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もう一組の使徒

「尋問終わったわよ~ン」


 そう言って部屋の中に入ってくるアッティスさん・・・って、ツヤッツヤだよ。もう大満足って顔してるよ!


「ふふ~ン。智大ちゃんお手柄だったわ」

「まさかあのような方法があったとは・・・」


 皆での会議の後、ブロックへの尋問をアッティスさんとナティさんに任せて俺達はユースティティア様の部屋でゆっくりと寛いでいる処だったのだが、思っていたより早く終わったアッティスさんとナティさんも部屋に戻ってきての第一声だった。


 あのナティさんが、ゲンナリするとはアッティスさんがどんな尋問をしたのかは怖くて聞けない。お手柄という意味が情報に対してなのか、ブロックがイケメンだったからなのかはもっと恐ろしくて聞けないぞ・・・


「それで、何が判った?」

「今回の襲撃を含めて、邪教徒達が変わったのは三人の幹部が入ってからの様です」

「あの子が言うには使徒らしいわよ~ン」

「使徒!?」


 邪教徒達に使徒と呼ばれるという事は邪神の使徒って事になるのか?封印されている状態で使徒を召喚できるのか?


「落ち着け。詳しい話を聞かせるのじゃ」

「はい。ブロックが邪教徒達に合流する前の話の様ですが、邪教徒達の教祖が交代したようです。そこから急速に力を付けた様ですね」


 ナティさんの話によると尋問したブロックは驚くほど簡単に口を割ったそうだ。というのも彼は邪神の復活など信じておらず生粋の邪教徒という訳では無い様だ。ただ、平和で実り豊かな世界に馴染めない荒くれ者というのは何処の世界にもいるもので、そういった勢力すらも取り込み力に変えるのが今の教祖の方針の様だ


 当然、邪教徒達の反発が有った様なのだが、旧執行部を粛清の末に掌握して現在の邪教徒達に纏め上げたのが今の教祖で、その傍らには使徒と呼ばれる二人が常に立っていたと、ブロックは証言しているらしい


「使徒、ですか・・・私達と同じく召喚されたのか、この世界の人間なのでしょうか?」

「そこまではブロックも知らないようです。ただ、ブロックに剣での戦いを教えたのも、呪術や召喚術を開発したのも使徒なのは確かなようですね」


 この世界で埋もれた武器という概念を持ち、新たな魔法すら開発出来る存在・・・十中八九召喚された異世界の知識の様な気がする。魔物でも武器は持っているが洗練された武術とは言い難い。しかしブロックの戦い方には武術としての剣術の匂いが確かに存在した


「私達の世界には魔法なんて存在しません。しかし空想という物語の世界では確かに存在していて、魔法を使う為のイメージという部分は十分に出来ていると言えます。もし同じ世界から召喚されたとしたら・・・」

「そうじゃの。可能性としては高いな。」

「ちょっと待って。貴方達を呼んだのだって、私たち神が力を出し合って呼んでるのよ。封印された状態の邪神では絶対に無理よ」


 使徒の召喚にどの程度の力を使うかは判らないが、異世界から人を呼び寄せるのが簡単に行える訳が無い。どの物語でも神の奇跡だったり魔術師を何十人とか、そんな話だったしな・・・


 しかし前々から気になっている事が有る。どうにもこの世界の知識以外の知識が混じりこんでるような気がするんだよな・・・


「召喚以外で世界を渡るって事は無いのか?」

「そ、それは・・・」

「在るんだろ。偶にあれ?って思える知識を持っている奴がいるんだ。俺達が最初の召喚者だとは思えない」

「そうね。隠しても仕方がないわ最近では帝国と王国の戦争を止めたのも異世界からの勇者よ。その他にも伝説級の勇者から一般人として生きた者達まで、ともかく異世界人がいたのは確かよ」


 やっぱりか・・・細かいギャグだけじゃないんだよな。この街にしたって馬車が通る道と歩行者が通る道が分かれている。だけど中世のヨーロッパとかは車道と歩道を明確に分けてはいなかった筈だ。この辺の知識は現代社会に生きる者の知識の筈だ


「そうなると獣人達の生活様式も?」

「ああ。異世界人とは聞いていないが、獣人達の英雄が広めたという話だ。けもなーとか言っておったはずじゃが・・・」

「うん。それ間違いなく俺達と同じ国の人だ」


 最後に脱線しそうになったが、これで確定だ。間違いなく異世界から紛れ込んでいる人間がいる。


「つまり野心家の教祖が何処かから見つけてきた異世界人を利用しているという事か・・・」

「そう考えると筋が通るね。でも、そんな簡単にいう事聞くかな?」

「そこはどうとでもなるじゃろ。騙して利用するのも魔法で隷属するのも、その教祖という奴ならやりかねんだろうよ」


 邪教徒達が勢力を伸ばした陰に、新たな教祖と異世界人の使徒がいるのは間違いないだろう。ブロックへの尋問でそこは判ったのだが、問題はそこでは無い。有益な情報ではあるが根本的な解決に繋がる物では無いからだ


「教祖と使徒たちの居場所は判ったのかい?」

「一応、ブロックが指令を受けた時には三人とも拠点に居たそうです。ただ使徒のひとりが転移魔法の使い手だという事なので・・・」

「ブロックに埋められた魔石での召喚が出来てない以上、同じ場所には居ないでしょうね~ン」


 奴らの幹部には古代技術を使った魔石が埋められており、口封じか転移と効果は違うが条件を満たせばそれが発動するようになっている。ナティさんはそれを取り外す事が出来るので、口封じの場合ならば教祖に知られることは無いだろう。しかしブロックに埋められているのは転移の魔石だ。


「それと、召喚や転移の魔法も改良されているでしょうね」

「そうじゃろうな、その力でスチルを襲った。宣戦布告のつもりじゃろうよ」


 そうか・・・何故スチルを襲ったのか疑問だったのだ。あれだけの数だ。王都や帝都は兎も角、他の街ならば確実に滅んでいた。この世界での軍隊や普通の冒険者で対処できる数では無い


「後は儂らの移動手段の確認じゃろう。パリヤの奉納祭に出ていたのは確認済みだろうしな」


 そういう意味もあるのか、少なくとも神殿間の転移を使った移動はバレたとみて良いだろう。


「くそ!なんか奴らの(てのひら)で転がされている気がしてきた」

「少年、落ち着け。逆に言えば奴らでは儂らを斃せんのも事実じゃよ、だからこそ逃げ回ってるのじゃ」


 しかし、次は無防備な都市を襲うだろう、そうなれば邪神の力が増してしまう。結果として奴らの思惑通りの結果になってしまう


「本当にその教祖は邪神の復活を願っているのでしょうか・・・」


 今迄、思案顔で黙っていた伶が疑問を挟む


「でも邪教徒の目的が邪神の復活なのは間違いないんじゃないのか?」

「いいえ、邪教徒達は邪神を祀ってるだけよ。明確に邪神の復活との情報は無かった筈よ」

「確かにそうね。私達神々も邪神の力が増している所までしか情報は無いわ」

「邪教徒達、いいえ今の教祖の目的が別だった場合・・・」


 伶の言う通り、明らかになった教祖の人物像を考えた時、前教祖や執行部を粛清した事やブロック達、生粋の邪教徒以外でも使う事、邪人を使った襲撃などを考えると狡猾で目的の為なら手段を選ばない、しかし策略や謀略を使う知能の高さなどが覗える


 そんな人物が只の破壊主義者なのだろうか?終末論を唱え邪神の復活を願う邪教徒達のイメージとは違うような気がしてならない。


 ブロックから情報を引き出せたことは良かったが、却って奴等の目的が見えなくなってしまった


 神域に有る筈のユースティティア様の部屋に不気味な空気が漂う・・・そんな気がするのは俺だけではないはずだ・・・


物語も佳境に入ってきました。最終話が見えてきた感じです。

五月中くらいには最終話を迎える予定ですが、どうなる事やら・・・


一応新作も執筆中なのでもう少し書き溜めたら発表しますので、その時は今作同様可愛がってやってください


読んで頂いて有難う御座います

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