憧れと呆れ
「お嬢様、お手を…」
私は送りの馬車に揺られながらお城へ向かった。
「ありがと。」
ラリアの手を取り馬車を降りる。久しぶりに香るこの雰囲気。私の苦手なこの雰囲気。ドアを抜ければさらにますのであろう。深呼吸にため息を混ぜ息をしてドアを抜けると
「リ…リュ?」
後ろを振り返ると1人の女の子が立っていた。
「リリィじゃない!お久しぶりね。」
彼女はシェナ。家が隣同士で、私に居る唯一の友達。そして親友だ。私は『リリュ』、シェナは『リリィ』というあだ名で呼び合っている。まぁ本当は『彼女』ではなく『彼』と呼ぶ方がふさわしいのだ。見た目は女だが中身は男なのだから。
「元気にしてた?なかなか会えないから心配だったんだよ?」
私の手を取り心配そうな目で見つめた。
「元気よ。心配してくれて嬉しいわ!リリィはどう?元気にしてる?」
「ええ。このとうり元気であふれてるわ!」
何にでもなりきってしまう彼なので本当に私の親友は男なのかといつも疑ってしまう。
「お嬢様そろそろ…」
「あぁ。そうね、ごめんなさい。…じゃあまたねリリィ!」
「また、近いうちにお茶しましょうリリュ。」
リリィに手を振りその場を離れた。私はラリアの腕に手をかけ歩き始めた。
「お嬢様、気をつけてくださいね。」
「それぐらい…わかっているわ。」
「さようでごさいますか。」
「…貴方もよラリア。私の目をそんなに甘く見ないで。自分の身くらいもう自分で守れるわ。」
「はい。そうでしたね。」
ラリアは少し微笑んだ。
私の家系は少し複雑で、一度私の誘拐事件があった。その時から私は一歩も外へ出ることができなくなった。というか出してもらえなかったのだ。ほんとは学校に通うことができていた。友達だってたくさんいたはずなのに。
「どうも、初めまして。いつも奥様にはお世話になっております。」
「どうもご無沙汰です…奈津さん。」
「あれれぇ?覚えててくれたんですか⁉︎嬉しいですね!」
この人は里江 奈津隣の国に住んでいるお祖母様のご友人の息子だそうだ。
「まぁ母上の付き人、秘書のようなものですので。お久しぶりです、松峯さん。」
「どうも。」
彼は松峯 天。口数は少ないが私は尊敬している。私は高峯さんの考え方が大好きなのだ。重みのある言葉が。
奈津は私に手を差し出し言った。
「よかったら踊っていただけませんか?」
「えぇ。」
私は差し出された手に手を添えた。
「よろしいのですか?」
「断る理由は無いので…。」
なぜ驚かれてしまったのか不思議に思ったが気にせず一曲付き合った。そしてその後は挨拶回りをして時間が過ぎていった。
「疲れた…ラリア抱っこー。」
私はふざけてラリアに両手を広げた。
「お嬢様…。」
「ごめんなさい。」
少しふざけただけなのにすごく圧のある声が私に降り注いだ。
「お嬢様…これから王子のところへ向かいます。よろしいですか?」
「大丈夫よ。でももう帰りたい。」
「そうですか…。」
すこしイラついた声が降ってきた。
「ごめんなさい。」
「わかっているのでしたらそうしてください。」
「はい。」
私はラリアに従い重い足取りで王子の元へと足を進めた。
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