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双子兄妹の悪魔学園記  作者: 黒雨みつき
 第7章 決戦
135/239

2年目12月「太陽の少年」


 俺は変な夢を見ていた。

 変といっても、よくある意味の通らない支離滅裂な夢ではない。


 その逆だ。

 物語のワンシーンを見ているかのように整合性の取れたはっきりとした夢である。


 変なのは内容のほうだった。


 夢ってのは普通、自分の知ってる場所に知ってる人間が登場するものだ。

 それ以外で登場するとすれば映画やドラマ、マンガやアニメで印象に残った場所やキャラクターぐらいのものだろう。

 自分の頭の中で起こっているできごとなのだから当然である。


 が、しかし。

 俺がこのときに見ていた夢は、自分が知っている場所はおろか、知っている人物すらひとりとして登場しない、そんなおかしな夢だったのである。


 最初のシーンは雨の中。

 暗く、どんよりとくもった空。降り注ぐ雨。

 目の前には小さな墓があって、俺はそれをじっと見つめている。周りは見たことのない風景。


 俺自身はなにがなにやらさっぱりわかっていなかったのだが、なぜか感情だけは動いていた。


 喜びと悲しみ。

 相反するふたつの感情がない交ぜになって胸の中に渦を巻いていたのだ。


『……。……』


 そしてふと、背後から聞こえた声に振り返る。

 音声はなかった。呼びかけられたということだけがわかった。


 振り返った先に立っていたのは10代半ばぐらいの少年。

 その横に、それより少し年下だろうと思われる、やはり少年。

 そして、そのふたりの後ろに隠れるように立つ、髪の長い、おそらくは10歳程度の少女。


 違和感のある光景だと思ったが、なにがおかしいのかこのときはわからなかった。


 一番年上と思われる少年はこちらに向かって手を差し伸べている。

 真剣な眼差し。どこかで見たことのある目だと思ったが、やはりこのときはわからなかった。


 そして夢の中の俺は複雑な心境でその手を見つめているのだ。

 わずかばかりの解放感と、それをはるかに上回る罪悪感。


『……。……』


 少年がまたなにか言った。

 真剣な表情が少しだけ崩れ、そこに人なつっこい優しげな笑みが生まれる。


 それもどこかで見たような笑顔で。

 少しためらった後、夢の中の俺は少年の手を取った。

 差し出した手はまるで女の子のように小さい。……いや、この"俺"はきっと女の子なのだろうと、夢の中で漠然とそう思っていた。


 そこで場面が変わる。

 次にやってきたのは、薄暗い地下牢のような場所だった。


 そこにはこの"俺"と同じぐらいの年齢の少女が両足を鎖につながれていて、その両目は光を失っていた。

 盲目という意味ではない。うつろで濁りきり、生気を失っていたのだ。


 そんな彼女の周りには、先ほどの場面でも出てきたふたりの少年とひとりの少女。

 全員、ほんの少しだけ成長しているように見えた。


『……。……』


 誰かがなにかを言った。

 おそらくは先ほどと同じ、一番年上の少年だろう。


 するとその直後。


『……! ……!!』


 遠くから複数の違う声が聞こえてくる。

 内容はまったくわからなかったが、おそらくは怒声だ。陰湿な負のイメージを感じた。


 その怒声に、鎖につながれた少女が脅えた様子で両耳を塞ぐ。


『……! ……!!』


 周りの声は徐々に数を増やし、音を大きくしていった。

 その声は俺にとっても不快だったが、夢を見ている俺はあくまで傍観者でなにができるわけでもなく。


 少女はひざを抱えて泣いている。


 そのうち、例の年長の少年がまたなにかを言った。

 鎖につながれた少女をかばうように両手を広げ、誰かになにかを訴えている。


 訴えている相手が周りの怒声の主たちであろうことはすぐにわかった。


『……! ……』


 そんな少年の訴えに、雑音は徐々にボリュームを下げて。

 最後には無言になった。


 同時に少女を捕らえていた鎖が溶けるように消え、薄暗かった地下牢に光が差してくる。


『……。……』


 少年は先ほど"俺"に対してしたのと同じように、つながれていた少女に手を差し伸べていた。


 少女が顔を上げて。

 ふと、その額に見慣れないものがあることに俺は気づく。


 ああ、そうか――と。

 同時に、最初の違和感の正体にも気づいた。


 少女の額には雷魔の証である小さな角があり、耳も大きく尖っていたのだ。


 ふたりの少年も、少女も、おそらくは"俺"も。

 登場人物はみな、人間ではなく悪魔だったのである。


 そして解放された少女は、差し伸べた少年の手をまぶしそうに見つめていた。

 まるで太陽を見つめるかのように目を細め、そこに涙と笑顔を浮かべて。


 その少女も、俺はどこかで見たような気がしてならない。


 そこからは映像が急に断片的になった。


 どこか狭い部屋。

 そこではふたりの少年も、髪の長い少女も、雷魔の少女も、そしておそらくは"俺"も楽しそうで。


 そこから一転。


 暗闇と、背後から追いかけてくるなにかの足音。

 周囲に増えていく見知らぬ顔。

 また世界が変わって、頭上には鮮やかな青空と、晴れ渡った夜空と――。


 さらに映像が速くなって、内容も曖昧になった。


 よくはわからなかったが、そのほとんどが戦いの映像だったように思えた。

 それらはいくつかの印象的なシーンを俺の頭に残しただけで、大半はなにもないまま過ぎ去っていく。


 夢自体がそういう仕様だったのか。

 あるいは俺の目覚めが近づいていたせいなのか。


 ……その直後に、俺は目を覚ましたのだった。





「う、ん……ここは……」


 頬に冷たい空気を感じて目を開くと、そこは薄暗闇の中だった。

 真っ先に視界に飛び込んできたのは、月を背にぼんやりと浮かび上がる木々の群れ。


 どう考えても自室のベッドの上ではない。

 一瞬なにがなんだかわからなかったが、記憶を呼び戻したのは脇腹を襲った激痛と。


「大丈夫、ユウちゃん?」


 すぐ耳もとで聞こえた雪の声だった。


「ん……ああ」


 そう。

 ここは悪魔狩り本部付近の森の中で、俺はミレーユと戦い、彼女の放った衝撃波の直撃を受けて意識を失ってしまったのだ。


 改めて現状を確認することにした。


 背中にはゴツゴツとした木の幹の感触。俺はその根もとに座り込んでいて、すぐ隣では雪が同じ木を背もたれにしている。それなりに低い気温であるにも関わらずあまり寒さを感じなかったのは、こいつの体温が近くにあったおかげのようだ。


 体の上には雪の着ていたロングコートがかけられていて、その雪を挟んだ向こう側にもうひとり寝息を立てている人影があった。


 見覚えのあるお団子頭の少女。


「真柚……? そっか。唯依のやつ、うまくやったんだな」


 ようやく頭がはっきりしてきた。


「雪。お前、怪我はないのか?」

「うん。私は平気」


 事もなげにそう答える雪。

 本当かどうかはわからないが、少なくとも見た目に怪我をしている様子はなかった。


「コート、真柚のほうにかけてやれ。俺はもう大丈夫だから」


 そう言って俺は雪から離れ、ゆっくりと立ち上がった。

 脇腹はかなり痛むが、歩けないほどではない。


 ゆっくりと息を吸い込むと、冷たい空気とわき腹の鈍痛が頭の霧を吹き飛ばしてくれた。


 俺はそのまま少し歩いて、ちょうど雪と向かい合う形で別の木の根もとに腰を下ろす。


「俺、どのぐらい気絶してた?」

「30分ぐらい」

「思ったより経ってないな。じゃあまだ全部片付いたわけじゃないのか」


 状況を頭の中で整理しながらそうつぶやく。

 時間的に考えて、おそらくは唯依が本殿近くでアイラ相手に頑張っているころだろう。


 援護に行かないと――と、そう考えた瞬間。


「無理だよ、ユウちゃん」


 表情を読まれたのだろうか。

 雪がこっちをにらむようにしながら強くそう言った。


「大怪我、してるよね? 戦える状態じゃないよ」

「……おいおい。医者でもない素人が見ただけでわかんのかよ」


 俺がそう突っ込むと、雪は少し表情をゆるめて、


「医学は素人だけど、ユウちゃんに関しては免許皆伝だから、私」

「なんじゃそりゃ……」


 相変わらず意味不明だ。


「つか、そもそもそんな免許を皆伝した覚えねーし」

「……あ。そういえば女の子の好みだけは知らないかも」

「いやいや。もっと他にたくさんあんだろ、知らないこと」

「ううん、ないよ。全部知ってる」


 そう断言して、雪はニッコリと微笑んだ。


 どこまでが本気なのかわからないが、俺の怪我が決して軽くないという部分は残念ながら大正解である。

 雪に気づかれないようそっと触れた脇腹は服の上からでもわかるぐらいに腫れていたし、呼吸をするたびに強い痛みが走る。おそらくあばら骨にヒビぐらいは入っているだろう。


 ため息を吐く。


「唯依のやつは大丈夫だったのか?」

「うん。ユウちゃんにお礼言っといてって。あと真柚ちゃんをお願いって言ってたよ。私もユウちゃんを置いてはいけなかったから」

「別に俺の心配はいらねーって」


 とはいえ、俺は無理だからひとりで唯依を助けに行けとも言えない。

 目の届かないところで戦わせるのは少し不安だった。


「心配するよ。だって私はユウちゃんを守るために来たんだもの」

「……俺、そんな頼りないか?」

「ううん。私が心配性なだけ」


 そんな雪の言葉に思わず苦笑する。

 それがフォローのつもりだったのかどうかはさておいて、こうして早々にリタイアしてしまった身では偉そうなことも言えない。


 脇腹の痛みに耐えながら深く息を吐く。

 頭上を見上げると枝葉の隙間から夜空がわずかに顔をのぞかせていた。


「がんばったよ」

「ん?」


 視線を戻すと、雪がじっと俺の顔を見つめていた。


「ユウちゃんは充分がんばったと思う。だから、あとは唯依くんたちに任せちゃってもいいんじゃないかな。……みんなそれぞれの役目を果たすよ。唯依くんも青刃さんも緑刃さんも沙夜ちゃんも。それに楓ちゃんだって」

「楓、ねぇ……」

「うん。だから今回はユウちゃんがなにもかも背負う必要はないよ」

「……背負うとか、そんなつもりはねぇけどさ」


 俺も心配性なのかもしれない。

 だから大した実力もないくせに出しゃばってしまうのだ。


 だけど、ふと。

 ミレーユと相対したときの唯依の強い瞳を思い出す。


 ……今のあいつになら全部任せても大丈夫かもしれない、と思った。


「そうだな」


 少し考えた末に、俺は雪にうなずいてみせた。


「あとのことはあいつらに任せちまうか」

「うん」


 雪が安心したような表情をする。


「ここで待とう? 唯依くんたちが戻ってくるのを」


 ああ、と、俺は再び頭上を見上げて。

 そして、雪の隣で寝息を立てる真柚の存在に、先ほどの夢の記憶が刺激された。


(……あれ、もしかしたらこいつの夢だったのかもな)


 そう気づく。


 俺には他の悪魔の意識に潜り込む"同調"という能力がある。

 寝てる間、無意識のうちにすぐそばの真柚と同調してしまった可能性はあるだろう。


 根拠もあった。


 夢の内容が俺の記憶にない映像ばかりだったこと。

 それと夢に出てきたあの少年の瞳。


 それは、今さっき思い出した唯依の強い瞳とそっくりだった。


 そうしてさらに思い返してみると、長い髪の少女は銀髪、つまりは氷魔。

 鎖に繋がれていたのは雷魔の少女だ。


 メリエルとアイラ。

 それに唯依の父親のクレイン。

 あれが真柚の夢だったとすれば、俺が演じていた少女はミレーユだったのだろう。


 それですべてのつじつまが合う。


(『彼は私たちにとってそれほどの存在だった』……か)


 ミレーユが言ったその言葉も、あの夢のあとだとなんとなく納得できた。


(……けど妙だな)


 ふと思う。

 俺が見たその映像は真柚のものではない。ミレーユのものだ。


 上空から視線を戻す。

 真柚に寄り添う雪は疲れたのか目を閉じていた。


 そこから少し横に視線を移動させ、真柚の寝顔を見る。


 表情は穏やかだ。体も人間のそれに戻っている。


 そこにいるのは間違いなくミレーユではなく狩部真柚だった。

 唯依のやつが失敗したという可能性は低いだろう。


 とすると、俺が見たものはなんだったのだろうか。


 もちろんミレーユが消える直前に見た夢だったということも考えられる。

 俺だって、あれが気絶した直後に見た夢か覚醒する直前に見た夢だったのかわからないのだ。


(……ま、深く考えても仕方ないか)


 結局、俺は考えるのをやめた。

 彼女が真柚に戻っているのなら、それで充分だろう。


 そしてしばしの静寂。


 がさっという草むらをかき分ける音が聞こえたのは、それから2~3分後のことだった。


「……緑刃さん」

「ここにいたか」


 草むらの奥から出てきたのは緑刃さんだった。


 顔色が悪く、足取りも頼りないように見えたのは、ひとりの少女――舞以を背負って歩いてきたことが原因ではないだろう。

 おそらくかなり消耗し、ダメージも負っている。


 だが、緑刃さんはいつもと変わらぬ口調で言った。


「ここもうまくいったようだな。唯依くんはアイラのもとへ向かったのか?」

「はい。30分ほど前です」


 雪がそう答えると、緑刃さんは無言でうなずいて、舞以をそっと真柚の隣へ下ろす。


「ふたりとも、すまないがこの子を頼む。私は光刃様のもとへ行かねばならない」

「……その体で?」

「大したことはない」


 緑刃さんは事も無げにそう言ったが、彼女が大きなダメージを受けているのは明らかだった。


 疑いの目を向ける俺に、緑刃さんは珍しく表情を崩して、


「君もかなりやられたようだな。……考えた作戦は同じだったか」

「たぶんそうっすね。だからその体で行くのが無茶だってこともわかります」

「心配はありがたい。ただ、やれるべきことはやっておかねばな」


 緑刃さんはすぐに表情を引き締めて背中を向ける。

 そこには自分の仕事に対する執念のようなものがにじんでいて、止めても無駄だろうというのはすぐに理解した。


「じゃあ、俺たちも……」

「いや」


 俺が腰を上げようとすると、緑刃さんは即座にそれを制止する。


「君らは無理をするな。それに、これから向かったところで結果を変えるにはきっと遅すぎる」

「遅すぎる? けど、緑刃さんは行くんだろ?」

「万が一があった場合、私は悪あがきをしなければならない。そのために行くだけのことだ」

「悪あがきって?」


 そんな俺の問いかけには答えず、緑刃さんは背中を見せたままで続けた。


「心配はない。光刃様や青刃、それに唯依くんならば、きっとうまくやってくれている」

「……」


 そんな緑刃さんの態度を見て、悪あがきというのはおそらく死ぬことなのだろう、と、思った。


 そんなことに意味があるのか、とか、任を果たすというなら万が一のときには生き延びて戦い続けるべきじゃないのか、とか。

 そういう一般論も頭を過ぎったが、緑刃さんの背中を見ていると、彼女にとってはきっとそういうことじゃないのだろう、と、不思議と納得した。


 そして、俺が緑刃さんと同じように命を捨てることができるかといえば、それはできない。


 だから。


「俺も大丈夫だと思う」


 最終的に俺の口から出たのは、なんの工夫もない励ましの言葉だけだった。


「緑刃さんがつくころにはきっと全部終わってるさ。そのときになって無駄足だったと後悔してももう遅いぜ?」

「……そうか」


 そんな俺の言葉に、緑刃さんは肩越しに振り返って微かに笑みを浮かべる。


「すべてが終わったら私からも君たちに礼をさせてもらうよ。なにか考えておいてくれ」

「ラーメンおごってください。怪我が治ってからですけど」

「そんなものでいいなら」


 緑刃さんはもう一度笑い、再び背中を向けて俺たちの前から去っていった。


 寒風が、その後を追うように木々の間を吹き抜けていく。


「……緑刃さん、か」


 そんな彼女の背中を見送った後、俺は無意識にそうつぶいていた。


 10も20も歳が離れているわけじゃない。

 なのに、彼女がまとう凛とした気配は俺のそれとは確実に違っている。


 いいか悪いかは別として、純粋にかっこいいと思えた。


「大丈夫だよ」

「ん?」


 緑刃さんが消えた暗闇の空間から視線を正面に移動させる。


「唯依くんが、真柚ちゃんを助けた後にこんなこと言ってた」


 と、雪は自分のロングコートを舞以と真柚のふたりにかけながら言った。


「亜矢ちゃんは自分にとっても特別だから。今度は後悔しないように、なにがあっても自分の手で助けるんだ、って。真剣な顔してたよ」

「……なるほどな」


 俺の頭を過ぎったのは夏休みの記憶。

 もう少しで亜矢を見捨てるところだった、と、自分の心の弱さを嘆き、震えていた唯依の姿だ。


 今度は後悔しないように。

 あいつは本当に成長したのだと、心から思う。


「雪」

「うん?」

「ほら、俺の上着着てろ」


 舞以と真柚のふたりにコートを譲った雪は少し寒そうだった。

 氷魔とはいえ、自分の操る冷気と実際の寒さとはまるで別物で、寒いものは寒いのだ。

 俺が火の中に飛び込んだら普通に火傷するのと同じことである。


「あ、大丈夫だよ。私、寒いの得意だから」

「得意とかいうレベルの格好じゃねーだろ、お前。いいから着てろよ」


 そう言って問答無用で上着を放り投げてやると、雪はちょっと困った顔でそれを見つめた後、


「じゃあ、一緒に使おっか?」

「一緒にって、お前のコートみたいに大きくねーぞ」

「大丈夫だよ」


 クスッと笑う。


「小さくても、ピッタリくっつけばあったかいから」

「まあ、そりゃそうかもしれんが……」

「怪我してるの、こっちだよね?」


 そんなことを確認しながら雪は俺の右側に座り、俺の腕を抱きかかえるようにして言葉通りにピッタリとくっついてきた。

 その上から申し訳程度に上着をかける。


(……ま、人の体温に勝るものはない、か)


 そんな雪の温もりを直に感じながら、俺は正面で寄り添うように寝息を立てる舞以と真柚のふたりを見た。

 これならあっちも風邪をひくことはないだろう。


(あとは……唯依。お前が亜矢を連れ帰れば一件落着だ)


 再び見上げた夜空は澄んでいて、星がよく見えた。


 意識が少し朦朧としてくる。

 自分で思う以上に、体がさらなる休息を求めているようだった。


(……だからがんばれよ。お前なら必ずやれる)


 そうして俺は再び目を閉じた。

 唯依、そして神村さんたちの無事を祈りながら。


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