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怨嗟

昨日は投稿出来なくてごめんなさい


子供の運動会の後、爺婆の突撃で執筆の時間が取れませんでした。

取敢えず家族サービスをさぼっての執筆なので、誤字脱字のチェックが出来ていませんが後ほど見直します



「いいね。いいよ、これこそ戦いだね」


 教祖の速さに追いついた俺に一瞬驚きはしたものの、喜色を浮かべたその顔は先程までのヘラヘラした笑みではなく本当に嬉しいといった表情に変わっている


「僕はね、生まれてから一度も本気なんて出したことが無いんだ。まだまだ付き合ってくれるよね」

「遠慮しないでさっさと本気出してくれ。俺は疲れるのは嫌いなんだよ」


 軽口を叩きながらもお互いの攻撃は緩めない。相変わらずオーラで覆った身体のみで戦う教祖。武器を持たない格闘戦がメインなのか武器を持つ気配はない


 俺も教祖の動きに追いついたものの、その闇色のオーラを打ち破る事は出来ていない。いや、正面から攻撃が当たれば・・・とは思うのだが巧みに受け流されまともに剣戟が入る事は無い。


 これだけの動きと硬さを誇るオーラが有れば武器など持たなくても十分なのだろうか。無敗を誇る格闘術の末裔とか、そんな設定は勘弁願いたい処だ


『神眼』にうつる隙、黒い線に沿って攻撃を繰り出しても剣の横合いに添えるように当たられた手であっさりとその軌道を変えられて、逆にカウンターの一撃が飛んでくる。身を捩る様に躱して左手で牽制を加えて体勢を整える。


 それを読んでいたかの様に繰り出される蹴りを膝と肘を合わせたブロックで受け、そのまま一歩前の出る様にして突きを放つ。崩れた体勢のままピョンと後ろに下がる教祖。・・・辛うじて服を掠った程度か?


「フフ~ン。凄いね。この服高かったんだよ?」


 間合いが空いた事で、動きを止めた教祖が服の裾を持ち上げながら感心したようにおどける


「何が高かっただよ。自分で稼いだ金でも無いだろ?」

「ありゃ、痛いトコ突くね~。確かに引き籠りのニートだけどさ」


『属性解放』のスキルのお蔭で長時間でも『迅雷』の効果は維持できるし、前よりも効果は上がっている筈だ。それでも服を掠るのが精一杯という現実。俺の方は服と言わずあちこちに打撃の痕が残る状態。どちらが優勢かは一目瞭然だろう・・・


 それでも突っ込む。『縮地』を使って一挙に間合いを詰めると、左右の剣で突きのラッシュ。内側から手を添えるように力を加えて攻撃を逸らした教祖が更に間合いを詰めてくるのを下からの斬り上げで防ぐ。スウェーで躱した教祖、その顔面目掛けて更に突きを繰り出す。伸びきった体勢を回転させることで突きを躱しそのまま剣を巻き込む様にしての裏拳を剣の腹で受けながらそのまま前へと駆け抜け間合いを取る


 刹那、首筋の辺りにチリチリと感じる気配に後ろを確認せずに身体を捻って横薙ぎの剣を振るう。間合いを詰めてきていた教祖はしゃがみこんで、その剣を躱すとそのまま身体を伸び上がらせる様にして拳を放つ。床の砂塵をも巻き込んだその一撃が鼻先を通り過ぎる。クロスした剣を解き放つようにして放った斬撃を左手一本で受け止めて笑う教祖


「今度のは躱せなかったよ。うんうん、もう少しだね」

「次はその(つら)にお見舞いしてやるよ」


 そう言って後ろに飛び退る様に間合いを開ける教祖。軽く押されただけの様に見えるが俺に追撃を許さない程の力に負け惜しみを言うのが精一杯だ


「怖い怖い。折角イケメンに転生したんだから顔は辞めて欲しいな」


 おどける教祖・・・こっちが追撃できなかった事位は把握した上での余裕だろう


 先程までとは丁度反転した位置取りだ。教祖の後ろ、氷の壁の向こうの伶達が必死に壁を壊そうとしているが芳しい成果を得られてはいない。まだ時間が掛かりそうだ・・・


「あれれ?もう御仲間が恋しくなったのかい?もう少し楽しもうよ」


 俺の視線を読んだのか嘲笑うように両手を竦めて挑発してくる教祖。


「な~にあいつらがきちんと働いてるか、確認しただけだ。それに頼もしい仲間はきちんとついているからな」


 俺の言葉が終わる前に放たれるスラちゃんの魔法。迫る風の刃にタイミングを合わせて俺も間合いを詰める。教祖の動きを予想した先読み分も含めた複数の風の刃、後ろから迫るそれを振り向きもしないで同じ魔法で相殺しつつ俺の攻撃に対応する教祖。だが動きが少し鈍ったか剣を捌くと言うよりガードの割合が高まる。


 打ち付けるように放つ剣戟で体勢を崩そうとするが堅いガードはそれを許さない。背後からスラちゃんが魔法を放ってやっと打ち合い・・・情けなくもなるが先程よりはまだましだ。構わず攻撃を加える


 素早い二連撃の後に両手で同じ軌道を描く様に威力を込めた一撃。ガードしつつ後ろに押されるように地面を滑る教祖。魔法を放ちつつ間合いを詰めたスラちゃんが身体を器用に伸ばし教祖の足を狙う様に横薙ぎに攻撃する。


 両足で踏ん張っていた筈の教祖はその一撃を闇色のオーラで弾き返すと生み出した火の玉でスラちゃんを攻撃する。床に当たって弾けた炎を躱しながら風の刃を牽制で放ちつつ移動するスラちゃん。それを視界の端に納めつつ直線で教祖を挟み撃ちにできるように俺も移動する


「おお、これは流石に大変だ。本気出さないと危ないかな?」


 言葉と表情がまるであっていない・・・おどける様に笑う教祖


「暴風!」


 ここで切り札を切る。『属性解放』スキルのお蔭で同時解放でも身体的な負担を少なく出来る。これで追い込めないと流石にきつくなる。自らの背中に風を受け一挙に間合いを詰める。剣戟に暴風の渦を纏い威力の上がった斬撃が教祖の腕を引き裂く。風に煽られ血飛沫が舞う中、さらに追い打ちで放つ斬撃。


 風を操り自分へと放つ事で予備動作無しで移動する。今迄の様に正面からの攻撃では無く左右に移動しながら両の手で放つ斬撃は予測不可能な動きを見せる。教祖が放つカウンターの拳を身体に届く前に風の防壁で防ぐ、伸びきった腕に攻撃を加える。闇色のオーラが両断を防ぐが浅からぬ傷を刻み付ける


「あはっ!血だ!赤い血だ!!僕の血だって赤かったんだ!!!」


 顔を歪める教祖。しかし苦痛では無く何かに対する歓喜?そんな複雑な表情だ


「ははは、感謝するよ。僕だって普通の人間だって証明できたよ!」


 構わず繰り出す俺の攻撃に傷付きながら訳の分からない事を紡ぎだす


「僕はね生まれてから一度も怪我なんてしたことが無いんだ。」


 スラちゃんの風の刃が背中を斬り裂く。そして舞い上がる血潮・・・


「信じられるかい?只の一度もだよ。擦り傷だって付いた事が無い」


 俺の剣が奴の肩を斬り裂く。まるで斬られるのが嬉しい様に。防ぐつもりも無いのか為すがままだ・・・


「普通なら怪我をする。そんな状態でも傷付く事の無い身体、初めは母上も安堵してくれたさ。大丈夫?怪我は無い?ってね」


 もう躱しもしない教祖。纏った闇色のオーラのせいで致命的な一撃にはならないとは言え普通の状態では無い


「でもねその内気付いたんだろうね、我が子の異常さに・・・でもね母上は変わらず愛してくれてたんだ」


 歓喜の表情を浮かべたままの顔に悲哀が混ざる


「僕が乗った馬車が崖から落ちたんだ・・・哀れ同情した人間は皆死んじゃったよ。まぁ当たり前だよね」


 俺とスラちゃんの攻撃を受けながら立ち尽くす教祖。血を流しながらも語るのを辞めようとはしない


「父上も兄様もみんな死んじゃった。母上も動転していたんだろうね。でも彼女はその時なんて言ったと思う?」


 教祖の異常さに流石に手が止まる・・・


「化け物!皆が死んだのはお前のせいだ!ってさ」


 静寂が辺りを包む。全身から血を流しながら悲哀の混じった歓喜の顔が更に歪んでいく


「僕には秘密が有った。この身は祝福を受ける筈の身体だったんだよ・・・ある目的の為に用意された身体、本当は別の魂が宿る筈だったんだ・・・」


 教祖の歪んだ顔からは止めど無く涙があふれている・・・


「この身体は主神マルドゥックが用意した身体、彼が現世に下りる為の身体さ。そして僕が飲み込んだのもマルドゥック、僕の中には彼の力が宿っている!」


 そう告げた教祖の顔からは歓喜の表情は失せている。彼の顔を染めるのは怨嗟・・・


 この世の全てを恨む教祖が告げる言葉・・・


「僕は神々を許さない!」


 部屋の中に教祖の怨嗟の言葉だけが響くのだった・・・

読んで頂いて有難う御座います

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