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異世界転移したら女を口説くのも楽勝らしい

 俺と彩坂にはかなりの身長差があった。


 というより、こっちの世界に来て俺はかなり大きくなったと思う。視線の高さが段違いだ。


 反して彩坂はかなりの低身長。普通に話したら圧迫感を与えるかもしれない。


 そう判断した俺は、低姿勢をつくって彩坂の顔色を窺った。


「大丈夫か?」

「う……うん」


 彩坂は顔を赤くし、ひたすらにうつむいている。かなり怖い目に遭ったのか、瞳までが充血している。


 周囲には誰もいなかった。教師の声だけがそこかしこで響いている。授業が始まったようだ。


「こんなんじゃあ体育どころじゃないよな。どっかテキトーなところで時間潰そうぜ」

「ど……どこで?」

「ん、んーそうだなぁ」


 強気に言ってみたのはいいが、そういえば良い場所を知らない。


「じゃ、いったん教室に戻ろう。どうせ誰も来ないだろ」

「でも、えっと、よ、吉岡くんはいいの? 授業が……」


 言われてにこっと笑ってみせる。


「別にいいのさ。俺は授業なんかより、ずっとおまえと話したかったーーって、あ」


 セリフの途中で我に帰った。


 別にそういうつもりで言ったわけではないが、いまの発言は、正直口説いているようにしか思えない。


 案の定、彩坂はさらにぼっと顔を赤くしている。


 いくらリア充に転移したといえど、高校生なんぞがこんなシチュエーションに強いはずもなく。

 真っ白になる思考をなんとか回転させ、俺は必死に次の言葉を発した。


「と、とととにかく、おまえはトイレで着替えてろよ。そしたら教室に戻ろうぜ」


 なによりも、水に透けた体育着を着ている彩坂は、色々と教育に悪い。


 そんな俺の内心を知ってか知らずか、彩坂は教室から着替えを取ると、素直にトイレに引き返した。


 俺はほうっと息を吐き、廊下の壁に身を預けた。


 ーーどうなっている?

 あの様子から察するに、おそらくいまの彩坂は、初めて俺が会った彼女とはまったくの別人格だ。性格からして異なっている。そのうえ俺にどこかよそよそしい。


 どうなってやがるんだ、まったく。


 着替えを終えた彩坂とともに、俺たちは教室に戻った。隣同士の席に座る。


 いまごろ体育の教師は慌てているだろう。なにしろ二人も欠員しているのだ。まあ、あとで適当に言い訳しておけばいいか。


 無人の教室。

 そこに俺たちだけがいる。


 この世界の彩坂育美はかなりの人見知りらしい。顔を桜色に染めたまま、身じろぎもしない。


 といって、緊張しているのは彼女だけではない。

 胸の高鳴りを抱きつつ、俺はずっと気になっていた質問をぶつけた。


「なあ……なんで俺をこの世界に招待したんだ?」

「え?」


 彩坂が目を丸くする。


「な、なんのこと?」

「いや、なんでもないんだ」


 言いながら内心でため息をつく。


 思った通りだ。

 この彩坂育美は、俺を異世界転移させた少女とは別人物だ。そうでも考えないと、この奇怪な状況の説明がつかない。


 にわかには信じ難いが、それを言うなら昨日から意味不明なことの連続だ。いったいどうなっているのか。


 俺を転移させる寸前、彩坂はこう言っていた。

 ーーお願い、私たちを、助けて。


 助けてとはなにを意味するのか。俺はどうすればいいのか。謎が謎を呼んでわけがわからない。


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