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紫の年  作者: Ravenclaw
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 総合図書館はバス停から歩いて三十分ぐらいのところにある。着いた時にはさすがにくたびれた。

建物は古い赤茶色の三階建てで、公園の一角にある。一階部分が吹き抜けで、かなり広いつくりになっている。

二階の専門閲覧室に上がり、「共和連邦史」の第七巻を借り出して、きのうの続きを読みだした。

正午になった。

図書館を出て、公園のベンチでカバンから握り飯を取り出し、二個のうちの一個を食べた。

握り飯は朝、自分で握った。

まわりにはかれと同じ年恰好の者が多かった。ほとんどが男である。見かけたことのある顔も多い。だが、かれらと話す気にはならなかった。相手も同じらしく、声をかけてくる者はほとんどいない。昼食をしまうと図書館に戻った。

共和連邦史は飽きたので、一階の一般コーナーに行き、二〇××年五月の新聞を借りて、五月一八日の記事から読み始めた。

いまから四〇年前の記事だが、ここに来る度にすこしずつ読み進めている。

記事で目立っていたのは、関西での大火事で、まる一週間も続いていた。

かれにもぼんやりその事件の記憶がある。

延焼した工場のひとつがかれの取引先と関係していたので、その余波をくって納品が遅れ、お詫びやら契約変更やらで、しばらく深夜まで残業が続いたはずである。

まだ三十になったばかりだったが、それなり大きな責任は負わされていたので、あちこちから責められ、けっこう胃の痛い日々を送った。

あの頃は大変だと思ったが、しかし、それはその年齢や地位なりの大変さだったな。後で分かるのだが、働いていれば、もっと大変なことが、後から後からやってくる。

自分は、その都度、そういった仕事を、なんとかそれなりにこなしてきたつもりだ。


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