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俺の魔法を見よ

 二人の警官が倒れたのを契機に、けたたましい警報音が鳴り響いた。


 操られているとはいえ、腐っても警察官、さすがの連携っぷりだった。

 俺がごり押しで署内に入ろうとするも、その進行方向に数人の敵が立ちはだかる。

 ならばと別方向に行こうとしたのだが、そこにも敵が待ちかまえていた。


 俺たちはあっという間に警察官に囲まれた。


 ざっと数えただけでも三十人はいる。全員が銃をこちらに向けており、意志のないいくつもの瞳が俺たちを捉える。


 その冷徹きわまりない表情に、内心ぞっとしてしまったことは否定できない。いまの奴らに良心なんて欠片もない。すこしでも逃げだそうとすれば、躊躇なく引き金に指をかけるだろう。


「ねえ、これ……どうするの?」 

 高城が張り詰めた声を発する。


 俺と背中を合わせ、互いに背後を預けた形になっているが、さすがに動揺を隠し切れないようだ。そりゃあ昨日まで青春を満喫してきた女子高生なのだ。これはあまりに異常なシチュエーションだろう。


「心配するな。……それより高城、ちょいと目を瞑っていてくれないか」


「……え?」


 何人もの警察官を相手にしにきたのだ。この状況も打破できないのでは、間抜けもいいところである。


 俺は目を閉じ、両手を開いてみせた。体内で魔力の胎動をふつふつと感じる。全身がほのかに温かくなる。


 ーーいまだ!

 俺は体内に蓄積された魔力を一気に解放した。ばっと両腕を肩の高さにまで持ち上げる。


 警察官の集団のなかに、いくつもの光の柱が降りた。キラキラという儚げな音を発したかと思うと、一転してすさまじい爆発音を轟かせる。何人もの警察官が、悲鳴をあげ、吹き飛んでいった。衝撃のあまり、警察署の窓ガラスが乾いた音ともに割れていく。


 これが、さきほどの訓練によって身につけた、範囲攻撃の魔法である。使用すると大量のMPを消費するが、そのぶん範囲・威力ともに強力である。


 吹き飛んでいった警察官は、地面に横たわったまま動かなくなっていた。もう襲いかかってくる気配はない。


 手加減はした。死んではいないはずだ。彼らも佐久間に操られていただけだし、どちらかといえば被害者だ。


 高城絵美は俺の言いつけ通りにぎゅっと目をつぶっていた。俺はぽんと彼女の肩を叩いた。


「もう目開けていいぞ」


 そして彼女は倒れた警官たちを見たとき、

「わっ」

 という声を発した。


「こ、これ……あんたがやったの?」


「まあ、な。そろそろ行くぞ。また囲まれたら面倒だ」


「こ……これ、私魔法もらう必要あったかな……」


 高城の囁き声を聞き流しながら、俺は佐久間祐司がいるであろう場所ーー警察署内に足を踏み入れた。


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