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狼達との戦い

遅くなってすいません

 深夜の襲撃はある意味定番の狼たちの襲撃だった。野営中に襲ってくる魔物としてはポピュラーな部類だ。てっきり邪人達を召喚しての夜襲だと思っていたのだが今回は魔獣が中心の編成、しかも群れ単位での襲撃らしくボスになるウルフ系の上位種が率いている為、組織立った攻撃が正直うざったい


 伶やローラさんとハルカさんを中心に俺、ポンタさん、ブルーベルとタンドさんで四方を守りつつルビーゴーレム達で隙間を埋める陣形で対応していく


 草原に住み着いた狼では無いだろう。本来は草原には居ない種類の狼たちが混じっている事から召喚された魔獣だという事は間違いない


 目の前の一頭が突進してくる。その陰になる様な位置取りで二頭の狼が襲ってくるのを視界の端に納めながら飛び掛かってくる狼に剣を振るう・・・が、あっさり躱され後続の狼が足元を狙って噛み付いてくる。左手の剣で捌く様に振るってやるとサッと身を躱して引き下がる


 先程からこんな展開の繰り返しだ。素早さを生かした攻撃ともいえるが、本気で攻めてきていない。俺達の疲労を誘いながら陣形が崩れるのを待っている様な行動・・・


「少年、焦るなよ。本番はこれからだからな」


 ローラさんの注意が飛んでくる。範囲魔法で吹き飛ばしてやりたい処だが警戒している様で一纏まりに成らない様に分散している上に、α狼と言われる群れのリーダーたちは後方に控えている指示だけを飛ばしている


 このまま膠着状態が続けば群れのボスの座を守るためにα狼たちが前に出てくるだろう。本番はそれからだと判ってはいるのだが・・・


 魔獣を召喚した邪教徒達にしてみれば今夜の襲撃で明日に疲労を残せれば儲け物。本気の攻めでは無いだろうから狼系の魔獣の攻め方は寧ろ期待通りという訳だ。その思惑が簡単に予想できるだけに弄ばれている様で余計にイライラが募る


「ウォーン!」


 後ろに控えていたシルバーウルフが遠吠えの様な鳴き声を上げると包囲していた狼たちが波が引く様に後ろに下がる。それと入れ替えに各リーダーたちが前に出てくる


「って、おい。でかいな・・・」


 ウルフ系の魔獣と一言で言っても種族としては幅広い。草原を駆けるグリーンウルフや森の捕食者であるフォレストウルフ。山岳地帯などの標高の高い処にいるシルバーウルフ。その他に様々な亜種として迷宮や特殊な地形には属性を持つファイヤーウルフやスノーウルフなどが確認されている


 当然、魔獣としての危険度はバラバラだ。単体で見れば属性を持つファイヤーウルフやスノーウルフが危険とされるが集団の場合は寒冷地に棲み体格も良く山岳地帯で鍛えられた俊敏さや筋力で勝るシルバーウルフが一番危険だと言われる


 そのシルバーウルフのα狼。おそらくこの混成部隊も纏め上げたであろうその風格は、属性持ちの狼すら従えて、魔狼に匹敵するほどの雰囲気を漂わせ各種族のウルフたちのリーダを引き連れゆっくりと進んでくる。


「ローラ、障壁を頼む。防御を固めてくれ」

「判った、気を付けろよ。」


 奸智に長けた狼たちだ。例えリーダたちが戦っていようとも隙があれば後衛組を襲う可能性は十分にある。流石に属性持ちの狼達と各種族のα狼達と戦うとなれば陣形が崩される可能性は十分にある


 ポンタさんの判断は攻撃魔法の支援よりは防御を固めて貰う方が戦いやすいという事だろう。伶が魔法でのステータスアップを掛けた後にローラさんが障壁を構築して守りを固める


 それが完了すると、まるで俺達の準備が整うのを待っていた様にポンタさんへとシルバーウルフが低い体勢で突っ込んでくる。


 ブルーベルにはフォレストウルフのリーダが複数で襲い掛かり、俺にはファイヤーウルフとスノーウルフがそれぞれ連携を取る様に襲い掛かってくる


 タンドさんの所にも同じように向かっている筈だが確認するだけの余裕は無かった。大体属性が正反対の二頭が襲い掛かってくること自体が普通じゃないのだ。住んでいる場所も違う上に属性持ちは群れる事が無いのが基本なのだから


「なんか俺だけ不利じゃないか?」


 思わず不満を漏らす。属性持ちは種族特性として持っている属性の魔法やブレスまで吐いてくるのだ。炎を吐く狼なんてもはや狼とは言えないと思うのだが・・・


 ブレスや魔法はローラさんと伶が相殺してくれるとはいえ、このままでは被害が大きくなる。障壁とルビーゴーレム達に守りを託して戦いの場を移す


「さぁこっちだ。掛かってこい」


 隙をついて二頭の間を駆け抜けると反転して二本の剣をクロスさせるように構える。後ろに狼たちの群れ、目の前にファイヤウルフとスノーウルフがいて、その向こうが先程までいた場所だ


 この位置取りなら二頭のブレスや魔法は狼たちの方へと向かう訳だから後ろを気にせずに戦える。変な縛りプレイが無くなれば属性持ちとはいえ所詮は狼だ。『神眼』と『剣聖』のスキルがあれば充分に戦える


 スノーウルフの吐く氷雪のブレスを右手の剣で引き裂く。『神眼』でブレスの構成の弱い所を見極めた上で『剣聖』を使った剣技。例えブレスだろうと斬れない物は無い


 ブレスを使う魔獣は様々だが、非常に強力な事は種族関係なく共通する事実だ。しかし、口からの攻撃である以上は死角が増えるという欠点を持つ


 欠点と言っても普通は防ぐ事など出来る訳が無く、躱すしか手が無い攻撃なのだから欠点足り得ないからこそ恐れられる。


 その攻撃を斬り裂いて現れる俺の姿にスノーウルフの表情に驚きの色が混じる。ブレスを斬り裂いた右手はそのまま。左手の剣でスノーウルフを斬り裂こうと迫る俺に横合いから紅蓮のブレスが迫る


 急停止。地面に両足を着け速度を落とすと目の前をブレスが通り過ぎ余波だけで髪の毛を焦がす。急停止の姿勢を強引に捻りこんで、勢いを付けるとブレスを吐いたファイヤーウルフへと間合いを詰める。


 ブレスの様な予備動作を与えないスピードに、横に跳びながら距離を取るファイヤーウルフ。その頭上には炎の槍が浮かんでいる。それを放つ隙を与えない。『縮地』を使って更に間合いを詰める。魔獣だろうと魔法使いであろうと近距離で魔法を使えないのは同じだ。


 自分の放った魔法、仮に耐性が有ったとしても自身に被害が出てしまう以上はおいそれとは使えなくなる。間合いを詰める俺に鋭い爪を振るうファイヤーウルフ。しかし二本の剣を持つ俺に対して四足で立つ狼の腕は一本しか振るえない


 右手の剣で受け止めると、左手の剣で喉元を狙う・・・が、スノーウルフが頭を下げた状態で身体をぶつけてきた事で、剣の軌道が逸れてしまう。軽く斬り裂いたぐらいで致命傷にはなっていない


「面白い。仲間を庇うか・・・」


 召喚魔法の影響なのかそれともシルバーウルフに率いられている影響なのかは判らないが、属性の正反対の狼が仲間意識を見せる。


 その姿に少し妄想が浮かぶ。左右に属性の違う狼を引き連れる姿は中々に魅力的に思える


「でもな。俺の従魔はもっと凄いぞ」


 狼達の背後から弾丸の様に飛び込んでくる物体がファイヤーウルフを吹き飛ばす。スベポヨな身体でパーティの癒し担当でもあり、進化した最強のスライムでもあるスラちゃんが俺には居るのだ


「きゅっ♪」


 得意げなスラちゃん。


 スライムと狼の戦い事体が、抑々(そもそも)有り得ない状況。その有り得ない光景が目の前で繰り広げられる。しかも狼の方が劣勢に立っているのだ


 ウルフ系の亜種、彼等だって進化した個体だ。しかしナティさんの秘薬とA級魔境である大森林の魔境、その迷宮内でたっぷりと魔力を吸収してアルティメットスライムへと進化したスラちゃんに、たかが狼程度が叶う筈が無い


 ファイヤーウルフをスラちゃんに任せて、目の前のスノーウルフへと意識を向ける。スキルの整理で能力を上げた俺だ、属性持ちであろうと一匹に負ける訳にはいかない


 一歩前に出ればジリっと言う感じで後ずさるスノーウルフ。体勢を沈めて間合いを詰める


「キャイーン」


 あぁ~スラちゃん、ファイヤーウルフをもう倒したのね・・・


 スラちゃんの特攻で敢え無く吹き飛ばされるスノーウルフ。その上で得意そうにピョンピョン飛び跳ねるスラちゃん・・・


 後ろを囲む狼達も「・・・」って感じで眺めている


 ま、まあいいか、他のメンバー。特にポンタさんの元へ向かったシルバーウルフは強敵だ。


 早く手助けに行かなくては・・・


 そのまま雑魚狼たちを蹂躙し始めたスラちゃん。


 なんか、初めからスラちゃんに頼んだ方が良かったか?と言う疑問が湧いてくる・・・


『神眼』だろうと『剣聖』だろうと、どんなスキルを持ってもスラちゃんに適う気がしないのは何故だろう


主人より強い従魔って勘弁して欲しい・・・


読んで頂いて有難うございます

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