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ポンタの春

 馬車は大森林に入る前の最終野営地に停めっ放しだったので、ドライアドにそこまで送ってもらって後は久しぶりの馬車の旅だ。帰り道は大森林から離れていくので出来るだけ距離を稼ぐ為、速度もマシマシでゴーレムを走らせる。行きと違って離れれば離れる程危険が少なく成る訳だし、野営地の場所も把握しているので慎重に進む必要も無い訳だ。


 お蔭で行きは三回の野営を挟んだが帰りは二回の野営で済んだ。早くお風呂に入りたかった俺としては大歓迎であった


「さて、ぼくはクビトでやる事が有るけど皆はどうするかな?」

「そうですね。一泊位はゆっくりしたい処ですけど・・・」

「そうじゃな。イシス様の所へ行くにしてもそれくらいは問題あるまい」

「儂も買い物があるから都合がいい」


 と、みんなの意見が纏まって一泊していく事になった。ポンタさんの買い物は多分聖女様のお土産だろう。週一で通っていたのが今回はなんだかんだで二週間程掛かってしまった。ご機嫌を取る為のアイテムが必至という訳だ。


「それなら僕が送っていくよ。一緒ならドライアドも道を開いてくれるからね」

「おお、それは助かる。王都までの時間を考えると憂鬱だったからの」


 移動時間と言うよりも、聖女様の所へ行くまでの時間という事だろう。下心等は無いのだろうけど聖女様の年齢を考えると、幼女の元へ急ぐ熊獣人と言うのはそこはかとなく危ない響きが含まれる


「智大、伶。後で相談が有るのだが、いいか?」

「はい、大丈夫ですよ」


 恐らく聖女様のお土産の相談だろう。普段何かと気に掛けてくれるポンタさんの頼みだ、それくらいは何でも無い。伶も同じように頷いてくれた


「ふむ、儂はどうしようかの・・・」

「ローラさん。私と食べ歩きに行きましょう」

「ふ~む。食べ歩きか・・・まぁ偶にはいいか。よしハルカ。道案内は任せた」

「はい、任されました。シトールさん地図を用意しておいてください」

「おう!任せとき・・・って、なんでワイが用意せな、あかんねん」


 と、そこへスッと差し出される地図。


「こっちがお土産に良さそうなお店の分、こっちがグルメマップだよ。役に立つと良いんだけど」


 地図を差し出したのはタンドさんだ。いくらこの街に馴染みが有っても種類別に用意してあるとは流石と言うか何と言うか・・・まぁタンドさんだからとしか言いようがないな


 苦笑いしつつも地図を受け取り各々(おのおの)目的のお店に向かう事にした


「えっと。この辺がクビト銘菓『大森林の葉っぱ』のお店ですね。ってもう少しネーミング何とかならないのか?」

「まぁ、銘菓なんてそんな物よ」

「ふむ。食べ物よりもこう、何と言うか可愛らしい物の方が喜ぶと思う」


 成程ね。聖女様は食べ物よりも可愛い物の方がお好き、っと。確かに聖女様至上主義の枢機卿イストさんが付いている以上食べ物の不自由は無いだろうし、聖女様の好物くらい取り寄せている気がする。おっ!この辺のぬいぐるみとか良いんじゃないかな


「ポンタさん、これなんかどうですかね?」

「ふ~む前に渡した物に似ておるの」


 腕を組みながら悩むポンタさん。どうやら、ちょくちょく渡しているお土産と被っているようだ。


「此方は人気の商品なんですよ。色々種類ありますからコレクターに人気も有りますしお勧めです」


 悩むポンタさんを後押しするべく、店員さんのセールストークが炸裂する。どうやら元の世界で言うテディベアの様な物らしい。熊の獣人が熊のぬいぐるみを買うのか・・・シュールだな


「智大、考えている事が判るぞ。」

「そうよ。聖女様の熊好きに合わせてるんだからしょうがないでしょ」


 ジト目で睨むポンタさんと、加勢する伶に責められてしまう。


「それならコッチの木彫りの熊なんて・・・駄目ですね、はい。」


 ______________________________



 一方その頃のローラさん達は・・・


「今度はあっちの屋台です」

「また屋台か・・・そろそろ店に入らぬのか?」

「駄目なのです!。評判のオーク肉の串焼きです。食べない手は無いです!!」

「・・・嬢ちゃん、どれだけ食うねん」


 まだまだ序盤戦の様だった・・・



 ______________________________


「あ!これ。ポンタさんにそっくりでいいんじゃないですか?」

「ふむ。しかし熊じゃないぞ」

「良いんですよ。聖女様は熊が好きなんじゃなくポンタさんが好きなんですから」


 伶が手に取ったのはデフォルトされた狸のぬいぐるみだ。獣化していない普段のポンタさんにそっくりだ。聖女様は熊の獣人と見抜いているようだが、抑々(そもそも)ポンタさんが聖女様の前で獣化した事など無い筈だし、熊に(こだわ)る事などないはずだ


「ふむ、ならばこれを貰おう」

「はい。プレゼントですね。お包みしますので少々お待ちください」

「これで安心ですね。きっと気に入ってくれますよ」

「いや、実はなもう一つ買いたい物が・・・」


 おや?ポンタさんの様子がおかしいぞ?モジモジしながら言い澱んでいる。・・・若干気持ち悪いな


「いや、その・・・相談と言うのはな、そのイスト殿にも何か・・・こう見繕って貰いたいのだ」

「イストさんにですか?」

「大丈夫です。お任せください」


 思わず聞き返す俺、しかし急にイキイキしてきた伶が割って入る


「そ、そうか、頼めるか。何を送ればいいのか判らなくて悩んでいたのじゃ」


 ポンタさんの表情が急に明るくなる。これはポンタさんにも春がやって来たのか!?


「女性に贈るなら宝石とかかな?それならあっちにお店が・・・」

「智大は黙っていて!」


 速攻で怒られた。・・・どうやら俺では駄目らしい


「良いですかポンタさん。女性が送られて嬉しいのはオンリーワンな品物です」

「う、うむ。」

「この場合、品物や値段はどうでもいいのです。自分の事をどれだけ理解してくれているか?そこがポイントです!!」

「しかし、一般的には宝石や貴金属が良いのでは・・・」

「それは親密度にも依ります。いきなり高価なプレゼントは引きますよ」

「うっ!そ、そうなのか?やはり相談して良かった」


 どうやらポンタさんも俺と同じで高価であれば良いと思っていたようだ。伶が話す内容に驚きながらも感心している。ここは俺も心のメモに書いておくべき内容だな


「イストさんの場合、聖女様の事を切り離す訳にはいきません。この場合・・・」


 後半は考え込む様にブツブツ呟きながら思考の海へと入っていく伶。俺とポンタさんは黙ってみているしかない。


「そうね。これだわ」


 掌にもう一歩の手を打ち付けると急に歩き出す伶。その先には先程俺が行こうとしたお店・・・宝飾店が有った。大森林の迷宮は人の手が入っていないだけに貴重な品物が産出されることも有る。クビトはそういった品々を使った加工品の販売卸しといった顔も持っているのだ


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょう」


 執事服に身を包んだ店員が恭しく挨拶をしてくる。その後ろでは同じ制服の女性店員たちが並んでいる


「えっと。簡単なオーダーです。ただ滞在日数が限られてるので場合によっては素材の買い取りです」

「承りました。内容をお聞きしてもよろしいでしょうか」

「ええ、このぬいぐるみをモチーフにアクセサリーを作ってもらいたのですが」


 先程かったポンタさんにそっくりなぬいぐるみを見せながら伶が交渉していく。ポンタさんも俺もお店の雰囲気に呑まれているせいもあって終始無言だ。伶の意図もイマイチつかみ切れていない


「そうですね。こちらの水晶でのブローチでしたら夕方までに制作可能です」

「それではお願いします。後はそうですね・・・こちらのネックレスを見せて貰えますか?」

「ほほう、お目が高い。此方はアスタルテ様の髪飾りをモチーフに・・・・」


 何か店員さんと盛り上がっている伶


「ポンタさん。お財布の方は大丈夫ですか?」

「う、うむ。そちらは問題ないと思うが、宝飾店なぞ初めて入ったからな。少し不安だな」

「いざとなったら、僕も出しますから」


 コソコソと店の隅で話し合う男二人・・・若干、いやかなり浮いている気がする


 しかし、やっと訪れたポンタさんの春に協力する為、使徒としての評判だろうとなんだろうと使ってイストさんを射止めるようなプレゼントを選んでみせる


 主に伶がだけど・・・


予定より話数が嵩んでいるのでさっさと話を進めるつもりだったのですが・・・

思い付くと書いてみたくなってしまうのですよ


章と章の間と思って楽しんでいただけたら幸いです


2017.4/7 ペンダント→ネックレス に変更

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