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もういじめには屈しない

 この長い戦いは、いつから始まっていたのだろう。


 俺が育美によって異世界転移させられたときか。

 はたまた、古山章三が魔法を手にしたときか。


 いや。違う。

 古山章三がいじめを受け、人間に深い憎悪を抱くようになってから、この闘争は避けられなかったのだ。


 たったひとつのいじめが、国を危機に陥れたと言っても過言ではあるまい。


 燃え盛るような感慨を抱きながら、俺は最悪の大魔王ーー古山章三と対峙した。


 かつて、彩坂育美は言っていた。

 あまりにも強大な力を手に入れた古山章三は、いじめっ子への復讐にとどまらず、さらなる悪に手を染めると。


 実際にもその通りだった。奴は警察組織を手中におさめ、一般国民までも無差別に殺害した。


 そしていま、日本をも支配しようとしている。

 止めなければならない。絶対に。


 ふいにテレポートしてきた俺たちに、古山はしばし呆然とした表情を浮かべていた。


 しかし数秒後には我を取り戻したかのようにニヤリと笑い、指をぱちんと鳴らしてみせた。


 ドタドタドタという、すさまじい数の足音が響いてくる。


「な、なんだ?」


 佐久間が呟いたのも束の間。

 総理公邸の室内に、大勢の警備員、そしてテロリストが走り寄ってきた。警備員のほうは《使役》の力で操っているようだ。俺や育美を含む五十人は、あっと言う間に、それに倍する人数に囲まれた。


 テロリスト連中は全員がレベル10を超えている。

 反してこちらの味方は平均レベル5。

 つまり、敵のほうが二倍強い。


 警備員たちは魔法が使えないようだが、それでも、日本でトップクラスの権力者を警護していた者たちだ。その肉体能力は一筋縄ではいかないだろいう。


「レベル90……ふーん」


 古山はさして興味もなさそうに鼻の筋を掻いた。


「ずいぶん強くなったみたいだね。どうやったかは知らないけど、死んだはずの佐久間までそっちにいるし。でも、さ」


 古山は仰々しく両手を広げてみせた。


「見てよ、この数の差。しかもこっちのほうが断然強い。この状況で勝てるとでも思ってるのかい?」


「勝てるさ」


 古山の傲岸不遜な物言いに、俺も強気で返答する。


「俺たちは負けない……もう、いじめには屈しない!」


 言い終えると、俺は両手を左右に突き出し、スキル《闇の双剣》を発動した。


 たとえ、いかに不利な状況であろうとも。

 たとえ、クラスのみんなに嫌われていようとも。

 俺は負けない。

 自分の力で道を切り開いてみせる。


「そうね……勇樹くんの言う通り」


 俺の脇で、育美もぽつりと呟いた。


「私も負けたくない。もう信じられる人がいるから」


 そう言って、右手を差しだし、育美も戦闘の構えを取る。 

 それにつられたかのように、リベリオンのメンバーもいっせいに身構えた。


 古山が不愉快そうに眉をひくつかせる。


「なんだ……なにを言ってるんだ……無駄なことをするんじゃないよ! 力もないくせに!」


「無駄かどうか、試してみようじゃないか!」


 俺の叫び声を契機に。

 最後の戦いが、幕を開けた。


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