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そういえばリア充になってたんだ俺

「勇樹ー、起きなさい、朝ご飯よー」


 この声に起こされるのは何度目だろうか。


 俺は薄く目を開ける。

 無機質な白い天井が視界に映った。目線をずらすと、これも見慣れた学習机や本棚が並んでいる。


 ーー異世界に来たか……


 俺は片腕を額に乗せ、大きく息を吐きだした。


 俺は逃げてきたのだ。

 レベル90の強さを誇る大魔王、古山章三から。


 その場にいた高城や父親がどうなったのかは知るよしもないが、あのとき彩坂が来なければ、間違いなく俺は殺されていた。


 ここで、自分だけ逃げてきてしまったとか、自分の不手際だったとか、あまりヒーローじみたことを考えるつもりは毛頭ない。だが敵前で大事な人を残し、逃亡したということだけは事実だった。


 ちくしょう……

 声にならない呟きを発する。


 あいつに対抗するには、俺も相応の力を身につけなければならない。ステータスオール9に匹敵する、圧倒的な力が。


 でも、どうやって……

 そこで俺は考えるのを辞めた。登校の時間が迫っていたし、おそらく長考したところで答えは出ない。


 柔らかな表情でトーストをかじる父親にモヤモヤ感を抱きながら、俺も急いで食パンをかき込み、家を出る。


「あ」

 門を出たところで呼びとめられた。


 高城絵美だった。

 しかし様子がおかしい。制服を着た姿はそのままだが、顔にはわずかな疲弊のいろが見て取れる。


 高城は続けて言った。


「あ、あの、吉岡勇樹くんの、お兄さんですか……?」


 その発言に、俺はある種の予感を抱いた。半ばほっとしながら言う。


「なんだ、おまえも古山から逃げて来られたんだな」


「え……なん……?」


 大きく目を見開く高城に、俺は意味もわからず首をかしげる。


「どうした。おまえ昨日、一緒に警察署で戦っただろ?」


「そ……そうだけど、いや、ちょっと待って」


 そこで高城は呼吸を落ち着かせ、数秒置いてから、まじまじと俺を見上げた。


「吉岡くん……なの? お兄さんじゃなくて?」


「え? ……あっ」


 言われて気づいた。

 この世界での吉岡勇樹は少女漫画顔負けのイケメンだった。それをすっかり忘れていた。


 高城にしてみれば、知らない顔の人間が昨日の顛末を喋り出したのだから、そりゃ困惑するだろう。


 しかしながら、高城が困っていた理由はそれだけではないようだった。両手を頬に当て、ムンクのなんとやらというポーズを取りながら言う。


「嘘……超タイプ……」

 


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