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戦いの火蓋

 鉱山へと向かう道を馬車で揺られながら移動していく。目の前では何故かニヤニヤしているローラさんが居てブルーベルが御者台に一応座っている。自動運転機能付きのゴーレム馬車の御者台に、完全自立思考型のゴーレムが座っているのだから、ある意味元の世界よりも進んだ技術かも知れない


「で、少年。どうなのじゃ?」

「どう?って言われても、主語が抜けてるから答えようがないです」


 思わせぶりな質問だが、何の事を言っているかは判っている。だが正直に答えるのも(しゃく)なので一応の抵抗を試みる。まぁ無駄な足掻きではあるのだが・・・


「素直ではないの。折角儂が手を貸してやると言うておるのに」

「言葉と表情が一致してないですよ・・・」


 助言と言っているが目的が違うのはその表情がすべてを物語っている。絶対に弄繰り回したいだけだろう


「しかしの、お主らはこの世界から戻っても仲が進展するのか?それならば儂の眼の届くうちに進展させておく方が賢明じゃろ?」

「余計なお世話です。しかもそんな暇なんて無いですよ」

「ふむ。暇があれば良いのじゃな」


 うっ、しまった。言質を与えた事になるのか?いや実際問題そんな暇は無い筈だ


「それにの、仲が進むのが嫌な訳ではあるまい?」

「それは・・・まぁ」

「そうじゃろう。全ては儂の任せておけ。伊達に年を重ねておる訳では無いぞ」


 そう言って胸を張るローラさん。どっかのハイエルフと違って豊かなそれは、プルル~ンと弾む様に揺れている。これに目が行かない男がいるだろうか、否、それは男では無い。そんな奴には(あえ)て言おうカスであると!


 ____________________________


 その頃のハルカさんチーム・・・


「ハッ。何か気配が・・・」

「あら~んハルカちゃんどうしたの~ん?」

「何かこの辺りがスカスカします」


 そう言って胸を押えるハルカさん


「スカスカ?ムカムカじゃないのね~」


 憮然とした表情のハルカさんと、不思議そうな顔をしたアッティスさんがペガサスの背に跨りながら空を駆けていく。


 因みにシトールさんはアッティスさんの豊かな胸に(いだ)かれ、もはや表情すら失っていた・・・


 ____________________________




「さてと、この奥にお目当てのアダマンタイトが有る筈じゃな」

「そうですね。デプスデスマンもですけどね」


 都合よくお出掛け中という事は無いだろう。それに鉱山の奥でアダマンタイトを採掘する技術なんて持ち合わせてはいないのだ。デプスデスマンを斃してから専門の人に頼んで採掘してもらうのがベストだろう


「でも、誰もいませんね」

「そうじゃの。調べてみたが奴が此処に住み着いから大分経っておる。鉱夫を探すのも一苦労しそうじゃの」


 鉱山の入口、かつてはそこそこ栄えていた町であったろう痕跡だけが残る場所に俺達は立っている。当然人の姿など残っておらず、まさしくゴーストタウンといった感じだ


 しかしその辺りは考えても仕方ないだろう。デプスデスマンを斃したと知らせれば調査位はしてくれるはずだ。上手くいけば昔の賑わいを取り戻す事だって可能なのだし、パリヤの街だって近くの鉱山が稼働した方が便利なのだから興味を持つ人に頼み込んでみるしかないだろう


 ゴーストタウンと化した町を抜けて、かつての鉱山入口まで移動する。トロッコや鶴嘴(つるはし)など鉱石を採掘するのに必要な物が整然と並んでいる。きっと鉱山がいつ再開しても良い様に鉱夫の人たちが願いを込めて整理していったのだろう


 そんな光景を横目に中へと踏み入っていく。薄暗い空間をローラさんが浮かべた魔法の灯りを頼りに進んで行くのだが、分岐点では道案内の表示も有るので迷う事は無さそうだ。一応警戒をしながら中央にローラさん、後ろをブルーベルに固めて貰いながら先頭の俺は気配を探りながら進んで行く。こういった廃鉱山などには何故か魔物がすみつくのは定番らしい。魔力や魔素といった物は地中から湧き出すと考えられておりそれに惹かれるのだろうと言うのが定説のようだ


「ギャオ!」


 声を上げながら飛び出してきたゴブリンを一刀のもとに斬り捨てる。レシェフのおっさんの試練の時には苦労したゴブリンも今では苦労する事無く倒せてしまう。奇襲のつもりで飛び出してきたのだろうが気配も感じていたので不意打ちにも成らない。ふと、こんなに弱かったかと思てしまう程だ


 その後も飛び出してくる魔物や邪人たちを葬りながら先に進んで行くと、通路の様子が様変わりしてくる。坑道の落盤防止で組まれた櫓が何かに壊されており、無秩序な横穴が其処彼処(そこかしこ)に空いている


「近いな。奴の縄張りに入ったぞ」


 中央のローラさんの警告の通り、強い魔力と魔素が奥から湧き出しており、更に巨大な気配が奥に居るのが感じられる。間違いなくデプスデスマンがこの奥にいる筈だ。鉱石を餌にする巨大なモグラの魔物という事しか事前情報は無い。しかし早々モグラなんて見た事が無い訳で実際どんな姿をしているのか、どんな能力があるのか想像も付かない為、慎重に歩を進めて行く


 おそらく坑道の最終地点だったであろう場所にデプスデスマンの姿を確認する。奴がいる場所は決して人の手で掘り進めれる広さを超えており、自分の住処にするために自ら堀広げた様で、かなりの広さとたかさの有る空間であった。しかし計算されて拡張した訳では無いので、いつ落盤が起こるかは判らない状態だ


「ローラさん。これは・・・」

「ふむ。奴は生き埋めになどならんから気にしておらんじゃろうが、儂らはそうもいかんな」


 元々、土中を移動するモグラの魔物な訳だし、落盤の影響はほとんど無いだろうが、俺達はそうもいかないだろう。ゴヴニュ様が言っていた様に大規模な魔法等使えば天井が崩れ落ちてくるのは簡単に予想できてしまう


 食後なのか気持ちの良さそうにお昼寝中のデプスデスマンを視界に納めつつ、作戦会議と相成った。


「留めは儂が何とかしよう。なるべく一点に集中する魔法でけりをつける」

「俺達は足止めと時間稼ぎですね」


 ブルーベルもいる事だし、足止めも時間稼ぎも難しい話では無い。問題はデプスデスマンを暴れさせない事だ。奴が生き埋めのリスクを負っていない以上、暴れて壁でも壊されたのでは溜まった物では無い。出来るだけ慎重に、静かに足止めと時間稼ぎに終始しなければならない


 お昼寝中のデプスデスマンに気付かれない様に、ジリジリと出来るだけ近づいて行く。大森林の魔境で会った土竜といい、どうもこんな役ばかりで少し情けなくなるが嘆いていても始まらない


 吟遊詩人たちが謳う様な英雄たちも実際にはこんな情けない姿も見せていたのだろうかと思考の海に逃避しながら距離を詰める


「ブヒャ?」


 鼻提灯でも割れたかのようにビックっと反応するデプスデスマン。近付いてくる気配に気づいた様で俺達に視線を向ける。そのままノッソリと身体を起こすと威嚇するように丈夫そうな爪をこちらに向けて威嚇してくる


 ブルーベルと俺が前に出るとローラさんは機会をうかがう様に魔力を高めていく


 状況は敵に味方している状態だ・・・


 さて、スキル『剣聖』。身体にも馴染ませた新たな力が何処まで通用するか・・・


 その効果を試させて貰おう



読んで頂いて有難うございます

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