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二つのチート

 高城との別れを告げたあと、俺と彩坂は揃って校舎を出た。


 そのまま人気ひとけのないところまで行き、周囲に誰もいないのを確認すると、彩坂に《空間転移》スキルを発動してもらった。俺たちは漆黒のオーラに覆われ、瞬時に視界がブラックアウトした。


 そして視界が元に戻ったときには、見覚えのある風景が広がっていた。


 一面に広がる荒野に、場違いなほど存在感を放っている近未来的なタワー。


 青、緑、黄、赤と、タワーそのものが変色のサイクルを順に繰り返している。虹色の薄い光線が螺旋式にタワーを包んでおり、正直、いけないとわかっていても見取れてしまう。


 リベリオンの総本部。


 ここに、異世界の古山章三がいる。


 俺は大きく深呼吸をし、気合いを全身に込めながら、彩坂に決然と言い放った。


「さあ、いくぞ!」

「うん!」

 




 俺は予想外なものを見た。

 この戦いにおいて、メインの戦力になるのは俺だと思っていた。俺はレベル30を越えているし、そのへんの構成員くらいなら軽く蹴散らすことができる。


 対して彩坂のレベルは5だ。敵と比べて決して見劣りするわけではないが、無双しながらタワーを突っ切るには少々不安なレベルだ。


 だが、その認識は甘かった。

 彩坂の《空間転移》はMPを1しか消費しない仕様らしい。

 つまり、ワープしまくって敵を惑わせるという、贅沢な使い方もできるわけだ。


 ならばと思って俺も《空間転移》を使用してみたが、MPを20も消費してしまい、あまりに燃費が悪い。おとなしくオーソドックスに戦うことにした。


 そしていまも、構成員のひとりが彩坂に言いように蹂躙されていた。

 

《坂山和也 レベル15

 

 HP 97/97 MP 42/100

 MA 2100 MD 1203》

 


 レベル15ということで、少々の長期戦は予想していたのだが、彩坂の活躍っぷりが良い意味でそれを裏切ってくれた。


 繰り返されるワープにすっかり取り乱した構成員は、彩坂に向けて巨大な闇の可視放射を放つ。しかしながら、次の瞬間にも彩坂は転移を行っており、可視放射はむなしく空を突っ切っていく。


「いまよ、吉岡くん!」

「お、おう!」


 俺は急いで右手を突き出し、光の可視放射を放つ。あとは、放たれた光魔法が、構成員に通常の二倍近いダメージを与えてくれる。


 光線に飲み込まれた構成員は、HPをわずかだけ残しながら、その場に倒れた。


「くっ……ワープとか光魔法とか……反則だ」


 完全に気を失ったのを見て、俺は彩坂に親指を突き出す。彩坂は頷くと、また先に進み始める。


 彩坂のチートスキルと、俺のチートステータス。この二つの相性は悪くないといえた。実際にも、長丁場になるだろうと思われたタワー攻略を、俺たちはものの一時間で完了させた。


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