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今日の僕らは曇天模様

作者: しかうさぎ

 こちらも同じく他サイトからです。


 今回は少しだけ改稿してしまいました。なにせ改稿前は場所がはっきりしないという大ポカをやらかしてしまったもので(苦笑)


 さて、今回の大きなテーマは『たまにはやる気の出ない日があったっていいじゃない!』です。

 一所懸命生きてればたまには疲れてしまうこともあります。そんな時はちょっとくらい休んでみるのもいいんでない?

 そんなちょっとした『隙間』に目を向けてみました。

 それではしかうさぎさんの第二作。

 はりきってどうぞ!

「夏……終わっちまったなぁ」


 いや、世間一般ではまだまだ夏真っ盛りなんだがな。

 とは言え、甲子園出場の夢を絶たれた元野球部である俺にとって今は既に夏ではない。

「……はぁ」

 窓際にある自分の席から外を眺めなつつ、何度目ともしれない溜め息をつく。いや、あんまりよくはないと分かってはいるんだがつい、な。やることもなくなって、なんだか気分が乗らないし、学業にも身が入らない(元からというツッコミはなしで頼む)。

「はぁ……」


「ちょっと……あんまり溜め息つかないでくれる? こっちまで滅入ってくるんだけど」

 突如聞こえてきた声に少し驚きながら振り返る。教室の入り口付近に一人の少女が立っていた。おさげにまん丸眼鏡、これでもかと言わんばかりに規則通りに着こなされた制服……『今時有り得ないだろ!』と全力でツッコミを入れたくなるレベルでの委員長スタイル。勿論、俺のクラスの委員長だ。

「おー、委員長。なんか用?」


「進路調査のプリントを届けに来ただけよ」


「進路調査ぁ?」


「やる気ないわねぇ」

 委員長は呆れた様に呟きながら俺の前の席に腰を下ろす。なんかまだあるのかと思ったんだが、目を合わせないままなかなか話し出さない。

 駄目だ。沈黙に耐えられん。俺から話し掛けるか?

「あの」


「…………残念だったわね」


「ん、あー……」

 俺の決意を返せ!

 いや、まぁそんなことはどうでもいい。

 委員長はこれが言いたかったんだな。俺が試合に負けて落ち込んでると勘違いして慰めようとしたのか。

 素直じゃない優しさに苦笑が漏れる。

「いや、あの試合に悔いはない。ただ……」


「ただ?」

 こっちを向いた委員長の眼鏡越しの瞳が一瞬綺麗に見えてドキリとした。

 いやいやいや、おい俺。これは委員長だぞ? おさげだし眼鏡だし。

 俺は自分に言い訳しながら、動揺を悟られないよう目をそらした。

「ただ……なんか気が抜けたっていうか。そんな感じ」


「……燃え尽き症候群、か」


「何、それ?」


「今まで熱中していたもの、もしくは目標なんかがなくなって、何をすればいいか分からず、やる気等がなくなる状態のこと……かしらね」

 なるほどね。目からウロコ。今の状況ピシャリだ。尊敬しちゃうぜ委員長!

 どうもその思いが俺の視線に現れていたらしく、見つめられた委員長は少し顔を赤らめながら恥ずかしそうに目を伏せた。

 な、なんか間が持たねぇ。

 話題を探す為に外に目をやる。

 ふと思い出したフレーズを口ずさむ。

「……いつもの綺麗な夕焼けが見えない。同じなのに何か違う。今日の気分は曇り空、か」

 って痛すぎるだろ俺!

 我に返って慌てて委員長の方に顔を向け直す。思った通りまるで不気味なものでも見るかのように怯えた瞳をしていた。

「ち、違う! 妹の書いたポエムだから!」


「な、なんだ。おどかさないでよ。……もしかして勝手に見たの?」


「なわけねぇだろ。……毎回見せにくるんだよ」


「ふーん」

 こ、こいつ、信じてねぇ。

 委員長が向けてくる疑いの眼差しにいたたまれなくなって再度外を見る。

 そして気付く。

 もしかしたらそんな症状だから世界が曇って見えるんだろうか。

「委員長にはどう見える?」


「え?」


「この夕焼け」


「……綺麗だと思うわ」

 委員長は照れながらもきちんと答えてくれた。今日はなんか普段の委員長とは違う気がする。

 ……いや、逆か。俺が普段とは違うから、いつもと見え方が変わってるんだ。

 だからだろうか。ついそんな委員長に弱音を吐いてしまう。

「俺には……あんまり綺麗には見えねぇよ」


「目が悪いだけかもよ? ……眼鏡、掛けてみる?」

 そう言って少し困った顔をして眼鏡を差し出してくる。俺はそれを受け取り、渋々掛けてみる。

 いや、こんなもんでどうにかなるわけが−−



「あ、委員長の顔がキレイに見える」



「っな、何を言って、ば、馬鹿じゃないの!?」


 俺の一言に赤面して机を叩きながら立ち上がる。

「え、っと。い、委員長の顔がはっきり見えるって意味だったんだけど……」


「っ!!」

 勘違いに気付いた委員長は見ている俺までも恥ずかしくなる勢いで、先程より更に顔を真紅に染めて一言――

「か、帰る!!」

 そう言って走り去った。

「きゃう!!」


「……あ、眼鏡」

 恐らく廊下で転ぶかぶつかるかしたんだろう。予想外に可愛い悲鳴が聞こえてきた。

 思わず笑いが込み上げてくる。こらえようとしたんだが……駄目だった。

「あっはははは!」

 廊下でぶつけて更に真っ赤になった顔を思い浮かべながら、一人残された教室で爆笑する。

「か、可愛い過ぎだろ、委員長!」

 明日ちょっと膨れた顔で文句を言ってくるであろう委員長のことを考えながら俺は――


「たまには曇天模様ってのも悪くないな」


そう思った。

 ちなみに結構お気に入りです(笑)


 燃え尽きて、ちょっとおセンチになってしまった。結構経験あるかたいるんじゃないでしょうか?

 そんな時はなんだか周りがつまらなく見えてしまうんですよね。

 でも少しだけ見方を変えてみると結構世界なんて簡単に変わってしまうものです。

 ちょっぴりブルーになった日は周りを見渡してみたらどうでしょう。

 普段は気付かない何かに気付けるかもしれません。


 偉そうにのたまいやがりました、すみません。

 以上、しかうさぎさんでした!

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