表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
155/175

封印の地

「全拠点の制圧を確認、作戦終了です。お疲れ様でした」

「ふぇ!?ちょっと待って!て、手伝ってください~」


 天使さんがアスタルテ様に報告を入れ、そのままスタスタと去って行ってしまう。転移用の魔方陣を準備中のアスタルテ様は引き止めようとするが聞こえていない・・・いや、聞こえていないふりをした天使さんはそのまま部屋を出て行ってしまった。


「やっぱり正規雇用しないと駄目ですか・・・はぁ~憂鬱です~」

「って雇用なの?天使さんって神さまの配下じゃないの?」


 どうやらアスタルテ様の指令室の天使さんは非正規な為、契約外の仕事はしてくれないらしい。ユースティティア様の指令室のオペレータさんはそんな事無かったんだけど、と思ったが考えてみればユースティティア様は法と秩序の神さま。その辺りの雇用契約はバッチリって訳だ。つまりは初めの契約次第って事か・・・しっかりしろ主神代行


「でもゴヴニュ様の所からスチルに転移した時は魔方陣なんて無かったけどな」

「いや、そこはほら、一応封印の地な訳でして、大事な場所ですから手続きに色々在るんです~」


 誰も手伝ってくれない事を嘆きながら答えるアスタルテ様。身から出た錆と思いながら神さま業界の闇を見た気もする。いま作っている魔方陣の大部分は手続きの申請をする為の物で転移自体の術式はちょびっとだけとの事。より複雑化させることで安易に転移をさせない様になっているみたいなのだが・・・


「なぁ。なんか神さま達って信用ないのな?」

「そうね。雇用契約だったり申請の手続きだったり、本来は不正を防ぐ為の物よね」

「・・・そ、ソンナ事は無いでしゅ」


 あ~これは誰かがやらかしたんだろうな。レシェフのおっさん辺りが怪しいか。だって邪神と手合せだ!とか気合で解決しろとかいうタイプっぽい。体育会系脳筋上司・・・一緒に働きたくない上司№1だ


 元の世界に戻って就職した時を考えると本当にいそうで怖い。このままこっちの世界で暮らした方が楽そうな気がしてしまう・・・これから決戦だというのにテンションだだ下がりだよ


「はい。出来ました~」


 料理番組でアイドルが完成させた時の様なセリフに若干イラっとするのは俺だけか?・・・本当はスタッフが陰で作ってましたとか無いよな・・・


「よし。では乗り込むぞ!準備はいいな」


 今回もローラさん(引率の先生)が場を締め、その声にみんなの表情も引き締まる。俺も妄想を辞めて頷くと魔方陣へと進んで行く


「転移先には危険は無い筈ですが、念のため転移直後は警戒してください~」


 教祖達を封印の地へと追い込めたのは事実だが、それは相手も承知の上での行動だろう。転移で来ることは判っているだろうから奇襲される可能性も考慮しておかねばならない。


 邪神が眠る場所からは離れた場所を選んでいるらしいので転移場所を特定される可能性は低いとはいえゼロでは無い。ましてや相手の使徒には転移魔法の使い手がいるのだ、警戒する必要はあるだろう


 しかも都合の悪い事に封印の地への転移は人数も限られる上に次の転移まで時間が掛かるという事なので、先に近接戦闘の出来る俺、ポンタさん、ブルーベルを送って貰う。


 実際には4~5名が定員なのだが、ポンタさんとブルーベルが大きい為に人数が少なくなってしまうという、おまけ付きで条件が悪くなるばかりだ


「それじゃあ、送りますね~」


 アスタルテ様の声が聞こえたと思ったら目の前がブレる。神域の景色から送られた先はだだっ広い草原だった。アスタルテ様や他のメンバーがいない場所で目にしたのは・・・


「って、おい!邪人のど真ん中じゃねぇか!」


 俺達も吃驚したが邪人達も驚いたようで、近距離で眼が合うという貴重な体験をしてしまう。咄嗟に鞘から剣を引き抜くと目の前のゴブリンを叩き斬る。伶とゴブニュ様が創ってくれた剣の切れ味は凄まじく左右に別れたゴブリン、しかし当然その後ろにも邪人達はいる訳で、驚愕から復帰した奴から順に襲い掛かってくる


「智大、ブルーベル!お互いに背中を守れ」


 三人が背中を合わせるようにして後ろから襲われるのを防ぎつつ目の前のゴブリンどもを殲滅していく。幸い邪人達のなかでも雑魚ばかりなのが唯一の救いだ


 俺達が転移してきた場所だけがスッポリと空間が空いている事から、魔方陣が出来るとその場所にいた者はいなくなるらしい。ただそれが何処かへ飛ばされるのか、それとも消えてしまうのかは不明だ。


 この場所で戦っていれば俺達がどうなるのかは判らないし試したいとも思わない。しかし極端に移動すると後続が邪人達のど真ん中に転移してしまうのだから、邪人達の包囲網を崩しておく必要もある


 次の転移まで時間が掛かるとは聞いているが、具体的な時間まで聞いておかなかったのは失敗だった。転移してきた場所を中心にして三人で後ろをカバーし合いながら、魔方陣に巻き込まれない程度の空間を作るという作業を行わなければならないのに、その状態を維持しなければならない時間が判らないのだ


 しかも作戦は始まったばかりで、この後教祖達との決戦まで有るってのに体力も精神力もゴリゴリ削られていく


 目の前のゴブリンを袈裟懸けに斬り捨てると、脇をすり抜けようとする奴に剣を突き刺す。そうすると広く開いた側をすり抜けようとされるので倍の距離を移動して斬り付ける。さっきから反復横跳びをしながら戦っている様な物だ


 ポンタさんはハルバード。ブルーベルは大剣と大盾で間合いを広く取れる分、移動距離は少なくて済むがその分武器を振り回さなければいけないので体力は使うだろう。・・・ブルーベルの場合は魔力になるのか?


 新しい二本の剣を操りながら右に左に移動しながら敵を葬る。スラちゃんと一緒に来れば良かったのだが最近はフェニちゃんと一緒にいる事が多いので別行動中・・・飼い主としては寂しい限りだ


「って、数が多い!めんどくせー」

「黙って戦え。余計に体力を使うぞ!」


 正直、脅威としては殆ど無いのだが、場所を守りつつ戦うというのがキツイ。早く転移してきてくれと願いながら反復横跳びを繰り返す。


 このままなら分身出来るんじゃね?って位のスピードでの横移動だ。元の世界に戻ったらギネス記録を確実に塗り替えれる自信があるぞ


 下らない考えが頭に浮かび始めた頃合いで地面に魔方陣が浮かび上がる。その光の外側に陣取りながら、あと少しの辛抱と体力の残りかすを絞り出す


「はいはい~美少女ハイエルフの登場です~って、なにコレ?」

「ハルカ、タンド!支援の用意じゃ!」


 ハルカさん今はそんなボケ要らないから、早く魔法か天雷弓をお願い


「僕は前に出るよ。ハルカちゃん後ろをお願い!」


 タンドさんも前に出て邪人達と切り結ぶ。迷宮で手に入れたレイピアを華麗に操り一撃でゴブリンの眉間を貫く・・・この爽やかさは何だ?背景にお花と光の乱舞が見えるぞ


 スラちゃんがスチルの時の様に炎を纏い邪人達に突撃していく。ローラさんの魔法とハルカさん天雷弓が広範囲を蹂躙して、やっと目に見えて数が減ってきた。


 最後のゴブリンを斬り倒して、思わず座り込む。魔方陣の会った場所だけが綺麗な草原で後は邪人達の流した血と死体が転がるという風景に気が滅入る


「教祖さん。御持て成しのつもりかな?」

「まぁ様子見じゃろうの」


 ニヤッて感じで不敵に笑う年長組。こちらの転移場所をどうやって察知したのか等、疑問も残るが今は頭が回らない


 何でもいいよ。少し休ませてくれ・・・


 仰向けに寝転がり見た空は気持ちがいい位に晴れ渡っていた

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました。こちらも宜しくお願いします
守護霊様は賢者様
↓↓ポチッとすると作者が喜びます↓↓
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ