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N.E.E.Tの冒険  作者: 勇者王ああああ
こっちの世界のお話
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プロローグ 「無理やり旅立たされる日」

プロローグ 

 人には人の得意分野がある。

 剣士は戦うこと。魔法使いは魔法を使うこと。鍛冶屋は剣を作るし、作家は本を書く。

 もちろんその中にプロはいるだろう。己の職業に誇りを持ち、それを磨きあげる事に命を懸けられる人だ。

 だったらニートは何が得意だと思う?

 決まっている。ひきこもることだ。

 ではニートのプロは何に命を懸けると思う? そう、家から出ないことだ。


                      ☆

 

「リックよ。お前に赤爆龍の加護があらんことを」

 と言いつつ父上は、自分の腰に差してある漆黒の刀を抜いた。その刀はまるですべての光を吸い込むかのように、父上の逞しい腕の中で禍々しく自らの存在を主張している。


「ではしきたりに則り、この我が家の家宝、黒雲母くろうんもをお前に授ける。フロー家の長男として精一杯精進し、この刀の最高の使い手となることを期待する」


 多くの親族一同が見守る中、俺の成人の儀は佳境を迎えていた。厳格な雰囲気があたりを覆い、今まさに父上から家宝の受け継ぎが行われようとしている。

 これは、自分がもう一人前であることを親族に示し、これから竜人のために大きく貢献していくという誓いの儀でもある。

 父上が俺を待っている。俺は一歩踏み出し、その刀を受け取るために頭を垂れつつ両手を差し出した。

 一瞬の沈黙。今まさに、俺は成人を果たす。

 父上が刀を俺の両手の上にゆっくりと乗せる。父上が少しずつ力を抜くにつれ、徐々にその重みが俺の両手から両腕へと伝わってくる。まるで俺のこれからの責任の大きさを教えるかのように、少しずつその重みは増していく。

 あれ? なんだか重くね? 

 と思った次の瞬間。


 カラン。


 と刀は美しい音色を奏でながら床に落下した。

 いや落とした。

 いやいや待て待て。この刀、重過ぎる。


「ち、父上。この刀重過ぎます」


 と俺は、しどろもどろになりつつも必死で弁明する。すると父上は顔を真っ赤にしつつ、肩をわなわなと震わせながら言った。

「この、、、軟弱者がぁぁぁぁ!!!」

 

                    ☆

「リック。貴様、旅に出ろ」

 大失敗した成人の儀の夜、父上は俺に向かって信じられない言葉を告げた。

「無理です父上!」

「無理です、ではない! 親族が集まる儀式で大恥をかかせおって! もう我慢ならん!」

 と、茹でたオクトタコのように相変わらず顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。


「あの刀が重過ぎるのです父上! あれは仕方ありません!」

「問答無用! そもそもこの黒雲母は軽いことが特徴だ! 貴様が軟弱すぎるからいかんのだ!」


 やばい。これはご立腹だ。その証拠に透き通るような青い目に霞がかったような黒が混じってきている。これは、竜人がキレた時に発現する眼だ。

「しかし私にはやりたいことがありまして、今はその準備期間の真っ最中で途中で投げ出すわけにはいかないのです父上!」

「やかましい! いったい何年の準備期間が必要なのだ! 明日、荷物をまとめてここから出ていけ!」

「無理です父上!」

 冗談じゃない! 今更外とか出れるか! 俺はこの家でずっと暮らすんだ!

「前から進めていた、「異種種族交流の旅」にお前を参加させる。これは決定事項だ」

 異種種族交流の旅? 聞いたことあるぞ。確か多種族混合でパーティーを作って未来のために旅をしようとかそんな感じのふざけた企画だ。実態は俺のような家から出ない奴を強制的に旅立たせる制度だとかなんとか。

「こ、困りますいきなり決めないでください!」

「やかましい! いままで何度もあの手この手で旅立ちを拒んできたのは貴様だろうが!」


 吐き捨てるように父上は言った。まあ確かに家を爆破して賊の襲撃に見せかけたり、魔法ネットをハッキングして軍に偽情報を流したりして旅立ちを阻止したことはある。

「今回ばかりはもう辛抱ならん! いいな、明日家から叩き出すから覚悟しておけ!」

 くそ! 明日っていってももうあと数時間しかないじゃないか! この時間じゃ工作のしようがない。

「ち、父上。せめて帰ってくる為の条件を設定してください!」

 と、俺が言うと意外にも少し嬉しそうな顔をする父上。息子が旅立つ気になったのがそんなに嬉しいのだろうか。

 バカが! どんな条件でも魔法ネットと金を使えば基本的にクリアできんだよ! さぁなんだ? 龍の秘宝か? 魔物討伐か? なんでも二日以内にクリアしてやるわ!

「そうだな……。では、この黒雲母を貴様自身の手で折ってこい」

「は?」

「は? とはなんだ。貴様の手でこの刀を折ってこいと言ったのだ。もしお前以外がこの刀を折ったら永遠に我が家の土地には入れないから覚悟しておけ」

 というと、父上はもう一度抜き身の黒刀を俺に差し出した。相変わらずその刀身は禍々しいほど黒く、刃に沿うように描かれた一本の細い白線が際立って目立っている。

「おらぁぁぁぁぁ! 折れろおおおお!」

 父上が持っていた刀を全力で床にたたきつける。

「アホか貴様はぁぁぁぁ!!!」

 キィン、ときれいな音が部屋に響き渡るもまったく折れるそぶりを見せない。

 やばい。持てるかどうかも分からない刀を折ってこいとか、できるわけないだろうが常識的に考えて。しかもこの手の刀には魔法がかかってるから、他人を使うと十中八九ばれる。

「いいなリック。明日、マリーをお前と同行させる。」

 とだけ言うと、父上は椅子から立ち上がり部屋から出ようとする。

「……期待しているぞ」

 と小さな声でそう告げると、父上は静かに部屋から出て行った。



 


 

 

 

 

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