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イケメンになると、知らぬ間にフラグを立ててしまうようです

「わあああああっ!」

 絶叫とともに、俺は地面に激突した。

 ドテッと一度身体を跳ね上がらせたあと、コロコロと転がる。


 のだが。


「い、痛くない……」


 飛行機も真っ青な高度から落ちたにも関わらず、痛みがまったく発生しなかった。全身を見渡しても、傷ひとつ見あたらない。


「これが魔法の効果……」


 姿勢をたて直し、地面に胡座をかきながら呟くと、隣で彩坂がぶんぶん首を振った。


「違うよ。吉岡くんの魔力が高すぎるの」

「俺の、魔力……」


 周囲を見てみると、途方もない距離を移動した影響か、まったく知らない場所にいた。


 かなり巨大な公園なのだろう、見渡す限り芝生が広がっている。夕陽はもう暮れる直前にまで沈んでおり、わずかなオレンジ色の輝きが、周囲を切なく染め上げている。俺の近所にこんな公園はない。


「え、宇宙人……?」


 その声に振り向くと、さっきまでサッカーで遊んでいたらしい子どもたちが、ぎょっとした表情で俺たちを凝視していた。


 彼らにぎこちない笑みを返しながら、俺は改めて魔法の強大さを思い知った。


 下手すると関東地方の外に来たかもしれないのに、それでもなおピンピンしている俺。いくらなんでも常軌を逸している。


 芝生に仰向けになりつつ、俺は彩坂に訊ねる。


「なあ、なにがどうなってんだ。いい加減教えてくれよ」


 俺が異世界転移した理由。

 魔法が使えるようになった理由。

 彩坂育美とは誰なのか。

 そして、謎の失踪事件について。

 わからないことは山ほどある。


 そんな俺に対し、彩坂は切ない表情を浮かべながら、俺の隣にちょこんと座った。


「ごめんね……時間がないから、全部は話せないけれど、できる限り教えるよ」


 いわく。

 俺の睨んだ通り、ここはいわゆる異世界らしい。

 それも元世界と密接に繋がっているという。


 元世界が「光」ならば、この世界は「闇」なのだと彩坂は言った。


 驚くべきことに、俺は本来、「闇」の世界の住人だという。イケメンかつリア充なのが本来の吉岡勇樹であり、元世界の吉岡勇樹は本当は存在しなかったのだと。


「あなたはね、一度殺されてるの。最悪の魔法使い、古山章三に」

「え……な、なん……」


 とんでもないことをさらりと言うものだから、俺は数秒間呆けてしまった。


「殺されたって……死んだってことか」


 あまりにも間抜けな切り返しだったが、彩坂はこくりと頷いた。


「あなたは全人類の希望だったの。でも古山に殺されて……そこから先の未来は、もう思い出したくもないわ」


 そこで言葉を区切ると、彩坂は悲痛きわまる表情で俺を見つめた。


「でも、なにより……私の人生を変えてくれた吉岡くんが死ぬなんて、私には耐えられなかった」


「え……」


「最初ね、吉岡くんが私にライン交換してくれたとき、本当に嬉しかったんだよ。それからずっと吉岡くんのことばっかり考えて、恋してるんだなって思うようになって……」


「お、おいおい……」


 言われているこっちが恥ずかしくなりそうだった。


 恋って、冗談だろ? よりによって俺なんかに。

 たしかにあのライン交換は、きっと彩坂のためになると思ったからやったことだ。けれど、そこまで思われていたなんて……


「ね、お願い。また同じことを繰り返しちゃいけない。古山を倒して。みんなを助けて」


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