神の饗宴~2
続々と集まってくる神さま達。久しぶりな神さまもいるし最近会ったばかりの神さまもいる。
一応はきちんと挨拶を交わすのだが、みんな若干冷たいのは気のせいか?
今回、使徒として参加するのは俺と伶の二人だ。まぁ単純に人数の問題で会議室に入れないからという事だった。その辺は何とかしろよ、神さまなんだから・・・
最後に現れたイシスさまと挨拶する。イシスさまは変わらぬ様子で普通に話してくれるので聞いて見る
「なんか神さま達、冷たいんだけど神の饗宴ってなんかルールあるの?」
「たぶん、智大さん達に会った時の事を知られたくないんですよ」
イシスさまはそう言いながら笑う。俺達は普通にというか、突っ込みも入れたりギフトの強奪まがいの事をしていたのだが、神さま的なルールでは有り得ない事だったようだ。ギフト自体は神力で与えるものなので複数与えようが基本的には神さま自体の判断に委ねられる
しかし、一個と言っていたものを、伶に言い負かされて二つになったというのは問題あるらしいのだ。神さまの威厳とか色々あるらしい
「まぁお二人が黙っていれば問題ないですよ」
「気を付けます」
柔らかな微笑で返してくれるイシスさま。出会った時の人見知りMAXな彼女からは想像がつかない姿だ。今日も自信満々だし何かが彼女に中で変わったのだろう
「ふふふ。ハルカちゃんのお蔭です」
そう言って笑うが・・・あのハルカさんが神さまに何をしたのか若干気になる。まぁ友達が出来て自信が付いたって事で良いのかな?後で怒られたりしないよな?
不安を抱えながらイシスさまの後について会議室へと入る。円卓風な机に皆が座っていた。奥の方に空席が有り一つ挟んだ反対側にイシスさまが座る。多分あの空いてる席が本来は主神の席なのだろう
噂通り力のあるアスタルテ様がその隣で、魔法を司るイシスさまがその隣みたいだ。今のイシスさんは人界で修行中だが、前のイシス様は力のある神さまだったのだろう・・・
普段は時計回りに、奥が主神、アスタルテ様、キュベレー様、ヘスティア様、レシェフのおっさん、ゴヴニュ様、ユースティティア様、イシスさまの順番で座っているのらしい。
今回はレシェフのおっさんとゴヴニュ様の間に俺と伶の席が用意されている。一応は師匠に当たる訳だしおっさんには軽く会釈してから席に着く。どうにも師匠とか敬称を付ける気にならないのはしょうがないだろう・・・だってあんな間抜けな登場したのおっさんだけだぞ。他の神さまはもう少しだけシッカリしていた
「それでは神の饗宴を開催します。主神が不在な為僭越ながら代行の権限にて開催した事をご了承してください」
アスタルテ様が開催の宣言をする。本来神の饗宴の開催は主神の権限みたいで代行といえども簡単には開催できない様だ。前に魔王様がイシスさまに開催しろとか言っていたけどそうは簡単に開けない事になっているらしい
「今回の議題は邪神の封印の地への侵入の許可です。提案者は使徒の二人とユースティティアからとなってます」
その言葉にユースティティア様が一瞬アスタルテ様を睨んでいたのを見逃さない。実際にはユースティティア様は神の饗宴の開催に関しては何も言っていない。まぁ、アスタルテ様に会いに行けとは言ったけど・・・
おそらくは責任回避の為だろうな。アスタルテ・・・お主も悪よのぅ~
「では使徒から説明を」
「はい。邪教徒、いえ教祖に関しての情報からお話しします」
伶が今迄に集めた情報や、教祖に関する考察をスラスラと述べていく。その様子は淀みなく言葉が紡がれ、姿勢の良い立ち姿と伶の美声も相まって非常に説得力のある物だった。とはいえ、ユースティティア様やゴヴニュ様、ヘスティア様には事情を話しているのでアスタルテ様を含めれば過半数の神さまが大体の事情を知っている事になる
キュベレー様もアッティス様から、イシス様も魔王様とナティさんから聞いているだろうから、知らないのはレシェフのおっさんだけという事になる訳だ・・・って寝てるよ!おっさん寝てるよ!!まだ始まったばかりだぞ!!!
「使徒の言う通り、教祖の行動には怪しい物がある。アッティスからの報告でも裏付けが取れている部分がある」
神さまらしさ№1のキュベレー様が意見を述べる。
「趣旨は判りましたわ。だけど封印の地に入る許可をだすかどうかは別問題では無くて?」
おい!ユースティティア様。お前そんな事言ってなかっただろうが!多分提案者の一人にされたから責任回避の為に言ってるだけだなんだろうけど変わり身が早すぎるぞ
「まぁ良かろうて。皆も使徒には会ってるのだろう?色々聞いてるし本音で話そうじゃないか」
「あらあら、うふふ。折角久しぶりに集まったんだし気軽の方が良いわね」
ゴヴニュ様とヘスティア様から擁護が飛ぶ。建前は良いからぶっちゃけろという事だろう。まぁこの二人はバレて困る事してないしな
「どうせ主神のいない神の饗宴(仮)状態なんだろ。俺達にしてみれば色々知ってるんだから良いじゃんかよ」
軽く威圧を込めて言ってみる。神さま相手に威圧なんて利かないが色々話されちゃ困る事も在るだろうし、脅しくらいにはなるだろう?
「はあ、判りましたよ。神の饗宴(仮)という事で進めましょう~」
「いいわ。そうの方が楽ね。どうせ主神もいないんだし」
駄女神コンビが真っ先に折れる。って言うか一番やらかしてるのがこの二人だし、俺に逆らえないってのも有ると思う・・・
「私は封印が既に破られていると思っています。」
「いや、そんな事は無い筈よ。私達八柱の神で掛けた封印だもの、破られたらすぐに判るわ」
「すいません、言い方が悪かったです。教祖は封印に関係なく侵入できると思います」
「転移魔法ですか?」
伶の言葉にユースティティア様が噛み付き、イシスさまがその答えを導き出す。
封印されている場所への侵入ならば転移魔法で可能かもしれないとの予想は正しかったのだろう。だからこそイシスさまも発言したんだろうし・・・
「邪神の封印事体は問題ないでしょうし、私の予想では教祖は邪神の封印を破るつもりも無いでしょう」
「封印の地に教祖を追い込もうって訳だな?」
俺達の予想では教祖に邪神復活のつもりは無いと思っている。それは今迄の邪教徒達の行動に一貫性が無い事からも予想される。だからと言って野放しにしておけば邪神の力が増すのも確かだ
「はい。教祖の行動は邪神に利のある行動を取ったかと思えば神々に利のある行動をします。どうにもそこが理解できないのですが邪神の力が増せば万が一という事にも成り叶ません」
邪教徒達が過激になったのも今の教祖が就任してからだ。様々な魔法や武器の知識、そして使徒の存在も根っこは全て教祖へと向かうのだ。ならば奴らの行動やその裏を考えるよりも教祖を潰してしまった方が後腐れが無いだろう
転移魔法、使徒が使うというそれを封じてしまえば教祖へ直接迫る事が出来る。
実際に教祖と対峙するのは俺達の仕事だろう
だが教祖たちを逃がさない様にするのを神さま達に協力してほしいのだ・・・てか、やれ!俺達を巻き込んでおいてグダグダ言うな!!
「良いのではないか?封印の地に入ったのを確認後、転移を禁じる事位ならば問題もあるまい?なぁイシス殿?」
「はいキュベレー様。転移の禁止と使徒たちの転移は私の力で可能です」
「ならば私達は承認するだけだ。使徒を呼び出した私達が彼等に協力せんで何とする!」
おお、神さまらしさ№1の威厳でキュベレー様が場を支配する
「と、いう事だ。お主たちの力を貸してくれ」
キュベレー様が俺達に向かって頭を下げる。他の神さま達も追従の考えの様だ。
これで神の饗宴(仮)での結論が出た。問題なく教祖たちを追い込める状態を作る事が出来た。後は・・・やってやろうじゃないか
「フゴッ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・隣でいびきをかくの辞めて貰えませんかね、おっさん!
読んで頂いて有難う御座います