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謎ハーレム

 どうやら俺と高城絵美は、無事に異世界に転移できたようだ。高城のステータスが、昨日と変わらない数値で確認できる。


 よくよく考えれば、高城も俺のステータスが見えているはずなのだから、さきほど門で会ったときも、俺が吉岡勇樹だとわかっていたはずだ。それなのにさっきの慌てっぷりは何なのか。


 そしていまも彼女は、俺の隣で自転車を漕ぎながら、訳のわからないことを呟いている。


「反則だよなぁ……中身だけじゃなくて見た目まで……ブツブツ」


「おい、なに言ってんだ」


「え?」

 はっとしたようにこちらを見る。

「いやあ、なんでもないのよアハハ」


 絶対嘘だと思ったが、面倒くさいのでこれ以上突っ込まないようにした。代わりに別のことを言う。


「それにしても良かったな……自分だけがここに来たんだと思ってたか」


「ここ……っていうのは、やっぱり異世界?」


 俺はこくりと頷いてみせる。


 元世界が「光」ならば、この異世界は「闇」。

 そして俺は彩坂育美という謎の少女によって、この異世界に連れて来られた。


 このことは軽く高城に説明してあった。まさか二人揃って異世界転移する日が来ようとは思ってもいなかったが。


「その……彩坂っていうのは、昨日、古山から私たちを助けてくれた人だよね?」


「ああ。おまえに魔法をプレゼントしたのもあいつだ」


「何者……なの? あの人」


「う、うーん、それなんだよなあ」


 彩坂育美は、すべての事件の発端でありながら、その正体が全然わからない。問いただしたところで、「時間がない」と言っていつも消えてしまう。


 それだけじゃない。


 俺が彼女に初めて会ったとき、俺は何故か彼女の名を知っていた。一度も会ったことはないはずなのに。


 正直、謎が謎を呼んで訳がわからないのだ。異世界に住むおとなしい彩坂育美と、突如俺たちの前に現れる彩坂育美は、外見は同じに見えるが性格もまるで異なる。


「……ねえ」

 と、高城がじろっと横目で睨んできた。

「いま彼女のこと考えてたでしょ」


「……え?」


 いいじゃないか別にーーと言い返そうとしたが、できなかった。彼女のいわく言い難い殺気がそうさせた。


 なんなんだいったい……


 またも首をかしげながら、俺たちは学校への道をひたすら進んでいっった。


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