1/7
プロローグ
独自の解釈と妄想で雰囲気でかいています。言葉使い、細かい風俗描写や生活感など拙いどころではありませんが御容赦ください。
プロローグ
校舎と同じレンガ造りの図書館の前には校内一の紅葉がある。
もう師走だというのに、容色いまだ衰えず、わずかばかりの陽光に燃え立つようだった。紅でも、朱でもない。あまりに葉の色が濃く、離れて見ると少し黒味がかってみえるので、「蘇芳」と友人たちと名付けた。
卒論の追い込みで疲れた頭に雑音が入るとどうもイライラしてしまうので足を運んだのだが。
「…。」
図書館棟の自習スペースは今日もいっぱいだった。
はじからはじまで歩いて、やっと、こんなところに席があったのかという、小さなステンドグラスの窓際にやっと席をとる。
資料を一通り出したが、一度嵌り込んだ穴からまだ頭は抜け出していなかった。
さっぱり進まない。
ぱたっとうつぶせると、どこからか奥ゆかしい匂いがした―。