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第三戦 男たちの戦い

「う~ん流石にあそこで神の子が出てくるのは反則じゃないかな?」

「何を言ってやがる。お前たちだって魔物や邪人を召喚するだろう。ならこっちだって一緒だろ」


 先程と同じく戦いが終わった後に画面が切り替わり教祖が現れた。しかも反則とか言い出したからこっちもムキになってしまう


「まぁでも楽しかったし良いか。アミルのあんな姿見れると思ってなかったしね」


 彼女の醜態を思い出したのかクッククと肩を震わして笑っている


「ホントお前ら何なんだ?いったい何が目的で邪教徒達を唆した?」

「唆すなんて人聞きが悪いな。ちゃんと邪神復活の可能性だって有ったよ?」

「何で疑問系なんだよ!」

「あははは。まぁ僕に会った時のお楽しみさ、ほら次の戦いが始まるよ」


 のらりくらりと此方の質問の答えをはぐらかす教祖。そのまま何も答えずに画面は次の戦いを映し出す。炎を宿す火属性のハルバードを構えるポンタさんと大剣を肩に担ぐ様に立つ男の姿だ


「儂は獣人族のポンタだ。戦いの前に名前を教えてくれぬか?」

「・・・和馬だ」


 ボソッっとした感じで本当に名前しか喋らない。伶たちと戦った使徒の女と並んで教祖の後ろに立っていたのだから使徒だと予想がつく。しかも「かずま」・・・間違いなく日本人だろう。邪教徒側の使徒も召喚、若しくは転移してきた人物だ


 そのまま大剣を正眼に構える和馬と名乗った使徒、もうこれ以上話すつもりは無いのだろう。ポンタさんも無言でハルバードを構える


 ジリッジリッと間合いが詰まっていく。武器の間合いは長柄のハルバードを持つポンタさんの方が広いだろう。しかし和馬の持つ大剣の長さも相当なもので通常の大剣よりは間合いも広そうだ


 と、いきなり床が爆ぜる。そうとしか表現できない突進を見せる和馬が上段からの打ち下しの一撃を叩きこむ


「むう!」


 両手で持ったハルバードの柄の部分で受け止めるポンタさんから驚愕の言葉が洩れる。普通の武器ならば折れそうな一撃を迷宮で貰ったハルバードはよく耐えた。そして大剣を力で押し返すポンタさんの膂力も負けてはいない


 そのまま力比べの状態に入る。体格としてはポンタさんが和馬よりも頭一つ高い。しかし大剣の勢いを殺す為に沈み込んだところを上から押されているので態勢は和馬が有利だろう


「ぬぅおおお!」

「ふぬぅううう!」


 二人とも漢臭い叫びをあげながら相手の武器を押し返す。和馬の太い腕にはこれでもかって感じで血管が浮き上がり筋肉も隆起している。ポンタさんは半獣化しており腕は毛に覆われている


 完全に獣化してしまうと武器も握れなくなるし思考が獣側に引っ張られてしまうらしい。しかし獣化した時の身体能力の向上は惜しいという事で編み出したのが半獣化という物で、戦士団に所属する獣人さん達は皆この能力を身に着けている。その中でもポンタさんは思考はそのままで身体能力は限りなく獣化した時に近くなるというのだ。流石ポンタさん、努力の人って感じのキャラクターがピッタリだ


 拮抗した状態は和馬が後ろに下がる事で一応の決着を見る。膂力はほぼ互角、体勢が不利だったことを考えればポンタさんが若干上かも知れない。そうなればお次は・・・


 間合いの外まで下がった和馬の姿がブレる。高速の足捌きでその残像を残し廻りこむようにしてポンタさん目掛けて迫る。振り向きざまハルバードが和馬の大剣を弾く、弾かれた和馬は無理をしないでまた廻りこむとコンパクトに大剣を振るう。その場から動く事無くポンタさんはハルバードの遠心力を上手に使いながら大剣を弾いて行く


 スピード勝負は完全に和馬が上。しかし元々戦い方が防御主体のポンタさんはその場から動く事無く和馬の攻撃を打ち払っていく


「フッ」

「お主もなかなか・・・」


 なんか短いやり取りで理解しあっている二人・・・なにこれ?このまま強敵と書いて友と読むパターンか?


 部屋の中央でどっしり構えるポンタさんの周りを和馬が飛び跳ね、距離が近付くたびに「ギィッン」と金属音が響く。しかし速さだけではポンタさんの防御力を抜けない和馬。このままでは先程の力比べと同じで膠着状態になるだろう


 それを悟ったのか二人とも再び距離を取る。力はほぼ互角、スピードは和馬、防御はポンタさんに軍配が上がってる。さて次は・・・


「ヌゥウン!」


 何処かの世紀末覇者の様な掛け声と共にポンタさんが動く。ハルバードに炎を纏い下から振り上げる様に和馬の大剣を狙って攻撃を加える。そのまま石突で空いた正面へと突き入れる、当然和馬がそれを払うとその力を利用したようにハルバードを回転させて斧の部分を打ち付ける。


 スピードは和馬の方が上と言っても半獣化している状態のポンタさんとて遅い訳では無い。野生の熊だってのろい訳では無いのだ。人の意思と知恵を持って鍛えた野生の熊と考えればポンタさんの戦闘能力の高さを想像できるだろう


 ポンタさんの猛攻に和馬も守りを無視した攻撃で応える。互いに防具は身に着けているが二人の攻撃力であれば気休めにも成らないだろう。戦いに重要な部分への攻撃だけを防ぎそれ以外は気にも掛けない


 まさに漢の戦いといった様相だ。漫画とかならヒロインが心配して涙目で見つめ、脇役の女の子が「ホントに男って馬鹿ね」とか言って呆れるようなシーン


 剣闘士の様な悲壮さは無い。格闘技の様な駆け引きも無い。己の存在意義を試すかのような力と力、そして技と技のぶつかり合いがモニタの画面いっぱいに広がる


 彼方此方から流れた血が武器を振るうたびにその先端から遠心力で飛び散る。魔法と魔道具が主体のこの世界に措いて此処までの肉弾戦はあまり無いだろう。それだけに目が離せない、一瞬の気の緩みが即、致命の一撃になるであろう攻防のなか二人の口元には笑みが浮かんでいる


 正面からハルバードと大剣がぶつかり合い衝撃で二人の距離が離れる


「フ、フフフ、フハハハ!いいぞポンタ殿、これこそ自分が求めていた戦いだ!」

「気持ちは判るが儂はそこまで突き抜けることは出来んな。儂には守る物が多いからの」


 歓喜の表情の和馬に対し冷静な言葉で返すポンタさん。しかしその表情には満足そうな笑みが浮かんでいる事に本人は気付いているのか・・・


「まぁどうでもいい。次で最後だ」

「良いだろう。存分に向かって来るがいい」


 剣氣と言えば良いのだろうか・・・目に見える程のオーラが武器から立ち上る。それが二人の間でぶつかり合うと火花を散らすようにバチバチと弾ける


 身の丈ほども有る大剣を上段に構える和馬に対し、防御を固めカウンターを狙うポンタさん。本来のスタイルの戻って最終の一撃を叩きこもうと二人のオーラが高まっていく


「行くぞ!おおおおお!!」


 当然動いたのは和馬だ。元々の戦闘スタイルが攻撃重視の戦士だ、和馬が動かなければポンタさんも動く事は無い。上段に構えた大剣を間合いを詰めた勢いも加えて振り下ろす。もうそのまま一回転しそうな位に体重も乗せた一撃。大剣には剣技を発動した証の赤い光が宿っている


「クッ!まだまだぁああ」


 受け流してからのカウンターを狙っていたポンタさんだが、剣技まで発動した大剣の勢いに受け流す事が出来ず咄嗟にハルバードを両手で支えて受けの体勢に入る。奇しくも最初の時の再現の様になる


「貰ったぁ!」


 和馬が叫ぶ。ポンタさんの持つ迷宮で手に入れたハルバードが大剣を受け止めた部分から真っ二つに折れ、そのままポンタさんの身体を斬り裂く。飛び散る血飛沫・・・


「まだだ!まだ終わらんぞ!!」


 袈裟懸けに斬り裂かれたはずのポンタさんが下からスマッシュの様に拳を突き上げる。大技を放った和馬、しかも全身全霊で放ち確かな手応えが有った故の油断だろう。ポンタさんの一撃は和馬の顎に綺麗に決まった


 ポンタさんが斬り裂かれた防具を脱ぎ捨てる・・・中から現れたのは鎖帷子?


 それは八柱教団の騎士団が鎧の下に着る物とよく似ている


「イストのお蔭か・・・」


 ポンタさんの呟きは小さかったがその声を拾ったモニターからはしっかり聞こえる。どうやらイストさんから贈り物らしい・・・


 って言うか、それアップでよく見るとちょっとおかしいよね!?普通小さい鎖を編んで作る物だけどハート?鎖じゃなくて金属で出来たハートで編んであるよね!?


 イストさんが作ったの?それともイストさんが依頼した物?それは職人さんが可哀想だぞ。


 想像してみてよドワーフのおっさんが金属をハートに加工している処を・・・


 うん、イストさんが編み込んだことにしておこう。その方が平和・・・って、それはそれで怖いよ!手編みのセーターでも重いって人がいるのに手編みの鎖帷子だよ!!しかもハート形!!イストさんってヤンデレ属性持ち?


 ま、まぁ勝ったのだから良いか・・・ほぼ互角の二人だったけども愛する人がいるかどうかが勝負を分けたって事かな?やっぱり大事なのは愛だよ!愛!!


「クッ・・・リア充め」


 和馬が力尽きた様に気を失った・・・最後のセリフが情けないけど勝負としては見事な相手だった


 教祖を斃したら誰かいい子を紹介してやるからな・・・


あれぇ~シリアスで行くはずだったのに・・・


読んで頂いて有難うございます

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