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プロローグ

「どりゃぁー」

 掛け声と共に繰り出した、斜め下からの一撃は白い剣線をのこし相手の肩口から抜ける。

 途中にあった核を二つに切り裂かれたゴーレムはその形を徐々に崩していく


「もう少し、静かに倒せないのかしら…」

 という冷たい声に振り替えると声と同じくらい冷たい瞳をした少女が読んでいた本から目を離しこちらを見ている


「いや癖というか習慣というか…」

「ニャハハ、私は嫌いではないなぁ」


 頭を掻きながら困惑する俺にゴーレムを生み出した少女は明るく声をかけてくる。

「ただ実戦でそんなことをしてたら疲れるし敵に狙われるからやめておいた方がいいぞ」

 猫耳をパタパタさせながらその少女『ローラ』は何が楽しのかご機嫌だ

 彼女は猫型の獣人であり尻尾もゆらゆら揺れている。


 そう猫耳と尻尾が生えているのだ。

 コスプレをしているのではなく生まれながらの天然物の猫耳と尻尾なのだ。

 一言文句を言った後、また本に目を戻した少女『田中伶』と5体のゴーレムを倒した俺『黒川智大』はこの世界に渡ってきてから一か月を経てようやくその容姿に慣れてきた。




 あの日、俺と伶はいつもの道を通り学校への登校中にこの世界に呼ばれたのだ。


「やっと学校に行けるぜ」

「そんな優等生みたいに言われても違和感たっぷりね」


 制服のネクタイとシャツのボタンをだらしなく緩め、ペラペラで教科書が入っているのか怪しい鞄を見ながら伶は冷たく突っ込む

 一方の伶は、まさしく優等生。細身で髪を一つに纏め理性的な眼鏡を掛けたおとなしい印象

『図書館の君』といった感じだ


「爺ちゃんの無茶から逃げれる学校は俺にとっては天国だよ」


 俺の言い分には返事をせず、しかし否定もせず伶は俺の横を歩く。

 いつもの風景だ。

 一見すると冷たい伶の言葉と表情だが、その表情にはかすかな微笑が見える。(一部の人のみらしいが)

 俺にしてみると慣れたものだしちょうどいい距離感だ。



 俺たちがまだ小学生の時、伶の両親が事故で他界した時、うちの理不尽大王である祖父は伶を引き取ると主張したのだ

 伶の父親はうちの道場の門下生で付き合いも長く祖父も目をかけていた。

 とはいえ、伶の家にも親戚も居るのだし無茶な話であった。

 祖父曰く、まだ小さな伶に両親のいない現実、その上友達もいない環境への引っ越しをさせるくらいならこのままの環境の方が良いという事だったみたいだ。

 しかし現実には


「「俺が名づけた娘を顔も知らん親戚なんぞに預けれるか!!」」


 と言う一喝だったらしい。


 実際に言われた親戚達は堪らないだろう…

 かなり揉めたらしいが、うちの道場は妙に連帯感が強い。

 たいして役に立たない歴史だけが取り柄の道場だから門下生も少ないのだが、何故か各分野の重役が多くこういう時の説得力が強い。

 教育委員会の重鎮、役所の職員、大企業の社長に政治家まで出てきて伶の親戚達を説得してしまったらしい。

 最終的に伶もそれを望んだことで騒動は収まり、それ以来俺と伶は同じ家に住む。

 兄妹(姉弟)ではないが、幼馴染とも違う奇妙な関係だが俺達は気に入っている。


 親戚たちを説得した門下生たちは、たまに顔を出して伶の様子を見に来る。

 そして、弟弟子であった伶の父親との思い出話をして最後に


「何も心配はいらないからね」


 と高校生になった伶に声を掛けていくのだ

 そんな人たちに見せるかすかな微笑と同じ物を浮かべながら、いつものやり取りをしながら、いつもの道を通り校門抜けた



 はずだった…






















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