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やっぱり女心はわからん

 俺はごくりと唾を飲んだ。


 佐久間のステータスは数値的にはたいしたことない。それはおそらく、強大な「使役」の力ゆえだということか。闇魔法の珍しいこちらの世界においては、たしかに重宝する人員だろう。


 俺は思い出した。

 リベリオンの本拠地にて、訓練の手伝いをしてくれたのが佐久間だったのだ。やっぱり吉岡の魔力が羨ましいよーーなどと言っていたが、やはり別の力を隠し持っていたか。


 ふと気づけば、彩坂の身体はかなり透明感を増しつつあった。このまま手を伸ばしても触れられそうにないほどだ。「時間がない」というのが具体的にどういうことなのかは不明だが、たしかにあと数分もすれば彩坂の肉体は消えてしまいそうだ。


 そう感じ取った俺は、やはりやや早口気味で訊ねた。


「教えてくれ。その使役を解くにはどうすればいい」


「佐久間本人を倒すか、もしくは本人に解除してもらうしかない。いま佐久間は埼玉警察署にいるはずよ」


 警察署……

 やはりこの周辺の警察組織を手中に収めようとしているーーということか。そうはさせない。絶対に止めてやる。


「最後に頼む……。高城に、魔法を譲渡してやってくれないか?」


「……え?」


 彩坂が目を丸くする。


「俺がやってもいいんだが、この先MPは重要な生命線になりそうだからな。できればお願いしたい」


 女の子を守りながら戦うーーそれが通用するほど甘い相手ではなさそうだ。ここはひとりでも戦力を増やしておきたいところである。弱者の痛みを知った高城には、もう魔法を乱用する心配もないだろう。


「……わかったわよ」


 なぜか若干むすっとした表情で、彩坂は高城に向き直った。彼女と手を繋ぎ、しっかりと高城の瞳を見つめる。


「本当は私が吉岡くんをフォローしたいところだけど……いまの私には無理。頼んだよ。きちんと吉岡くんを守ってね」


「え……え?」


 意味がわからないのだろう、狼狽する高城の手が、ほのかに金色の輝きを帯びた。光魔法を修得したようだ。


 彩坂は続けて言った。


「……魔法の使い方も、あなたならわかると思う。お願い……この世界を、頼んだよ」


 最後の一言はかすれ声だった。

 俺が目を見開く間にも、彩坂の身体はいくばくかの光の残滓を残しつつも、完全に空気に溶けてなくなった。時間がない、とはこういうことか。


「ね……ねえ」


 自身の手を閉じたり開いたりする高城絵美は、しかしまったく予想外のことを訊ねてきた。


「あの人、誰?」


「え? ん、んーと……」


 誰かと言われれば、正直言葉に詰まってしまう。


「わからん。だが、ずっと前からの知り合いだったことは確かだ」


「ふーん」


 やや不機嫌そうな声音で眉をひそめる高城。


 なんだ? なんか気に障ることでも言ったっけ?

 少々の疑問を抱えながらも、俺は軽く、魔法について高城に説明した。


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