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こもれ日屋さん

掲載日:2026/10/21

うららかな休日の昼下がり。

昼食の後、何とはなしに、ぶらぶらと散歩をしていたら、ふと、1つの看板に目がとまった。


『こもれ日屋さん』。


「さん」という響きがやわらかくて、茶目っ気がある。

もしかして、お日さまのSUNとかけているのだろうか?想像がふくらむ。


それだけでも十分興味をひかれるのだが、看板には少し小さい字で、こう書いてあった。


「猫さんも、猫さんでない方も、お気軽にどうぞ」


入ってみたい。入ってみたいけれど。


何を売っているお店なんだろう?

爽やかな白壁の小さな店には、木枠に囲まれた、曇り硝子の窓がついている。

草木でつくったブーケが飾られている扉も木だ。

中の様子は、わからない。

絵本か何かのお店かな。

でも、猫は絵本を読まないよね。

あ、猫も入れるカフェかな?


私はお店の前に立って、しばらく迷っていたが、思い切って木の扉を開いた。


「いらっしゃいませ」


若くひょろっと背の高い、さらさらとした長い黒髪の男性が、エプロン姿で棚にガラス瓶を並べていた。


「あの、このお店は何屋さんなんですか?」

「木漏れ日を売る店ですよ」

「木漏れ日?」

「この瓶の中に入っているんです」


男性が棚から1つガラス瓶を取って、手渡してくれた。


レトロな印象のガラス瓶は手にしっくりくる大きさだ。

瓶の中で、ほのかに黄色く光っている灯りが見える。

よく見ると、木の枝や木の葉も一緒に入っているようだ。


ああ、こういうハンドメイド品を売っているお店なのね。

気に入ったな。

1つ買っていこうかな。


私は男性に瓶を返して、棚に並べられたガラス瓶をゆっくり見て回った。

1つ1つ灯りの感じが違う。

色々と見ているうちに、どこか懐かしい気分が心をよぎって、1つの瓶を手に取った。

手のひらの中が、ほんのり暖かい。


「これにします」

「お買い上げ、ありがとうございます」


男性は丁寧にガラス瓶を箱に詰め、袋に入れた。

「どうぞ」


私は袋を受け取って会計を済ませると、店を出てすぐに家に帰った。

自宅に戻って、どこに飾ろうかと考えながら、そそくさと箱を開くと、瓶の脇に1枚の紙が入っていた。


「蓋を開けて、お楽しみください」


アロマ、か何かかな?

そうっと瓶の蓋を開く。

途端に、ふわっと暖かい光と、木々の匂いが私を包んだ。

懐かしむように目を閉じる。


目を開くと、子供の頃、よく遊んだ公園に立っていた。

あの時。

私は木陰に座って、紙芝居屋さんから貰った赤い風船を手に持っていた。

木漏れ日がのんびりと辺りに落ちて、かすかな風が木々を揺らしていた。

ぴゅう、と強い風が吹いて、風船をさらっていった。

風船は空高く飛んで行って、見えなくなった。


あの日、あの時のこと。

木陰の暖かい光と、木々の匂いに包まれて、

私は、かすかな風に吹かれながら佇んでいた。



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