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千歳の魔導事務所  作者: こでみや
一章 猫騒動
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疑惑 通話料無料

「どんなさ?」


「だからこんなさ」


 私の目には机の上で行儀良く座って不気味に笑う猫(置物)しか見えない。それはつまり、そういうことなのか。


「…………猫?」


「そういうわけだ。おそらく犬や鳥も」


 何を言っているんだこの猫(仮)は。そんなこと言ってしまったら嫌な事を想像してしまうじゃないか。


「つまり……? 舞樫市全域に畜生型使い魔がめちゃくちゃいるってこと?」


「畜生……他にいいようがあるだろ……しかしまあ端的に言えばそういうことだ。動物型の使い魔はそう珍しいものじゃないんだがな。だがそれにしても数が多すぎるってことで俺はそれについて調べてたってわけだ」


 だからそんな格好なのか。確かに服を着ていないと一目には人形だとは気がつかない。


「それで今日大体の事に調べがついたんでな。だからとりあえずこうして一応お前にも知らせておこうと思って来たんだよ」


 それはご苦労なことだ。ではさっそく聞かせてもらうとしようか。あ、でも。


「だったら所長も一緒に聞いたほうが一石二鳥じゃない? まだ時間もそんなに遅くないし、電話してみようか?」


「あーそうだな。確かに聞けるならそのほうがいいだろう」


 というわけで私は所長の携帯にコールすることにした。ベッドの隅の充電器から自分の携帯を取り外しているところでレオが話しかけてくる。


「あ、でも俺この体で電話なんてしたことないな。構造的に」


 ボタン押しずらそうだもんね。スマホなら反応さえしないだろうね。


 私はベッドから降りて机の前の椅子に座り、所長の携帯に発信したことを確認したところで通話をスピーカーモードにする。これで耳に携帯を当てなくて少し離れた場所でも対話ができる。


 コール音が四回、五回と鳴っていく。六回目のコールの途中で音が途切れ『もしもし? どうしたの?』と、どこか懐かしいような声が聞こえてくる。まだ一週間も経ってないというのに。


「いえ、なんといいますか中間報告です」


 私はそう言ってレオに視線を向ける。と、同時にレオもこっちを向く。目と目が合う。


「ほら、レオから言いなさいよ!」


「え、これ声届くのか?」


「私の声が聞こえてるんだからそうでしょ、ほら」


 前にお母さんとも同じようなやり取りをしたなあ……。


『レオもそこにいるの? 今事務所にいるの?』


「いえ、今は私の部屋です。家族も今日はいないです」


『そう、それで報告だったね。レオもそこにいるようだけど何かわかったの?』


 レオは少し不安げに携帯に顔を近づけて話し始めた。そんな近づかなくてもいいのよ。


「あ、ああ。大体は予想通りだった。市内全域に結界が張ってあった」


 ――結界。レオがいうには市内を囲うように結界が張ってあり、その結界はその中にいる生物を操ることができるようになるという効力を持つものだったという。


 だがあまり強力な結界だとすぐに外界から察知されてしまうので、今回のものは大きくても中型犬ほどまでしか操れないような効力をもつ程度のものにされており、あの程度ならばよほどのことがないかぎり中にいても気がつかないだろうとのことだった。

 

「ま、さほど上級な結界でもなかったし、俺からしたら見つけるのは割りと簡単だったけどな」


 ふん、とレオは少し誇ったような顔をしていた。


『そうか……だとしたら結界内の動物達を操って魔力を集めていたということになるね。ん……それで孤都の方はどう? なにか見つけた?』


 私に話が振られたことにワンテンポ遅れて気づく。話の内容に付いていけてなかったのだった。


「へ? あ、私ですか? いや、新しい発見とかは特に無かったですけど、昨日の時点で少なくとも駅前や私の家周辺では魔力のある人はもういませんでした」


『そう……ちょっと、よろしくなくなってきたわね』


 所長の声のトーンが少し低くなった。ふとレオに目をやるとそれに同意だといわんばかりの眼をしている。


「どういう……ことですか?」


 不安になった私はたまらず電話の向こうの所長に聞く。


『いやね、前にもちょろっといったけどやっぱり規模が大きすぎるのよ。いくら一般人といえそんな数万人分の魔力とか、第一溜めることも一苦労よ』


 魔力というものは、電気や水のように蓄えるのならば物理的に装置なり媒体なりが必要らしく、もしも数万人の魔力がそのまま集められているとしたらそれは大体コンビニ一店舗ほどのスペースなりが必要となるらしい。


『とにかくもしその魔力でなにかするとしたらそろそろね。私もあと三、四日で戻るから、また何かあったら連絡して頂戴』


 そういって電話を切ろうとしたところで私は一つの出来事が頭によぎった。


「あ、ちょっとまってください所長。今思い出したんですけど」


 動物がキーワードになったところでそのことは思い出していたのだが、結界がどうとかのところで頭の回転が間に合っていなかった。それがやっと今になって考えが追いついたのだった。


 私は先日ミキから聞いた一件を所長とレオに話した。


『――猫の行進ねぇ……でも、いや、うん。もしかしたらそれかもしれないわね』


「ていうかもう正にそれがあたりだろ。その話しが本当ならそいつらの行った先に首謀者なり魔力の貯蓄所なりがあるはずだ」


『学校で見たって言ったわね? じゃあ私が帰ったら一回行ってみましょう。あいつらより早く行ければいいのだけれど』


 あいつらってやっぱりあいつらのことかな。


「私が先に行って見てみましょうか? 自分の学校ですから普通に敷地内も見て回れますし」


『いや、下手に詮索するのはダメ。危ないからじっとしてなさい』


 まあそうくるだろうとは思っていた。一応口では了承の返事をしておこう、口では。


 挨拶をして電話を切るとレオが私の顔を見ていることに気が付いた。これは、見透かされたか……? 


「お前、行くつもりだろう」


 おう、ばれてた。


「様子見に行くだけなら大丈夫でしょー? 危ないところまでは行かないって」


「しょうがないな……まあ、俺も行くつもりだったしな……。じゃあ行ってもいいが、その時は俺も行くからな」


 なんだよ、人のこと言えないじゃないか。


「それで、いつ行くんだ?」


 決まっている。善は急げだ。

スマホって指先の静電気で感知してるらしいですよ奥さん

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