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N.E.E.Tの冒険  作者: 勇者王ああああ
こっちの世界のお話
6/61

ニートこそ人の集大成である

『純白の雪と深藍の海が交差する時、世界は変わる』

 という竜人の里に伝わる古い言葉がある。大昔の教訓らしいが、なんの教訓なのかはさっぱりわからない。

 様々な研究者により多種多様な解釈がなされているが、俺はこう考える。

『変な事をすると、世界は崩壊しちゃうよ』だ。

 だからニートの俺が外にいるときっと世界によくない事が起こる。だから俺は今すぐ家に帰りたい。

                

             ☆


 実はこんなくだらない事を考えている余裕はない。絶賛ピンチ真っ最中だ。

 数体のグリフォンの群れに囲まれている。

 百獣の王に羽が生えたようなその躯体は、優に3mは超えるんじゃないだろうか。

 マリ姉が前衛で俺とユミーカが後方で彼女を援護している。

 横ではユミーカが敵に、持参の突撃銃アサルトライフルを嬉しそうにぶっ放す。

「落ちろ! モンスターどもめ!」

「痛い痛い! ユミーカちゃん私に当たってるから!」

 マリ姉の叫びなどまるで意に介さず、袖口から何か筒状のものを取り出すユミーカ。

閃光弾フラッシュ投擲アウト!」

閃光弾フラッシュ!? え!? ユミーカどこに投げてんの!? いくらなんでも近すぎるだろ!?」

 ピンを抜き大げさなモーションで投擲するも、驚くほど近くに落ちる爆弾。咄嗟に目を手で覆うとほぼ同時に炸裂音が俺の耳を叩く。

「キャァァァ!? 目がぁぁぁぁ!!」

「いや目くらいそらせよ!? なんで直視してんの!?」

 俺の3m程前でユミーカの閃光弾フラッシュ・バンが発光し、俺とユミーカの視界だけを奪う。

「もぉぉ!! ユミーカちゃん下がってなさい!」

「うぅ。不覚……。撤退する!」

「100%自爆だけどな」


              ☆


「ちょっとあんた達、戦闘中ふざけすぎじゃない?」

「いや俺までひとくくりにするのは流石に理不尽だ」

 結局グリフォンの群れはマリ姉が全て一人で撃退した。

「特にユミーカちゃん! あなたの弾丸私にしか当たってなかったわよ?」

「え? あぅ……。ごめんなさい……」

「リックも! そんな立派な刀を装備してるんだから少しは前にでなさいよ!」

「無茶言うな!」

 そもそもこの竜人山の近くに出没する魔物は驚く程に強い事で有名だ。グリフォンなんて、一体もいればその辺の街を滅ぼすには十分すぎる戦力になりうる。

「そもそもこの旅に出てからの二日、あなた達一体でも魔物を退治した?」

「……」

「……」

「まぁ、このあたりの魔物は確かに強いわよ? でもね、少しくらいは倒そうとする気概を見せたらどうなの? 特にリック。あなたは前からいつもいつも……」

「あぁぁぁぁ! あんな所に勇者がいる!」

「え!? 勇者様!? どこどこ!?」

「うっそぴょーん!」

「……リック君……」

 小言が始まる前に、注意をそらす。ユミーカが呆れたように吐息を漏らすが、そんなの知ったこっちゃないな。

『赤爆龍よ……』

「わーーーー! ごめんごめん! 次からは頑張ります!!」

 マリ姉から赤いオーラが噴き出す。

 あ、そういえばマリ姉に聞きたいことがあったんだった。あの落下中に俺の体から赤いオーラが噴き出したやつ。あれは一体なんだったのだろうか。

「あ! そうそうマリ姉! ひとつ聞きたいことあったんだけど!」

「……なによ」

「えっと、そのマリ姉が魔法使う時、赤い魔力か青い魔力を使う時あるじゃん? それってなに?」

 一瞬の間。そして続く怪訝な表情。

 あれ? 俺何か変なこと言った?

「……は?」

「いやだからね、俺もこの間飛び降りた時に赤い魔力出たんだよ。だからあれってなんなのかなーって……?」

「はぁーーーーーー」

「いやなんでそんなあからさまに溜息つくの!?」

「あんたそれでもフロー家? 赤の魔力は赤爆龍の力を借りた時の色よ。青は私自身の純粋な魔力。当たり前でしょう?」

 と、マリ姉が呆れたように言う。

 し、知らなかった……! そういえばリロードしたときは金色に光った気がするから、あれが俺の純粋な魔力の色かな?

「使うとすぐ消えたんだけど、あれはどうしてなんだ?」

「消えた? 単にあんたの魔力不足じゃない? 赤爆龍の力をタダで借りれる訳ないでしょ」

「あたしの銃にも一発しか込められなかったもんねぇ?」

 ユミーカが小馬鹿にしたように同調してくる。うぜぇ。

「まぁなんにせよ俺にも赤爆龍の加護ってあったんだな」

「そりゃ腐ってもあんたはフロー家だからね」

 おぉ。少しうれしい。

 今まで真面目に魔法とか使ったことなかったから、俺は赤爆龍から見放されているものだと思っていた。

「あら。なににやけてんの? 嬉しいの?」

 と、マリ姉が俺の表情の変化を即座に見抜き、指摘してくる。

「べ、べっつにー?」

「あ! あたしリック君が赤爆龍の力を使う所見てみたいなー!」

 ユミーカが元気よく手を挙げながら言う。

「いやいや無理だろ。そんな一朝一夕でできるもんじゃないから! なぁ、マリ姉?」

「何よそのにやついた顔、気持ち悪い」

「いきなりひどいくね!?」

「早くー。リック君の魔法見たいー」

 まるで駄々をこねる子供のようにユミーカが急かしてくる。

「わかったわかったやってみるって」

 もしユミーカが犬だったら絶対にしっぽ振ってるな。

 ふぅ。さて、どんな魔法を使おう。

 赤爆龍だし、火を放つ魔法でいいか。

 深呼吸をして、気分を落ち着ける。えーっと、確か共鳴魔法だよな? 呪文に共鳴者の名前を入れたらそれでよかったはずだ。よし。

『赤爆龍よ。その力を、灼熱の炎として体現せよ!』

 と、右手を高々と掲げつつ言う。

 が、何も起こらない。

 あれ? おかしいな? 失敗?

「まぁ、リック君ならそんなもんだよねー」

 と、ユミーカがまるで予想通りと言わんばかりににやけている。

 なんだこいつは。


「リック! ユミーカちゃん! 伏せて!」


 次の瞬間、青々としていた空が突然紫に染まる。

 太陽は鈍く輝き、本来とは違う紫で辺りを照らす。

「え? なになに? なにが起こったの?」

 続いて連続的な空気の振動と共に、大きな光の魔法陣が空に写し出される。

 五芒星のそれは鋭く光り輝いていて、今にも何かが起こりそうな前兆を存分に含んでいる。

 

「え? これ俺がやったの? マリ姉これ何!?」

「アンタなわけないでしょ! この振動は空間転移魔法よ。でもこんなサイズなんて見たことないわ!」

「どうするの!? 逃げる?」

 俺じゃないならさっさと逃げたい。空気の振動はどんどん大きくなってくるし、光もますます大きくなってきた。

 


 





 



読んでくれてありがとうございます。

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