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双子兄妹の悪魔学園記  作者: 黒雨みつき
 第2章 そこにある溝
158/239

2年目2月「木塚」


 週が変わって月曜日。


 高校も2年の終わりごろとなれば、周りには結構アレなヤツらが増えてくる。


 アレ。

 いわゆる彼氏彼女持ちの連中である。


 ただ、非常に残念なことに、俺の周りはそういうことに縁がないヤツらばかりだった。


 性格的に難のある将太や年齢的に微妙な歩、色々と高校生らしくない神村さんによくわからん藍原と、この辺りを最初から除外したとしても、だ。


 先日の話のとおりずっと片思いを続けている由香には一応はっきりとした理由があるものの、直斗のやつなんかは女子に人気があるのにさっぱり浮いたうわさが聞こえてこない。

 雪や瑞希も女子高通いとはいえ、やはりそういった話はちっとも聞かなかった。


 これはどういうことなのだろうか。


 高校生にとって恋愛ってのはある種の花形イベントだろう。

 それに興味がないヤツばかりが集まっているというのだから、これはもう――


「やっぱ俺の周りには変人しかいない」

「……」


 俺のつぶやきに沈黙の視線が集まった。


 現在登校中。

 そして俺の後ろにいるのはいつもの3人。

 直斗、由香、歩である。


「だってそうだろ? 俺たちぐらいのヤツらって大体は彼氏とか彼女を欲しがるもんじゃねーか。それが揃いも揃って興味なさそうな顔してるってんだから、こりゃもう変人が集まっているとしか言いようがない」

「それは……でも」


 苦笑しながらそう言ったのは由香だ。


「そんなこと言っちゃったら優希くんだって同じじゃないの?」

「バカ、俺は違う。お前らと違ってチャンスそのものがないんだ。気が無いわけじゃない」

「……」


 再び沈黙が続いた。

 次にそれを破ったのは直斗である。


「まあ、あるかないかはともかく、君の場合はそれを待ってるようにも見えないけどね」

「んなこたぁない。俺は誰でもオールオッケー。来るもの拒まずがモットーだ」


 すると歩が笑いながら、


「誰でも? じゃあ私、立候補してみようかなー」

「男と幼児は却下だ」

「……誰でもって言ったじゃないですかー!」


 ちょっとヘコんだ。

 さすがに即答すぎたかもしれない。


 まあ、正直なところを言えば、最近の歩はそれなりに成長していて、ああ、こいつも女なんだなぁ、なんてことをときどき感じさせられたりもするのだが。

 もちろんそんなことは口に出したりしない。


 直斗が口を挟む。


「じゃあ、たとえば由香だったらいいってことだよね」

「な、直斗くん!」


 由香がちょっと慌てた顔をしたが、直斗はマイペースに続けた。


「だってほら。由香は女の子だし、神崎さんみたいに幼くもないし」

「……あのー。私なんだか当て馬みたいな扱いになってませんかー……」


 そんな歩の抗議はとりあえず全員に無視された。


「ん。ま、そーだな。別にダメな理由はないな」


 俺は少しとぼけてそう答えた。


 もちろん本当のところはそんな単純な話でもないが、来るものは拒まずといった手前もある。

 ここで変に否定しては直斗に突っ込まれて思うつぼなんじゃないかと思ったのだ。


「だってさ、由香」


 直斗が振ると、由香はちょっと困った顔をする。


「で、でも、誰でもいいってことだもんね。それはあんまり……」

「別にいいじゃない。そうすれば、ほら。優希の言う変人が僕らの周りからふたりも減るわけだし」

「おいおい。その理論で言ったらお前と歩がくっつけとか、雪と瑞希がくっつけとかの話になっちまうぞ」

「……後のは無理でしょ」

「いいだろ。片方は男みたいなもんだし」


 本人の耳に入れば鉄拳制裁間違いなしだが、登校中ならさすがにそんな心配はない。


「でも、優希さんってやっぱりそういうことに興味なさそうだよねー」


 歩がそう言うと、由香も相づちを打った。

 そこに直斗が続ける。


「子どもなんだよ、優希は。それか、もう枯れちゃってるのかもね」

「おいこら。人を年寄り扱いすんじゃねーよ」


 思わずため息が口をつく。

 こいつに好き勝手に言わせていたらどんな結論が導き出されるかわかったもんじゃない。


「何度も言わせるなっつーの。俺は子どもでもなきゃ枯れてるわけでもねーよ。ただ、そういうチャンスに恵まれないだけだ」

「……」


 本日3度目の沈黙。

 揃いも揃ってなんなんだろうか、こいつらは。


「ま、優希がそう思ってるならそれでもいいんじゃない? ただ……」


 直斗がそう言って、少し意味深な笑みを浮かべる。


「そういうチャンスが来たときにどういう反応をするのか、ちょっと楽しみではあるけどね」

「……悪趣味だな、おい」


 そこへ歩が首をかしげながら、


「えっと……優希さんの恋人ってことは、私にとってはお義姉ちゃんってこと?」

「いや、そんな要素ひとつもねーよ」


 天才少女様の言うことは相変わらず難解だ。


 そんなたわいもない世間話。

 こんなのは数日もすれば全員が内容を思い出せなくなるようなどうでもいい話題だった。


 誰も真剣に話しているわけじゃなかったし、直斗の言葉もいつもの悪趣味な冗談に過ぎなかったのだ。


 ……しかし数時間後。


 そんな直斗の悪趣味発言が、ただの冗談から予言へと姿を変えることになるなんて、このときの俺はまだ予想もしていなかったのである。






 異変があったのはその日の昼休み。

 終了前15分ぐらいにその事件は起こった。


「あー……ねみぃ」

「おーい、不知火」


 今日は午前中に難易度の高い授業が並んでいたこともあり、心身ともに疲れきった俺は弁当を片付けてすぐに机に突っ伏しウトウトとしていたのだが、そんな俺の耳にクラスメイトの斉藤の声が飛んできた。


「おい、起きろ。呼んでるぞー」

「……あん?」


 ゆっくりと顔を上げ、ぼやけた眼で教室を見回す。


 教室内に残っていたのは数人。

 今日は将太も直斗も由香も歩も姿が見えない。

 知り合いでいえば神村さんが相変わらず窓際で外を眺めているぐらいだった。


 声のした斉藤の姿を探すと教室の入り口付近にいて、こちらを見ながら親指で教室の外を指している。


「呼んでる? 誰だ?」


 教室の外に視線を向けてみたが、ドアが邪魔になってその人物の姿は見えなかった。


 他のクラスで俺に用がありそうな人間というと真っ先に藍原の顔が浮かぶ。

 が、あいつならなんの遠慮もなく教室に入ってきてるはずで、わざわざ斉藤を使って俺を呼び出すとは思えなかった。


 藍原じゃないとすると1年の唯依、あるいはあの3姉妹の誰かだろうか。


 そんな予想をしつつ席を立って斉藤のもとへ向かうと、


「お前、あいつと知り合いだったっけ?」


 すれ違いざま斉藤が怪訝そうな顔をしてそう言った。


「あいつ?」


 どうも斉藤の知っている人物らしい。

 とすると、唯依やあの3姉妹の可能性は低そうだ。


 そんなことを考え、首をかしげながら教室の外に顔を出すと、


「あ、不知火くん」

「……ん」


 待っていたのは女生徒だった。

 そして即座に脳内検索。


「ごめん、呼び出したりして。もしかして寝てた?」


 少し申し訳なさそうにしている目の前の女生徒。


 背はそれほど大きくないが全体的にスリムでバランスのいい体型だ。

 顔が小さいので頭身が高く手足も長く見える。


 率直に言ってかなりかわいい部類に入るだろう。


 そんな彼女と、頭の中の知り合いファイルを照らし合わせていく。


 結果……該当件数ゼロ。

 俺はこいつのことを知らない。


 ただ、口調からすると向こうは俺のことを知っている様子だった。

 とすると、結論としては"知り合いだったが俺が一方的に忘れている"ということだろう。


 俺は言った。


「いきなりですまんが、人間ってのは新しいことを覚えるために古い記憶を次から次へと捨てていく生き物なんだ。……過去を捨てなきゃ先に進めないってのは少々寂しい気もするが、それは人間が生きていく上でどうしても必要なことなんだよな」

「え?」


 女子生徒が不思議そうな顔をする。

 直斗辺りならこの辺で俺の言いたいことを察してくれるのだが、彼女には少々ハードルが高かったらしい。


 仕方ないのではっきり言ってやることにした。


「要するに俺はお前のことを覚えてない。誰だっけ?」

「あ、そういうこと」


 意外にも不快そうな反応はまったくなかった。

 しかも、先ほどの俺の発言にそこまで戸惑った様子もない。


 やはり俺のことをそこそこ知っているようだ。


「それはまあ、ちょっとは残念だけど仕方ないかな。ほら」


 そう言って、両手の親指と人差し指でメガネのような形を作る。


「中1のときに同じクラスでさ。昔はメガネかけてて、最後の席替えで不知火くんの隣になったんだけど……」

「わからん」


 なめてもらっては困る。

 俺の記憶力はその程度で他人の顔を思い出せるほど優秀ではないのだ。


「そっかー。じゃあ、そのときの学級委員だったって言ってもわからない?」

「んー。覚えてなくもねーけど、後期に学級委員だった背のちっこいほうのメガネしか思い浮かばんな」

「だから、ほら。こんな感じ」


 と、女生徒はメガネの形をさらに強調してみせた。


「いや、メガネはメガネでもあっちはお前みたいな感じじゃなくて……」


 そこまで言って、待てよ、と思う。


 背のちっこい黒縁メガネ。

 体型もややぽっちゃり型。

 その当時の学級委員の名前は、つい先日俺たちの間で話題に上ったことがある。


 やや半信半疑のまま、俺は言った。


「……木塚?」

「せいかーい」


 ぱちぱちと手を叩く木塚。


「……マジか?」


 問いかけながら、記憶の中の女生徒と目の前の女生徒を比べてみる。


 木塚律子。

 中学1年の後期に学級委員をやっていた女子で、自分で言ったように最後の席替えでは俺の隣に座っていた。ちょこちょこ話をした記憶もある。


 ただ。

 この変わりようは限りなく詐欺に近い。


 いや、確かに言われてみると顔のパーツはほぼそのままだった。明らかに違うといえばまゆ毛の形ぐらいで、別に整形したというわけではない。

 あとは黒縁のメガネがおそらくはコンタクトレンズに変わり、少しだけ背が伸びてやや丸っこい印象の体型がスリムになったぐらいか。


 それでまったくの別人に見えてしまうというのだから、おそらく当時の俺の中での木塚のイメージは、黒縁メガネとややぽっちゃり気味の体型のみで構成されていたということだろう。


「びっくりした?」


 そんな俺の反応に、木塚は逆にちょっと嬉しそうだった。

 正直に言うのもなんだかしゃくだったので、少しとぼけて答える。


「まあ、ちょっとはな。……で? 急にどうしたんだ? 言っとくが実は金を貸していたとか、そういうことならもう覚えてないぞ」


 実際、なんの用なのかまったく想像がつかなかった。


 確かに当時はそこそこ話をした記憶があるが、席が近かったというだけで友だちだったわけではないし、同じクラスになったのもその1回きりだ。


 そこから今日までの間はまったく話をしたことがない。

 つまり、ほぼ4年ぶりの会話である。

 用件なんて想像できるはずもなかった。


「そのことなんだけど」


 そう言いながら木塚は廊下の壁に軽く背中を預けた。


 もしかすると長い話になるのだろうか。

 まだ昼休みは10分以上残っていて人が戻ってくる気配はない。


「ほら、もうそろそろアレの時期でしょ?」

「アレ?」


 4年ぶりにあったヤツにいきなりアレと言われても、なんのことかわかるはずはない。


「だからさ。あの、ほら、人気投票みたいな」

「ああ」


 それでピンと来た。


「つまり選挙活動か? 自分に投票しろってやつ?」


 女子には秘密の催しだなんて、形骸化もはなはだしい。


 ただ、図星かと思いきや木塚は少し首をひねった。


「あ、うーんと、そういうわけじゃなくて。そうとも言えるけど、それは目的と手段が入れ替わってるっていうか……」

「なんだそりゃ。言っとくけど俺に以心伝心みたいなことは期待すんなよ。お前も知ってるだろうが、繊細さとは無縁の人間なんだ」


 俺がそう言うと、確かにね、と、木塚は少し笑った。

 当時の俺との会話でも思い出していたのかもしれない。


「じゃあ言おうかな。……不知火くん、去年は私に投票してくれた?」

「いや、してない。さっきも言ったけどお前の顔忘れてたし」

「じゃあ今年は? 思い出して投票する気になった?」

「なんだ。結局選挙活動じゃんか」

「あー……えっと」


 またもや首をひねる木塚。


 こうしてはっきりとモノを言えないところには昔の面影がある。

 外見はかなり変わったが、中身はそれほど劇的に変化したわけではないようだ。


「つまりさ。不知火くんが去年投票したふたりは、少なくとも不知火くんから見て魅力的だったわけでしょ?」

「んー?」


 神村さんと山咲先生の顔が頭に浮かぶ。


「まあ、魅力的というか、キャラ的にはどっちも面白いと思うが」

「え?」


 木塚が戸惑いの表情を見せた。


「そりゃあんなもん、そんな真面目に投票するもんでもねーだろ」

「……そっか。そういや不知火くんってそういう人だった」

「バカにしてんのか?」

「そうじゃないけど……あ、ううん。でも、だからこそまだチャンスがあるわけで……」


 木塚はなにやらボソボソとひとり言をつぶやいている。


 そんな仕草を見て、俺の記憶も少しずつよみがっていた。

 こうやって他人の目の前でいきなりひとり言をつぶやくのも、こいつの当時からのクセだったはずだ。


 そうこうしているうちに遠くからたくさんの声が近づいてくる。

 思い思いの場所で昼メシを食べていた連中が少しずつ教室に戻ってきたのだ。


 その中にはもちろん見知っている顔もあって、


「あ、優希さーん」


 ててて、と駆け寄ってきたのは歩だ。


「おぅ」


 軽く手を上げて応えると、歩は木塚の存在に気づいたのか駆け寄る足をゆるめ、手だけ振ってそのまま教室の中へと消えていった。


 そのすぐ後に戻ってきた由香や直斗も、視線だけ交わして教室に入っていく。


「……で?」


 昼休みも残り少なくなってきた。


「もしアレに投票して欲しいってだけなら別に構わねーぞ。誰に入れてやろうとか決めてたわけでもねーし」


 そう言って結論をうながしてやると、木塚は妙に真剣な顔でチラッと教室内を見た。


「……不知火くんってさ。水月さんとずっと仲よかったよね。今でも?」

「ああ、それなりに」

「んー……水月さんでもダメなのか。でもここまで来たらダメもとだし……」


 後半は再びひとり言。


 昼休みは残り5分を切っている。

 そろそろその辺をほっつき歩いている将太も戻ってくるだろうし、こんなところを見られたらまた色々面倒なことになりそうだ。


 俺は切り上げることにした。


「あー、アレだ。話がまとまってないならまた今度にしようぜ。次の授業の準備もあるし――」

「あ、ちょっと待って!」

「うおっ!」


 きびすを返そうとすると、そでをものすごい力で引っ張られた。

 危うく転びそうになったが、なんとか踏ん張ってとどまる。


「あ、あぶね……お前なぁ」


 文句を言おうとした直後、木塚はついに決心したような顔をして、


「け、結婚! ……じゃなくて!」

「は?」


 俺が怪訝な顔をすると、今度は少しトーンを落として木塚は言った。


「付き合って欲しい、というか、なんというか……」

「……え?」


 最後はボソボソとフェードアウトしてしまったが、言葉自体は聞こえた。


 付き合って欲しい――、と。


 俺はその意味を理解するのに5秒ほどの時間を要し、


「……本気か?」

「ダメ?」


 ちょっと上目づかいに聞き返してくる木塚。


「いや、ダメもなにも……」


 即答できずに頭をかく。


 突然すぎて返す言葉がなかった。

 あまりにも急展開すぎる。


 そんな感じで返事に詰まっていた俺に対し、逆に言ってしまって気が楽になったのか、木塚は少し落ち着いた様子だった。


「実は中学のころからずっと……で」

「……なんでいまさら?」


 俺の中にはまだ、冗談なんじゃないかという疑いが残っていた。


 だいたい不自然だろう。

 当時ならともかく、最後に会話をしてから4年も経っているのだから。


 ただ木塚はそれほど迷いなく答えた。


「中学のころは、ほら。色々誤解があったじゃない」

「誤解?」

「妹さんのこととか。実は従兄妹で恋仲なんだ、とか……」

「あー……」


 あまり思い出したくない記憶だ。

 当時の俺と雪に関しては、本当に色々とおかしな話が飛び交っていたのである。


「私も中1の終わりぐらいまでそれを信じてたし、ほら。あの子ってちょっと特別って感じだったから。それじゃ私の出番なんかないかなって。私も自分に自信なかったし……水月さんもいたから」


 そういえば、中学に入って一時期疎遠になった由香と再接近したのも中1の終わりごろだった。


「だから最初から諦めてたんだけど……例のほら、人気投票? の結果を聞いて、びっくりして。でもそれならもしかしたらと思って、それでも半年ぐらい悩んだんだけど、ダメもとで言ってみようかってことに……」

「……なるほど」


 半年はさすがに長すぎだろうと思ったが、何年も片思いを続ける由香のような例もあるし、まああり得ないことではないのだろう。

 女子ってのは男子よりも恋愛ごとにすっきりさっぱりしているイメージがあったのだが、こいつや由香を見る限りそれも人によるらしい。


 いずれにしても。

 どうやら冗談ではないようだ。


「……とりあえず」


 戸惑いを隠しきれないまま、俺は腕時計に視線を落として言った。


「授業も始まるし、返事は今じゃなくてもいいか?」


 ボケる余裕もなく月並みな回答。

 いや、ここでボケたらさすがに失礼だろうと考えるぐらいの頭はあった。


「もちろん。……というか、一応考えてくれるんだ?」


 木塚はちょっと嬉しそうだった。


「それだけでも言った価値はあったかも」

「あまり期待されても困る」


 ついそんな言葉が口をついたが、木塚は気にしていないようだ。


「わかってる。私、そんなにうぬぼれてないから。……あ、でも、できればバレンタインの前ぐらいには返事欲しいかな。万が一いい返事がもらえたら色々準備しないといけないし」


 バレンタインまでは約1週間。

 まあ充分だろう。


「わかった。それまでにはな」

「うん。じゃあ……」


 木塚がそう言ったところで予鈴が鳴った。


「期待しないで待ってるから」


 そう言って去っていく後ろ姿。


 俺はそれを見送って、ふぅっと小さく息を吐いた。


(……どうしたもんかな)


 突然降りかかってきた、珍しく高校生らしい悩みごと。

 そんな木塚の告白に、俺はしばらく頭を悩ませることになったのだった。


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