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キャンサー達との戦い

 慎重に近づいて行く。キャンサー達は俺達を認識していないのか、それとも害は無いと判断しているのか近づく分には何もしてこない、壁や親玉と思われる大きな塊に変化は無い。


 しかし、それは唐突に破られる事になる。


 威嚇する事も準備する様子も無く、変化はいきなりだった。突然壁からキャンサー達が飛び出して来る、元の世界にあったバランスボール程度の大きさのキャンサー達が空中に浮かぶように集まってくる。親玉と思われる大きな塊を守る様に隊列でも組むのか?って感じで規則正しく絶対の防御陣を組み上げると、先頭の奴らが俺達に向かって触手を伸ばしてくる


「俺達が道を開く、智大は親玉を狙え。捕まるなよ」


 ポンタさんが最後の部分でニヤっと笑う、彼がこんな表情をするのは珍しいと思う。俺を信頼してくれての言葉だと思うが、ポンタさん自身も戦うのを楽しんでいる様な感じがする


 先陣はブルーベル。短めに持ったハルバードで向かってくる触手をぶった切り、払いながらも多少の触手が纏わりつくのは事は無視して進んで行く。その後ろからポンタさんがサポートするように付いて行く彼もハルバードを短く持って、斧の部分だけでなく石突の部分を上手に使って触手を払い除けていく


 しかし、それも少し進むと叶わなくなり始める、触手の弾幕が濃さを増したのだ。先頭のブルーベルの足が止まり触手を捌くので精一杯の状態、ポンタさんも自身へ迫る触手とブルーベルに纏わりついた触手を切り払うのに手一杯で先に進むどころか、キャンサー達へ攻撃する余裕なんて無さそうだ


「チッ。ブルーベル、一歩下がれ。智大サポート!」

「はい。」


 二人の影に隠れるようにしていた俺が横に出る。ポンタさんは反対側だ。間にブルーベルが下がった事で三人が横並びで触手に対処する。錐の様に細く突き進むつもりだったのだが触手の数の多さにブルーベル一人では対処しきれないので三人で進んで行く


 それでもキツイ。正面だけなら良いのだが囲む様に放たれる触手に対処するには手が足りなくなってしまう。別に鞭の様に素早い動きでは無い。ウネウネと寧ろ遅い動きだから捌く事も出来るのだが、俺達を取り込む様に動く触手達は全方位から迫ってきて動きを読みづらい


「露払いは任せろ。こっちはまだ大丈夫だから先に進んでくれ」


 タンドさんが創りだしたウォーノームが俺達の周りに現れる。ウォーノームに標的が移った分弾幕が薄くなる。思わず「左舷弾幕薄いぞ。何やってんの!」と脳内で再生されるが、この場合薄くなって助かるのは俺達なのだが、どうしてもガンオタの血が騒いでしまう


 ってそんなこと考えている場合じゃない。手を動かさないと


 触手に取り込まれていくウォーノーム達だが、彼らは只の土の塊。操る精霊にダメージが無いのだからどんどん再生されていく。少し楽になった俺達は間合いを詰めるスピードを速める事に専念する。ブルーベルは一撃の力強さを増してズンズンと先に進む。ポンタさんもハルバードを振り回す速度を上げる。勿論俺だって負けていられない。手数の速さで触手を斬り裂く。キャンサー達は斬り裂くと飛び散る様に散らばって数を増やす事になるのだが、触手を切る分には大丈夫のようだ


「天雷弓行きます」


 ハルカさんが天雷弓を部屋の天井に向かって放つ。きちんと威力を調整されたそれは触手達に(いかずち)をお見舞いする。室内で使用する為、威力はかなり押えられているが(いかずち)に撃たれてキャンサー達が麻痺(スタン)する。


 これなら・・・


 スタンして転がっているキャンサーを蹴飛ばして道を開ける。まだフヨフヨと漂っている奴らも斬り裂くよりも小手でパリィの要領で打ち払っていく。ブルーベルとポンタさんも同じように一挙に間合いを詰めてきた


 親玉まで一足の間合いに迫ろうかと言う時、いきなり奴の身体がぶれる様に変化する。それを見逃す程油断はしていない。後方に飛ぶように退避する。ポンタさんも同様に飛び退る。


 親玉から飛び出してきた触手、いやそれは槍の様に先端が尖った(やいば)だ。全方位に向かって放たれた何物でも貫き、そして取り込もうとする意思が込められた凶器が俺達が一瞬前までいた場所を埋め尽くす。回避を選択した俺達とは違い防御を選択したブルーベルのハルバードが砕け散る。その勢いに押され後ろに飛ばされた事で追撃を受ける事無く、ダメージは無い様だ


 ルビーゴーレムの武装が後ろから投げ込まれる。リンクして指示を出す立場にあるブルーベルが指示したのだろう。一瞬振り向いて受け取ると大盾と長槍を構えて戦線に復帰するが、先程の様に間合いを詰める訳にはいかなくなった


 キャンサー達が放ってきた触手と違い、親玉が放つ槍には必殺の威力が込められている。その身体からはみ出している門番も槍に突き刺されてそのまま取り込まれたのだろう。どうやら触れた部分から浸食が始まるようでブルーベルのハルバードの破片も槍に取り込まれてしまっている。ブルーベル本人は吹き飛ばされたお蔭で助かった様な物だ。掠る事すら許されないならば、一人槍衾を形成する奴に近づく事すら容易では無くなる


「ポンタさん。俺が行きます。二人は壁に繋がる部分をお願いします」

「いや、しかし・・・そうだな。智大任せる。絶対に捕まるんじゃないぞ」


 一瞬、躊躇(ちゅうちょ)したポンタさんだが状況を鑑みて最適解を導いた様だ。俺なら属性解放する事で得られるスピードが有る、槍衾の様な攻撃でも避けきる自信はある。しかし二人はそこまで躱しきる事は不可能だろう。ならばいっその事離れていてもらった方が動きやすい。壁に繋がっている部分を切り離すのは壁際でも出来るのだからそっちを担当してもらおう


「迅雷」


 いつもの様に呟く様にキーワードを発する。途端に俺の身体を(いかずち)が包み込む。そして解放される身体能力と高速思考。そのスピードで親玉・・・は後回しだ。後衛陣の周りに群がるキャンサー達を薙ぎ払う。ハルカさんが天雷弓の一撃を放った事で敵勢認定されたのか壁に張り付いていたキャンサー達が後衛陣に殺到してしまったのだ。ルビーゴーレム達や魔法で防いではいたのだが数が数だけに押されてしまっていたので、先ずは後衛陣の救助が先だ


 親玉の様に取り込む力は強くないが、通路の途中で見掛けたキャンサーの中には魔物を取り込んでいた奴らも居た以上安全とは言い難い。しかし(いかずち)を纏った俺に触れると、一瞬、収縮したように縮まるとそのまま痺れて地面に転がる。触れるに任せて刀を振るいある物は地面に転がり、刀に撫でられた奴は斬り裂かれてしまう。ただ斬り裂いただけでは飛び散って細かい破片になってしまうが、解放状態の時は刀にも(いかずち)が纏わりついている。断面から煙を上げながら転がるキャンサーだった物達を踏みつけながら蹂躙。後衛陣に余裕が出来たのを確認した後、遂に親玉との対決だ


 親玉との間合いは、まだ遠い・・・だがそれは通常状態の話だ。属性解放『迅雷』の状態の俺ならばこの位の距離など物ともしない。あっという間に奴の間合いに入り込む。そのまま斜め下からの斬り上げ。攻撃を受けた後に俺を認識したのか親玉の身体から無数の槍が伸びてくる


 まさに槍衾。しかしなまじ俺を認識してしまった事で、全方位では無く的確に俺を狙って高密度のそれが伸びてくる・・・が、そこにはもういない。後ろに廻りこんでの袈裟懸け、そのまま高速で移動。勢いのまま横薙ぎの刀を振るう、開いた手で小手に流した(いかずち)を奴の身体に流し込む


 その部分だけ引き攣る様にほぼ円形の身体が歪になり槍の軌道が変化する。空いた隙間に身体を捻じ込み刀を突き刺して放電させる。肉の焼けた嫌な臭いが立ち込めるが、キャンサーよりもでかい身体にはまだまだ不十分のようだ。やはりローラさんの魔法で焼き尽くすしかないだろう


 と、奴の周りに壁が出来始める。ポンタさん達が奴から壁へと伸びた足を断ち切った所からタンドさんが壁を作っていく。天上まで届く壁に回避行動を制限されてしまうのだが、今はそんな事は関係ない。奴の動きを遥かに凌駕した速度で、槍を躱しながらでも攻撃を加える事が出来る。更にまた一面壁が出来る。俺も本体側の足を断ち切ってやると即座に反応したタンドさんが壁を作る。これで三方が塞がれ残すは後一面だ。しかしその一面は部屋の入り口側、門に向かっている面で足は伸びていない


 ステップバックで距離を取ると、大きく跳躍。天井に伸びる触手を通り過ぎながら斬り裂けば重力に引かれて地に落ちるキャンサーの親玉。タンドさんが作った壁を蹴り方向を変えると空いた面から飛び出す


「今だ!」


 俺の合図でタンドさんが最後の壁を生み出す。壁に開けられた窓にローラさんの魔法が飛び込んでいく。同時に巻き上がる竜巻。それは火炎旋風に成長すると一挙に天井まで伸びあがり窓の部分からも炎の触手が伸びてくる。タンドさんがそこを閉じれば壁の内部に荒れ狂う炎の熱が壁の外側を白く変化させる


 やがて親玉が焼き尽くされたのだろう、後衛陣を襲っていたキャンサー達が活動を停止する。壁に張り付いていたキャンサー達もボロボロと崩れ落ちていく。


 ブヨブヨしていた身体は黒く変色して二回り位小さい塊になってしまっていた


「これでしまいやな」

「そうだね。もう少し様子を見てから壁を崩して中を覗いてみようか」


 タンドさんん言葉に刀を鞘に納めるも油断せずに辺りを窺う。一応門は閉めておいた方が良いだろう。キャンサーを始末したのに魔物に襲われました、じゃあ洒落にもならない


 たっぷりと時間を置いて壁が冷めるのを待って、キャンサーの親玉を確認する事になったのであった


読んで頂いて有難うございます

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