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☆.トイレ

 この話は、ストーリーにまったく影響しない話題です。

 読み飛ばしていただいても問題ありません。

 トイレ事情の下品な話なので、苦手な方は読まずに飛ばしてください。

 ヘトヘトに疲れながらも歩いている間は、いろいろと気もまぎれていたものの……休憩をとり、水分を補給してしまうと、いきなり感じてくるそわそわ感。もじもじと膝をすり合わせたところで、何の解決にもなりはせず、解放を求めて震えが走る。とても無視できやしないこの心地を、どうしたらいいものか……。

 当然ながら、近くに建物なんてありはしないし、よしんばあったとしても、綺麗な水洗トイレなんて望めやしない。ちょこっと家にもどってしてくる……なんてこと、当然ながらできるわけがなく、この場合、木立の陰や茂みの向こうというのが、一番妥当な場所なんだろう。

 ところで、いきなり茂みに駆け込んで行ったら、彼は、トイレだろうと察してほっといてくれるだろうか? 見ぬふり聞かぬふりとかしてくれるだろうか?

 あまり遠く離れてしまっても怖いながら、近すぎても音や匂いが嫌だから……その微妙な距離をどう測るべきか……悩みが尽きないながら、ますます高まる尿意に困ってしまい、思わずじっと彼を見つめた。

 お花摘みに行ってきますとか、御不浄さんとか、憚りながらとか言った方がいいのでしょうか? それともなんだっけ、レストルーム? ウーマンズルーム? なんだっけーなんだっけーなんだっけーっ。

「ピー?」

トイレに行きたいのですよ! そう言いたくて頭の中がパニックになっているところで、さらによくわからない問いかけが向けられましたよ。なんだよピーって、鳴いてるのかよ。

 わからないのでとりあえず俯き、もじもじもじもじしてみるも、もうどうしようもない状態。一刻も早くなんとかしないと、もっと悲惨なことにもなってしまいそうだ。

 だいたい、言葉がなくてもこんな仕草していれば、少しは察するものだろう。わかっているならついてこないよねと、説明責任も果たさずに決めつけておき、おもむろに立ち上がった。

「ジャストアモーメント」

日本語英語もいいところな言葉を、とりあえず言ってみたものの、意味なんて通じなくてもいいよ。もう、緊急事態で大慌てながら、荷物も放って近くの茂みの向こうに駆け込んだ。

 こんもりとした茂みの向こう側へ出て、もう少し奥へ行った方がいいかどうか悩んだところで、ガサガサと茂みを分けて彼がついてきた音がする。いや、この状態でついてくるなんておかしいだろう、普通わかるだろう、ほっといてくれよ、すぐ戻るから。

「ビカゥ イッツ ドゥレゴン。ドンッツ ゴートゥ ザ・エンディル」

多分、行くなって言っているんだろうけど、遠くまで行く気はないから、すぐ戻るから。だから荷物だっておいていったんだから……わざわざ私が置いてった荷物を持って、追いかけてこないでくれ。

 もう、泣きたい気持ちでもう少し向こうの茂みに行くも、それでも彼がついてくる。どこまで行ってもついてきそうだし、このままだと、もうビショビショズボンの刑に服するしかなくなる。

 意を決してズボンに手をかけると、さすがに彼が目を逸らした。今更かよ! とか思ったりしながら、ズボンも下着も下ろして、その場にしゃがみこんだ。

「ルィム ノゥ、ドンッツ フィニア」

謝罪なのか言い訳なのかわからないが、なにやらぼそぼそと呟いた後で、彼は、いきなり口笛拭き始めた。

 なんで口笛拭くんだよーっ! あれですか? トイレの音をごまかすための音楽ですか? 突っ込みいれたくてしょうがなかったけれど、言うべき言葉なんてわからないし、もう、なんかやけくそというかどうでもいい気持ちになっていた。

 とりあえず、解放感にホッと安堵が広がるものの、段差があったり穴があったりするわけでもない土の上、いきなり放ってしまったせいで、足元までびちゃびちゃになってしまった。とりあえずズボンの裾が汚れずに済んだのはよかったが、次からは、せめて穴でも掘っておこうと心に決めた。

 では拭こうと思ったところで、考えてみれば、ティッシュもトイレットペーパーもあるわけない。どうしようと焦っていたら、大きな木の葉が差し出された。もみほぐされた木の葉は、確かに拭きやすそうではあるけれど、視線をもたげて差し出す手の先を見て、当たり前だが差し出す相手がジェンだったことに気が付いて……なんだか、ぶん殴りたいような、逃げ出したいような、恥ずかしくてしょうがない気持ちに駆られて涙がにじんだ。もちろんこちらを見ているわけではないけれど、それでも音も匂いも隠しようがなく、タイミングからしてある程度の意識が向いていると考えると、恥ずかし死ねる勢いである。

 とりあえずその葉を受け取り、さっさと拭いて服を正すと、土を蹴飛ばしかけて後始末をし、大回りして彼を避けて小川に戻った。小川に戻って手を洗うものの、ポケットから取り出した手ぬぐいが、彼からもらったものだと考えると、ますます悔しくなってしまう。

 荷物を持ったジェンは、そのまま私が手を洗うのを待ち、ずんずん歩き出す私の後ろをゆっくりと追いかけながら、

「ポティ、ユォ ポティ。ドゥ ユォ ショルツ? ユォ ハクゥ シュリッツ? ドンッツ フィニア」

何やらなだめるような口ぶりで、いろいろと言い出したが、とりあえず、もう少し腹の虫がおさまるまでは、無視しておくことにした。

財産:財布&携帯電話&鍵(元の世界のもの)/謎コイン(帰るためのアイテムかもしれない)/ナイフ×3/銀貨×5/シャコ虫の殻/手ぬぐい

装備:帽子/Tシャツ/Gパン/スニーカー

交流:ジェンシス(黒騎士)

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