にまで伝わる緊張感。嵐の前の静けさがより一層その緊張感を高める・・・


 お互いが発するオーラが触れ合う距離まで使づいた刹那、止まっていた時が動き出したかのようにトップスピードに乗った、アッティスさんの豪拳が教祖に迫る。今迄は隙を突くような攻撃しかしていなかったナティさんも鋭い爪で斬りかかる


 それに対応する教祖の大剣が唸りをあげて拳を打ち返し、爪を弾き飛ばす。驚異的な回復力を誇る教祖はともかくアッティスさんとナティさんも防御の事など考えていない打ち込みだ


 それが却って教祖に反撃を許さない猛攻になっているのだが、到底長く続くとは思えない。しかし、それでも捨身の攻撃を繰り返していく。力と力のぶつかり合いの余波がローラさんの張る障壁をビリビリと揺らす


「ローラさん、ローラさん。ちょっと良いですか?」

「なんじゃ少年。悪い顔をしおって」

「いやこの障壁なんですけど、部分的に弱くする事できます?」

「何?出来んことは無いが弱くしてどう・・・成程!」


 俺とローラさんがコソコソ打ち合わせをしていると、タイミング良く教祖の大剣から迸る斬撃が障壁の狙った処へ飛んでくる


「パリーン」

「グモォォ!」


 乾いた音を立てて障壁が呆気なく砕け散り勢いを失わない剣戟はそのままマンティコアに襲い掛かる。


 肩口から血を流すマンティコアに寄り添いながら使徒が此方を睨みつける。あくまでも教祖の斬撃が強すぎて障壁が壊れただけだ。文句は教祖に言ってくれと此方も目で反論しながら新たな障壁を張り直す


「上手くいきましたね」

「フッフッフ、少年。お主も悪よのぉ~」

「いえいえ。お代官様には敵いませぬ」


 コソコソと隠れながらほくそ笑む俺達。その後もチョイチョイ障壁の強度を弄って使徒達に嫌がらせする。偶に俺達の側の障壁も砕ける様に調整するのも忘れない。もっとも衝撃が当たらない角度を計算した上での話だが露骨にやり過ぎない所がポイントだ


 障壁の向こうではシリアスな命がけの戦闘が繰り広げられている。防御を考えないアッティスさんとナティさんは鮮血に身を染めての猛攻を続けている。それを受ける教祖の流す血の量も先程の比では無い。


 魔王様も隙を突いて魔法を放つが三人の距離が近すぎて効果的な威力を放てないでいる。血風吹き荒ぶ戦い、一撃一撃がお互いの命を削り取ろうと自らの身の心配さえ投げ出しての攻防が続いている


「ローラさん、ローラさん。ちょっと良いですか?」

「またか少年。今度は何じゃ!」


 応えるローラさんは口調の厳しさの割にその表情は悪い笑顔になっている


「障壁だけじゃ持ちそうも無いので魔法で衝撃を迎撃した方が良いんじゃないですか?」

「いやまだ障壁は十分に・・・そうじゃな。うん、迎撃した方が良いじゃろう」


 そう言ってローラさんは迫る衝撃や剣戟を魔法で打ち消し始める。そのお蔭で障壁に掛かる圧力が少なくなる。障壁の向こうで繰り広げられているのは人外の戦いだ。守りを高める為には打てる手は打っておいた方が良いのだ!


 タイミング良く?アッティスさんの豪拳と教祖の大剣がぶつかり合い大きな衝撃が部屋の中に迸る


 たまたま(・・・・)、あくまでもたまたま(・・・・)渾身の魔力を練り上げていたローラさんがその衝撃を打ち消すように炎の塊を放つ


 螺旋を描いて飛んでいく炎は余りの衝撃に狙いを(たが)えてしまい、教祖を含む三人を巻き込んで爆発する。


 魔王様が此方を睨んでくるが、たまたま(・・・・)狙いが逸れただけである。


「シマッタ。ネライガソレレテシマッタゾ」


 爆発の衝撃をもろに喰らった教祖が更に血塗れになる。勿論巻き込まれた二人にも少なからずダメージが有るだろう。すかさずローラさんはたまたま(・・・・)狙いが逸れただけだとアピールして疑惑の目を逃れる。セリフが棒読みになったのも勿論たまたま(・・・・)


「はわわ。ローラさん、気を付けなきゃ駄目です~」

「って、私の真似しないで下さい~」


 ハルカさんの口調を真似た俺のセリフに本人から突っ込みが入るが気にしない


「大丈夫です!一発だけなら誤射で済みます!」

「そうじゃの。誤射じゃからしょうがないの!」


 ローラさんもすっかりノリノリになっている。


「して、少年。次は何じゃ?」

「そうですね・・・って、痛い!」

「調子に乗り過ぎよ智大!。ローラさんも悪乗りしすぎです!」


 伶に怒られた・・・。同時に繰り出された拳骨が俺の頭にクリーンヒットする。流石に調子に乗り過ぎたか!?


「僕もそのノリは嫌いじゃないけど、もう少し場を(わきま)えないと・・・」


 苦笑いのタンドさんからも注意が飛んでくる。流石に自重した方が良さそうだ・・・


 と、非難の視線から逃れる様に障壁の向こうの激闘へと目を向ける


 魔王様が牽制の小細工では無く渾身の魔力を込めた魔法をその頭上に浮かべる。空気が震えるほどのそれを準備しながら血だらけの二人に向かって叫ぶ


「ナティ!アッティス!奴の動きを止めろ!!」


 その言葉に反応した二人は視線をずらす事無く教祖へと迫り、無数の弾幕の様な攻撃で教祖をその場に釘付けにする


 そのまま二人の事には構わずに魔法を放つ魔王様。刹那、眼を焼く閃光が迸り教祖諸共に光の爆発が部屋いっぱいに広がる・・・


 ビリビリと障壁が悲鳴を挙げ床は地震が起きた様に揺れる。耐えきれなくなった障壁が砕け散ると魔法の余波をまともに食らった俺達も吹き飛ばされる・・・


 この威力ならば巻き込まれた二人もただでは済まないだろう・・・。伶を庇ってその腕に抱きしめながら何とか頭を挙げて視線を向ける。


 舞い上がった砂塵が徐々に収まっていくと吹き飛ばされたアッティスさんとナティさんが血塗れで床に横たわっているのが見えてくる。目を凝らすと微かにその胸が上下してるので何とか無事だろう。


 魔法を放った魔王様も余波に巻き込まれたのか血を流しながら片膝を突いて爆発の中心部を睨みつけている


 そして砂塵が晴れた時、片腕を失い真っ二つに折れた大剣で身を庇った教祖が立っていた・・・


 流石に此処までか・・・あの攻撃、神の子三人が自らの犠牲も気にせずに放った攻撃で無事ならば俺達に出来る事はもう無いだろう・・・


 諦めの視線を向けながら伶を抱く腕に力を込める。それに気付いた伶も同じ心境だったのだろう、何も言わずに抱き返す腕に力を込めてきた・・・


「ローラさん・・・」

「まだじゃ!まだ終わっとらん!」


 いや、そのセリフはフラグ・・・


 少しだけ残っていた、なけなしの余裕を振り絞って突っ込もうとした瞬間・・・


「がはっ!」


 教祖の口から血の塊が吐き出される。そのまま身体をくの時にまげて苦しむ教祖が呻く様に言葉を絞り出す


「がぁっ!・・・き、貴様・・・まだ・・・」


 教祖の身体から何かが飛び出すように地面を転がっていく。それと同時に急速に力を失っていく教祖・・・


「ふぅ。やっと出られたわい」


 さっきまでの激戦の残滓の残る部屋の中にあっけらかんとした声が響く。


 なんか軽い・・・言葉に重みという物が感じられないそれを発した人物がヤレヤレといった感じで立ち上がる


「ご苦労じゃったな。お蔭で助かったわい」


「ジジイ!」


 髭を伸ばした白髪の老人が曲った腰を伸ばしてトントンと叩きながら礼を述べる。


 それに応える憎々しい感情を込めた魔王様の言葉が部屋に響くのだった・・・



シリアス先生は出張中です・・・


エピローグを含めて、あと二~三話で完結の予定です


読んで頂いて有難う御座います

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