プロローグ
「悪魔狩りを破壊する――」
その言葉に黙ってうなずいた彼らの見つめる先。
そこにはいったいどんな光景が浮かんでいたのだろうか。
怒り、憎しみ。
復讐。
彼らがずっと抱き続けているその強い感情は、悪魔狩りと敵対する理由としては充分すぎるものだったが、十数年に渡って強い団結を維持し続けるためには少しだけ足りなかった。
決してほころびが出ないよう、彼らにはそれ以外のわかりやすい理由が必要だったのだ。
「俺たちや、俺たちの子孫が平穏に過ごせるように」
だから戦う理由として、その理想が提示された。
たとえ表面だけのハリボテだったとしても、それは彼らを団結させるに足る崇高な理想だった。
実際、彼らは復讐心を失わずにいながらもその理想を最優先に追い求め、命を落とす危険さえ顧みずにここまで突き進んできたのだ。
……そして今。
子どもたちにその理想を示した者は、一歩離れた場所から複雑な表情で彼らを見つめている。
復讐劇はすでに幕を下ろしていた。
なぜなら、復讐すべき相手はもうこの世にひとりとして残っていないのだから。
にもかかわらず――
彼らが止まれないのは、口実として与えたハリボテの理想がまだ果たされていないから。
……いや。
果たされていないと思い込んでいるからだ。
「理由もなく命を奪われてきた者たちの恨みを晴らし、理想を達成するために悪魔狩りどもを――」
なにより致命的だったのは、それを復讐の延長線上に置いてしまったこと。
そのために、本来手を結ぶことができるはずの相手とも相容れることができなくなってしまった。
(ああ……)
これから戦おうとしている相手は、おそらく彼らと同じ理想を抱いているはずなのに。
すべてはもう遅い。
憎しみを抱えたまま子どもたちは成長してしまった。
傷は癒されることなく、やり場のない苦しみをたくみに隠すことだけ覚えて成長してしまったのだ。
それは他の誰の責任でもなく。
すべては、彼らの感情を自らの復讐に利用した彼女の責任だった。
……そして、動き出した歯車は淡々と回り続ける。
それぞれに定められた終焉へと向かって。




