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邪教徒の野望

 スラちゃんの進化が始まり時折、幻想的な光が輝く中ナティさんの報告が成されていく。拠点は魔物に襲われ崩壊していた様だが、報告は(さかのぼ)って俺達が南部の街クビトに到着した辺りから始まる


「どうやら邪教徒達は思ったよりも早くに、こちらの動きを掴んでいて様です。クビトのギルドから出てきた時には尾行が付いておりました」

「ほう。そんなに早くか・・・」

「元から情報が漏れていたのか、クビトで網を張っていたのかで状況は変わるね」


 タンドさんはそう言うが、報告会議で大森林の話が出て直ぐに出発した訳だし情報漏れと言うのは考えにくい。クビトでの監視の目が予想よりも厳しかったという事だろう


「ジッコ様は依頼された通りに噂を流して頂けた様で、邪教徒達の耳にもそれは届いたと思われます。大森林に入るところまでは邪教徒達も尾行は続けていました。流石に中にまでは入ってきていませんが今でも馬車の監視は続けていますね」

「それはご苦労な事だな」


 苦笑いしながらポンタさんが答える。馬車の監視なんかしていても益などないと思うのだが、やましい事が有ると人は疑い深くなるのだろう。本当に魔境が目的なのか半信半疑という事だ


「そうすると、邪教徒達の戦闘力は森の外の魔物程度は問題ないが、大森林に入るのは無理と言った処か」

「いや~判らないよ。入るだけなら何とかなっても、更に尾行ってなると別のスキルだからね~」


 斥候役と戦闘は別物だし、魔物に襲われれば尾行も何もあったもんじゃないだろうから、大森林の手前までと言うのは正しい判断かも知れない


「どちらにせよ、クビトに拠点が有るのは間違いなさそうじゃ」

「そうだね。帰りにジッコさんには報告しておくよ」


 クビトのギルドマスターであるジッコさんとタンドさんは師弟関係と言うか微妙な関係だ。ハイエルフという事もあり年齢的には圧倒的にタンドさんが上なのだが、研修の時はジッコさんに(しご)かれたという事だから判らないでもない。ただ信頼関係は強固なのでそこら辺の連携はうまくいくと思う


「話を戻しましょう。監視の交代要員や物資の運搬などは、やはりクビトの街から行われていました。その時点では森の中の拠点は見つかっていなかったのでクビトの街の拠点に侵入し情報を集めていました」


 ナティさんはクビトの拠点も掴んでいるようだ。その中には幹部と思わしき人物が数名いた様なのだが、拠点から出入りする様子は無く、また別の拠点からの出入りも無かったようだ。その為夜中に資料等を物色して森の拠点の位置を特定したのだという・・・何と言うか世界屈指の強さを誇る人に泥棒の真似事をさせたと思うと申し訳無くなってくる


 そんな事を考えていたが、ナティさんの報告は続いていく。クビトの拠点の様子からある程度の察しはついていたのだが、森の拠点んに赴いたナティさんの見た物は少々予想とは違った物だったらしい


「思っていたよりも大々的に実験を行っていた様で、拠点跡はかなり規模の大きな物でした。複数の居住用の建物に実験施設の他、捕えた魔物達の倉庫だった場所や解体施設等が建てられ、かなりの人数が居たと思われます」

「それが崩壊していたと?」


 ポンタさんの問い掛けに黙って頷くナティさん。一言で崩壊と言うが当時、人が大勢いた事を考えるとあまり考えたくない状況だったのでは無いだろうか・・・


「此処からはクビトの拠点に有った報告書や資料からの推測も交えます。資料では魔物の暴走と言う表現が有りましたので、隷属化、若しくは召喚に失敗したと思われますね」

「召喚か・・・ミドルジャイアントを召喚した時には御世辞にも指示に従っていた様子は無かったね」


 確かに一番初めの戦いの時に現れたミドルジャイアントは呼び出されはしたが、邪教徒達にも襲い掛かっていた。あれも暴走と言えばそうなのかも知れない。ナティさんによると召喚の儀式だけでは呼び出せる魔物の強さに限界があると報告書に掛かれていたという。その為に大森林、若しくは魔境内部にて捕えた魔物に隷属化の魔法を掛ける事を研究していたようだ


「暴走という表現を使っている以上、一度は隷属化に成功したんだろうね」

「そうじゃの、隷属化出来て安心していた所で暴走、結果拠点の崩壊という流れじゃな」

「おそらく。問題はどの程度の魔物を隷属化出来ていたのかという点でしょう」


 ナティさんも肯定の意を示しながら次の問題に入っていく。因みに全員が車座で座っているのだが会議の発言には(かたよ)りがある。俺やハルカさんは難しい事は得意ではないし、シトールさんはナティさんから距離を取る様にしている。結果、発言はインテリ組が中心で会議が進んでいくのだが伶だけが何事か考え込んでいて発言していない


「建物・・・魔物達の倉庫と思われる建物は、檻の付いた部屋の様な造りになっていました。構造から考えると、かなり大型の魔物を捕えていたようですが暴れた形跡も無く、朽ちた死体が残っていたので隷属化に成功していたと思われます」


 一概には言えないのだが、魔物は大きさ=強さと考える事が出来る。魔物は体内の魔石から力を引き出して行動する。成長と共に魔石も大きくなるのだが、その為には魔力の強い場所に生息しなければいけない。また一度成長してしまうと、魔力を供給するために魔力の強い所から移動する事は少なくなる。その為、世界に危機を(もたら)す様な魔物が人里に出てくる事は無い。


 唯一の例外が縄張り争いだ。争いに負けた魔物が移動する事でその影響を受けた魔物が移動する。その連鎖で弱い魔物達が人里に出てくる事がある。その為に魔境の外周部では定期的な駆除を行い、縄張り争いが起きた時に迷宮から溢れる魔物を減らしておくのだ


「そのような魔物達を捕えたのか・・・仮に可能だったとしても魔境の内部のバランスはかなり狂ったじゃろうな」

「そうでしょうね。しかし外周部の魔物達も捕えられていたので調査でも問題が発覚する事は無かったのでしょう」


 クビトの街では魔境の定期的な調査も行われているし、大森林の外側では魔物達が溢れた場合に備えて監視する為の施設も有る。両者が気付かなかった事を考えると、邪教徒達もある程度は考えながら行動していたと思われる


「崩壊の跡を調査しましたが、原因となった魔物は魔境中心部に生息するレベル・・・厳密に言えば竜種に匹敵するレベルでしょう。流石に成龍とは思いませんが、ブレスの痕跡も残っていますので竜種なのは間違いないでしょう」

「それを捕える実力はあるという事か・・・」


 暴走したとはいえそのレベルの魔物を一度は隷属化に成功した訳だ。邪教徒達の力を(あなど)っていたのかもしれない。一同が一斉に押し黙る


「思っていたよりも事態は切迫してるかもしれません。森の拠点は崩壊したもののクビトに拠点を残している点。そして邪教徒達の目的を考えると隷属化した魔物が暴走したからと言って実験が失敗したとは限らないと思います」

「伶。どういう事じゃ?」

「邪教徒達はの目的は?と考えた時に、奴らはこの世界を支配したい訳では無いと考えられます」


 伶が語る、邪教徒達の目的・・・それは邪神の復活。それが何を意味するのかは別にして奴らはそれで自分たちに益があると考えているのだろう。そして人々の恐怖や不安を邪神への供物にするつもりなのだ


「召喚魔法や隷属化、アンデッドの大群で町を攻めるのも効果的でしょう。しかし街の真ん中に巨大な魔物が転送されて来たら・・・」

「ふむ。そこに住む者達の恐怖。それに次は自分たちの街かもと言う不安か・・・」


 つまり、邪教徒達にしてみれば短時間でも隷属化出来れば十分で、いまクビトに残っている邪教徒達はその為に残っていると考えられる


 転送がどの位の距離を可能にしているのかは判らないが、大森林の魔境から直接強力な魔物を転送できるのだとすれば被害を防ぐ手だてなど無いに等しい・・・


 (もたら)される被害、それを想像した全員が押し黙ってしまうのだった


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