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スチル防衛戦~3

 邪教徒達が召喚したであろう邪人達や魔獣の軍団は壁上からの魔法で大打撃を受けつつもまだ相当の数を残している。雑魚の邪人達の数が多いので魔法の範囲に入らなかった奴らだけでもかなりの数になるのだ。一応は伶が戦況を見ながら指示を出しているので効率としては悪くは無いのだが、ある程度はしょうがないだろう


「よし、儂らも各個撃破していくぞ。あまり突出しすぎるなよ」


 この世界の戦い方は前衛職は魔法攻撃の準備が出来るまでの時間稼ぎの壁役が主だ。しかし、壁上の三人の魔法は規格外過ぎた。このままでは後々面倒な事になるのが目に見えている、ローラさんの(いじ)りとハルカさんのドヤ顔が目に浮かぶ・・・


「そういえば兄さん。属性解放したら雷属性の魔法とか使えへんのか?」

「え?魔法なんて使えない筈ですけど・・・」


 スキル取得の時に話を聞いていなかったせいで、魔法関係のスキルを一切持っていない俺は魔法を使う為の魔力も少ないしその為のスキルも持っていないのだ


「兄さんの属性解放は特別や、たぶん使える筈やで。雷系は勇者の象徴や、使えたらモテモテやで~」

「そ、そうなの?どうやったら使えるんですか?教えてシトール先生!」


 先生と言われて満更でも無いシトールさんの説明だと、雷系統の基本は如何(いか)にして雷を呼び出すかに掛かっているらしい。そこで初心者は空に雷雲を呼びそこから雷を落とす事から始めるそうだ。それが出来たら後は応用で雷を武器に付与したり、(いかずち)の槍とか創意工夫をしていくという事だった


「ええか、先ずは雷雲を呼ぶんや。それから稲妻を地に落とすイメージやで」

「判った。『迅雷』!」


 魔法が使えるという期待から属性解放のキーワードを告げる声も大きくなってしまう。スキル『属性解放』が有るので時間制限も気にしなくて済む。


「ええで。まずは雷雲や『さんだー』で呼べる筈やで。その後は『らいとにんぐ』で稲妻を呼べる」


 何故に英語?若干気になるが取敢えずは魔法が使えるのならば気にしないでおこう


「サンダー」


 属性解放した俺は全身に雷を纏いながら、刀を握った右腕を天に突き上げながら言われた通り雷雲を召喚する。俺の言葉に応じる様に真っ黒な雲が空を覆い時々ピカッとした光とゴロゴロという音を響かせ始める


「よっしゃ。」

「ライトニング!!」


 突き上げた手をそのまま邪人たちの方へと指さしながら掛け声と共に振り下ろすと、雷雲から稲妻が(ほとばし)る。イオン臭と黒焦げで倒れる邪人たちの死体が残されるのを見て初めて使った魔法の威力に驚愕しているとシトールさんが更に追加を促す


「兄さん、もう一発や」

「よし。『サンダー』」

(かみなり)さんだー(・・・・)!」


 雷雲を呼ぶキーワードに被せられた合いの手に、片手を天に挙げつつ後ろを振り返るとドヤ顔のシトールさんが此方を見ている。気を取り直してもう一度・・・


「サンダー」

(かみなり)さんだー(・・・・)

「・・・」

「ちょっ!兄さん敵は向こうや!こっちに指を指さんといて」

「本当はこれがやりたかっただけか!!」

「なんでや。伝説の勇者と賢者の掛け合いなんやで」

「そんな訳あるか!!!」


 取敢えずは敵が迫っているので稲妻を邪人たちの頭上に叩き込む。後でシトールさんには小一時間説教を喰らわせてやろう


「智大!ふざけるのは後にしろ!」


 ポンタさんに怒られた。これ、俺が悪いのか?


 気を取り直して属性解放状態のまま邪人の群れに突撃する。ゴブリンやコボルトの様な雑魚は俺の身体から発せられる紫電に触れただけで倒れていく、まさに鎧袖一触だ。

 俺の狙いはその後ろに控えるハイオークやオーガ達の上位個体達だ。更に上位のキング種たちは既にハルカさんやローラさんの魔法で打ちのめされている。指揮を執る筈の個体が居ないので戦略的な動きの出来ない奴らならば、個々の力が多少上がろうとも脅威では無い


 飛び込んできた俺に、オーガが棍棒を上段に振り上げ迎撃しようとするが、それが振り下ろされる前に間合いに飛び込ん俺は横薙ぎの一撃を一閃、紫電を纏った刀はそれだけで筋肉の鎧を纏ったオーガを両断してしまう


「おおおお!」


 気合の声を上げながら触れるを幸いにバッタバッタと斬り伏せる。魔法の鞄から取り出したゴヴニュ様が創ったアティファクトの剣と刀の二刀流で左右の敵を薙ぎ倒しながら敵のど真ん中を駆け回る、後には斬り伏せられた邪人たちの死体が道標のように積み重ねられている


「ガキンッ!」


 金属音と共に受け止められる。今の俺の攻撃を防げる魔物がまだいたかと意識を向けると、その相手から声が掛けられる


「久しぶりだな。再戦の機会を待っていたぞ」

「お前は・・・誰だっけ?」

「ブロックだ!無人島で一度戦っただろうが!!」


 あ~そういえばいたな。倒した後に死体が残っていなかったからもしかしてと思っていたが、やはり生きていたか。そしてこの魔物達の攻撃が邪教徒達の襲撃で間違いない事が証明された訳だ・・・決して立てたフラグを忘れていた訳では無い!


「一度負けたんだから大人しくしとけよ」

「そうは行くか。この日の為に更に腕を上げた俺の力を見せてやる」


 そう言ってあの時と同じようにショートソードを両手に構えて突っ込んでくるブロック。修練を積んだのだろう、以前とは全く違う動き・・・残像を残しまるで分身をしたように動きを読ませないスピードで間合いを詰めてくる


「お前にこの動きが見切れるか!死ねぇー」


 正面、右と左更に上方から飛び込んでくるブロック。残像だ、実体は一つだと判っていても見切れる攻撃では無い。初手からいきなり自らの最強の技で挑んで来るブロックに油断は無いだろう。かつて一度敗れたからこその攻撃だ


 このまま、ブロックの動きを見切れずに攻撃を受け切り刻まれる。ブロックにもその自信が有ったであろう、それは油断では無く自身の修練に基づく確信だった


「悪いな。強く成ったのはお前だけじゃないんだ」


 ブロックの分身と同じ数の分身が奴の攻撃を全て受け止める。驚愕の表情のブロックに一声かけると、奴のお株を奪う様に残像を伴った攻撃を仕掛ける。しかもブロックよりも残像の数を増やしてだ


「ば、馬鹿な!」

「バトル物のインフレを甘く見たのがお前の敗因だ」


 そのまま刀を返した峰の部分を叩きつける。あっけなく意識を失ったブロックを肩に担いでポンタさん達の元へと戻ると、ブルーベルにその身柄を預けると誰もいない空間に声を掛ける


「ナティさんいますか?」

「はい、智大様。邪教徒の幹部ですね、私が責任を持って拘束しておきましょう」


 まるで影から現れたかのように姿を現したナティさんは乱戦の混乱など無かったかのように右手を胸に当てて(うやうや)しく頭を下げる。たぶん呼べば現れるだろうとは思っていたが、どういう能力なのか一度聞いてみたいと思ってしまう


 たぶん教えてはくれないだろうけど、一先ずは魔石で転移されるのはふせいでくれる筈だ。この辺りで邪教徒達の情報を仕入れるのは必須だろう


 見るとポンタさんとシトールさんがお互いに背を預けながら邪人達に対して無双している。どこかの傾奇者と親友が河原で戦った様子に似た戦い方だ。どこかで黒幕が駕籠に乗ってるのだろうか・・・


「きゅ~♪きゅっきゅきゅ♪」


 城壁の周りではスラちゃんが自身に炎を纏って飛び回り体当たりで邪人たちを焼き尽くしながら、更に魔法を周囲に放って吹き飛ばしていた。おお~まさにスラちゃん無双!ここに俺の理想を更に上回ったスラちゃん無双が遂に実現したのだ



 大地に朝日が差し始めた時には邪教徒達が企んだスチルへの襲撃は敢え無く潰えた。イシスさまのギフトを授かった俺達にとっては一撫でしたくらいの感覚だった


 自重無しの神さま達のギフトで強くなった俺達の前に(しかばね)を残し邪教徒達と邪人は姿を消し去り、城壁の上からは衛兵たちの鬨の声が上がっていた


シリアス先生は連休でお休みでした・・・


作中のサンダー、雷さんだーのくだりは高校時代の英語の先生の鉄板ネタでした

平井先生元気かな~


読んで頂いて有難うございます

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