初めての
今読んでいる本は、私の大好きな本。毎日何度でも読み返している。
主人公『リアンダ』が孤独の少女を救う話。リアンダはいつも笑顔を絶やさず働いていた。そんなある日ひとりの少女に出会った。少女はリアンダを見るなり震えながらこう言った。
「お願い…国兵隊に言わないで!お願い…だからっ!」
ドレスに身を包んでいた少女は倒れこんだ。少女の思いを察したリアンダは少女を抱きかかえ自分の家へと運び入れた。二人にはいつしか愛が芽生え恋人になり幸せな日々を過ごしていた。しかし少女は国兵隊に見つかり城へ連れ戻されてしまう。
この続きは読んだことがない。ここからページが切り取られているのだ。だから早くここから出て本を探しに行きたい。Happy EndなのかBad Endなのかは分からない。だけど私は知りたいのだ。真実というものを…
ニャー
後ろを振り返ると窓の縁に猫がいた。
「こんにちは。」
「ニャー」
私は頭を撫でた。すると…
「ごめんなさい!」
窓の外から声がした。覗いてみるとそこにはあの少年がいた。
「あっ…あの!着替えたら迎えに行くので部屋にいさせてもらってもいいですか?」
彼は恥ずかしそうに顔を背け服の片隅をぎゅっとつかんで言っていた。
「ごめんなさい。私じゃ渡せないから今からそちらにラリアを向かわせるわ。待っていて。」
「いえ!取りに行かせてください!」
そう言って彼は走り去った。
私は窓を閉め彼を待つことにした。
コンコン…
ドアの叩く音が部屋に響いた。
「はい。」
「お嬢様、お客様が来ておりますが…」
ラリアが入ってきた。
「通してくださるの?」
「いえ。会うことはできませんが叔母様が扉の前までならいいと。」
やはりあと2ヶ月、私には自由はないのだ。改めて感じる。
「そう、じゃあ渡したいものがあるからその時だけあわせていただけないかしら?」
「聞いて参りますね。」
私はその間に手紙を書いた。
「お待たせいたしました。すみませんが私が御受け取りいたします。」
「じゃあこの猫をお願い。私の部屋に入り込んでしまったの」
「は…い。かしこまりました。」
少し戸惑っているように見えたが猫を抱え笑顔で部屋から出ていった。
コンコン…
ラリアより弱めの音がした。
「どうも…こんにちは。」
緊張しているのか少し声が震えている。私はドアの前に座り込んだ。
「こんにちは。私は…ライトっていうの。貴方のお名前をお聞きしてもいいかしら?」
この名前は少し男っぽくて好きではなかった。
「えっ…?あっ!ぼっ僕はリアンダと言います。」
「貴方のお名前も猫のお名前もとても素敵ね…私の大好きな本と一緒の名前…貴方と友達になれて私は光栄ね」
相手には見えていないけれど私は満面の笑みを浮かべた。
「…貴方の名前も猫の名前も僕の大好きな本に出てきますよ。僕も貴方の名前が大好きです。」
「あっありが…とう。」
扉越しでよかった。自分でもわかるほどに顔があかくなっていた。
「そんなこと言われたの初めて。だからとても嬉しいわ。…あの、よかったらこれをもらってくれないかしら?」
私はドアの下の隙間から手紙の入った封筒を一枚差し出した。
「これは…?」
「貴方にもらって欲しいの。」
「僕に?ありがとう!」
柔らかくはっきりした声が聞こえ、手紙が一気に引き抜かれた。
「ごめんなさい。この後用事があるの。だから…」
「あっ僕もなんです。いろいろ貴方とは奇遇ですね。」
「そうね。」
私は嬉しくなってニヤニヤしてしまった。
「では失礼しますね!また会いましょう!」
「えぇ。また…」
私はドアから離れた。『また会いましょう』この言葉にドキッとしたのだった。
続けての閲覧ありがとうございますm(__)m