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あべこべ世界でのランナー ~マラソン日本記録保持者が女性過多で貞操観念も逆転した世界線に転移し無双する~  作者: アサノ霞
第1章 転移編

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第6話 挨拶

  2018年1月26日㈮


 引っ越しまであと2日。今日は妻となった奈月の実家に挨拶に行く日だ。明日は朱里の実家を訪れる予定になっている。手土産は先日の買い物で既に購入済みだ。


 因みに奈月と朱里の家族には、僕が稀人である事は北川さんを通じて話してある。


 先日購入した黒いスーツに黄色のネクタイを締め、奈月と共にタクシーで実家へ向かう。護衛は別の車で後ろから追っている。奈月は黒無地のレディーススーツ(テーラードジャケット、短めのタイトスカート、ハイヒール)を着ていて、細身のウエストと長い美脚が引き立っている。普段は白衣姿しか見ていないので、あまりの美しさに思わず見惚れてしまう。奈月もそれに気づいたのか、腕を絡めて僕の肩に頭を乗せてきた。


 移動中、奈月の両親や姉妹についていろいろと聞いた。実家には母親の葉月(はづき)(53歳)、双子(二卵性)の姉・美月(みつき)、そして祖母の月子(つきこ)(78歳)が同居している。曾祖母(100歳)は療養中であるらしい。


 父親である星野零士(ほしのれいじ)(48歳)は主夫で、他の妻たちの家を行き来しており、実家には月に一度ほどしか訪れないという。この世界では複婚制が一般的で、夫が各妻宅に通うのが常識らしい。奈月は幼い頃から父親に会う機会が少なかったが、関係は良好で、頻繁に連絡を取り合い一緒に買い物や食事を楽しんでいるようだ。


 奈月の母親は嫡妻ちゃくさい(第一夫人)で、多くのグループ企業を束ねる「沖ホールディングス 株式会社」の代表を務めている。祖母は会長職にあり、姉の美月も同グループに勤めている。

奈月は社長令嬢というわけだ。本当に僕でいいのだろうか、と不安が募る。


 30分ほどでタクシーが静かに止まると、奈月の実家の門が目の前に現れた。白い塀に囲まれた敷地の中に、和洋折衷の立派な家屋が佇んでいる。門が開き駐車場でタクシーを降りると緊張が一層高まる。


「大丈夫だから」


と奈月が微笑みながら手を軽く握ってくれる。


「行きましょう」


奈月が促し、二人で門をくぐる。玄関までの道のりは、手入れの行き届いた庭が広がっており、季節の花が咲き誇っている。


「母は花が好きで、毎朝ここで手入れをしているの」


と奈月は囁いた。庭の美しさに目を奪われつつも、緊張で心臓が高鳴る。


 玄関の扉が開かれると、そこには白地に花柄模様の和服姿の母親・葉月はづきが立っていた。奈月に似た端正な顔立ちと落ち着いた佇まいには、大企業の代表としての貫禄が漂っている。葉月は僕を見て一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに優しい笑みを浮かべて挨拶した。


「ようこそ、いらっしゃい」


「初めまして、甲斐田天馬です。本日はお招きいただき、ありがとうございます」


と頭を下げると、葉月はさらに驚いた表情を見せた。


「そんなにかしこまらなくていいのよ」


と葉月は柔らかい声で応じた。その声に少し安心し緊張も和らいだ。


 家に招かれ、広々とした和洋折衷のリビングルームに通されると、奈月の父・星野零士ほしのれいじ、双子の姉・美月みつき、そして祖母の月子つきこが既に座っていた。零士は華奢で実際の年齢より若く見えるイケメン。美月は奈月とは対照的で、垂れ目でおっとりとした雰囲気の美しい女性だ。月子は穏やかな笑みを浮かべており、年齢よりも若く見える美熟女である。美月は紺色のワンピース、月子は大正時代を思わせる赤色の和装に黒色の袴姿。零士はベージュのスラックスに紺色のカッターシャツといったラフな姿だ。


 祖母の月子は僕を一目見てから目を見開き、とても驚いた表情をしたが、すぐに美月と共に頭を下げて挨拶をした。


「今日はご挨拶に来てくれてありがとうございます」


 その言葉に感謝しながらも、元の世界での価値観を持つ僕は、この家族に受け入れられるかどうか不安だった。奈月がそっと手を握ってくれると、不安が少し和らいだ気がした。


零士が笑顔で奈月と僕に話しかける。


「初めまして天馬君、それと…奈月、久しぶり! そんなに畏まらなくてもいいから、もっとフランクに行こうよ」


零士の気さくな挨拶に僕は緊張が解けた。しかし、ここはしっかりと挨拶すべきと判断し、向かい合って座る4人に深々と頭を下げて婚姻の報告をした。


「初めまして、甲斐田天馬と申します。本日はお忙しい中、お時間を割いてくださり、ありがとうございます。先日、奈月さんと結婚いたしました。未熟者ですが、奈月さんを必ず幸せに致しますので、末永く見守っていただければ幸いです。今後ともよろしくお願いいたします」


 暫く頭を下げたままでいると全く返答がない。おそるおそる顔を上げると、女性3人が驚いた表情でフリーズしていた。隣にいる奈月は涙を浮かべながらも同じくフリーズしている。唯一動いている零士が驚いた表情を見せつつも、僕に話しかけた。


「いや~驚いたよ! 奈月から聞いてはいたが、とても礼儀正しいね! 僕の親友みたいだ!」


4人の様子を気にしている僕に、零士は笑顔で話を続ける。


「あ~、気にしないでほっときなさい。天馬君の挨拶に感動してるだけだから。それより……天馬君、お酒は飲める口かな?」


零士は飲む仕草をしながら尋ねてくる。フリーズしている女性たちを気にも留めない零士に戸惑いながらも答えた。


「えっ!? はい!」


 すると零士は立ち上がり、冷蔵庫から缶ビールを数本取り出してテーブルに置いた。零士が立ち上がった際に気づいたが、彼は身長が150センチ半ばほどの小柄な男性だった。

その後、零士と僕は缶ビールで乾杯した。


「天馬君、行き遅れの娘をもらってくれてありがとう! 乾杯!」


 お互いに缶ビールを飲み干す。転移後初めて飲むビールはとても美味しい。

その後、零士と飲みながら談笑を始めた。初めはぎこちなかったが、奈月の幼少期の話などで笑い合い、会話が弾んだ。


 数分後、他の家族も再び動き出し、僕と零士が笑いながら飲んでいる姿に驚きつつも微笑んでいた。奈月も涙を拭い、ほっとしたような笑顔を見せてくれた。


「ほら、せっかくだから一緒に飲もうよ」


と零士が女性たちに促すと、葉月はづきが微笑みながら頷いた。


「そうね、せっかくの機会だし、一緒に楽しみましょう」


と葉月は座り直し、美月みつきも照れたように微笑んで席についた。


 テーブルには零士が次々と料理を運び、豪華な和洋折衷わようせっちゅうの料理が並んだ。全て零士が作ったというその料理は、見た目も美しく味も一流のレストランに劣らないものだった。洗練された家庭料理に舌鼓を打ちながら、家族との会話も一層弾んだ。


 姉の美月は僕に興味津々のようで、いろいろな質問をしてきた。奈月との出会いから今までのこと、趣味や好きな食べ物まで、次々と聞かれるたびに丁寧に答えた。


「奈月ったら、そんなにお喋りじゃないのに、天馬さんのことをたくさん話してくれてたんですよ」


と美月は嬉しそうに言う。奈月は少し照れたように微笑んでいたが、何も言わずに僕の手を握り返してくれた。


 時間が経つにつれて、最初の緊張はどこへやら。家族全員が打ち解け、和やかな雰囲気が漂っていた。

夕方になり食事が終わると零士が立ち上がり、僕たちを案内するような仕草をした。


「さあ、せっかくだから家の中を少し案内しよう。昔の写真なんかも見せてあげたいな」


と零士が言うと家族も賛同し、リビングから和室へと移動することになった。


 和室には古い家宝や写真が飾られており、歴史を感じさせる雰囲気が漂っていた。奈月と美月の幼少期の写真を見せながら、零士は懐かしそうに話し始めた。


「この写真は、奈月が3歳の頃だね。美月と一緒に七五三のお祝いをしたんだ。当時はまだ僕も家にいることが多くて、二人を連れていろんな場所に遊びに行ったものさ」


 零士が写真を見つめる姿には、父親としての愛情がにじみ出ていた。奈月は少し照れくさそうにしながらも、微笑んでいた。


「父が家にいなかった時期が長かったので、こうして昔の写真を見ると、少し懐かしい気持ちになります」


と奈月がぽつりと呟く。


「でも、天馬が一緒にいてくれるから、これからの未来はもっと楽しくなると思ってる」


と続けた。


僕はその言葉に感動し、奈月の手をそっと握り返した。


 その後、家族との談笑が続き、和室での時間もあっという間に過ぎていった。夕暮れが迫る中、帰宅の時間となったので僕たちは帰ることにした。

玄関で再び家族に挨拶をし零士が笑顔で見送ってくれた。


「正直、奈月がどんな人を連れてくるかと不安だったがね、とても良い男で安心したよ。というか、良すぎて驚いたよ。天馬君、またいつでも遊びに来てくれ。今度はもっとゆっくりお酒でも飲もう」


「はい、ぜひまた伺わせていただきます」

と僕は笑顔で答え零士と連絡先を交換した。


奈月と僕はもう一度丁寧にお礼を言い、家族に別れを告げた。


「これからもよろしく。それにしても…(似てるわ……)」


玄関先まで見送りに来た月子が笑顔でそう言った。最後に小声で何か呟いていたが、いまいち聞きとれなかった。


玄関を出てから家の門までは葉月と美月が一緒に見送る。


「天馬さん、またいつでも遊びに来てくださいね。奈月、天馬さんを幸せにするのですよ」


と家の門まで見送りに来た葉月が、僕には柔らかな声音で、奈月に対しては低い声音で言った。


顔が赤面し体をもじもじさせながら美月さんも僕に挨拶をする。


「てっ…天馬さん!(…好き)お会いできてうれしかったです。これからもよろしくね」


と、美月さんも笑顔を交えウインクしながら言ったのだが、何か小声で言ったような気がしたが、いまいち聞き取れなかった。美月さんは僕よりも頭一つ分くらい背が高いのだが、長くて黒いストレートな髪がとても似合う可愛らしい女性である。


 奈月と手を繋ぎながら外に出ると、冷たい夜風が心地よく感じられた。二人で門を出て、再びタクシーに乗り込むと、ほっとした表情を見せた奈月が僕に話しかける。


「今日は本当にありがとう。みんな天馬を気に入ってくれたみたい」


「こちらこそ、ありがとう。奈月の家族に受け入れてもらえて、本当に嬉しいよ」


僕も心から安堵し、それに応じた。奈月は少し照れたように笑いながら、僕の肩に頭を寄せた。


 タクシーが夜の街を走り抜ける中、僕はこれからの新しい生活に思いを馳せた。奈月と一緒に築く未来が、明るく幸せなものであるようにと、心から願った。


 この日の出来事が、二人の絆をさらに深める大切な一日となったことを、僕は深く実感していた。


◆◆◆◆◆


— 翌日 —


 翌日に新居への引っ越しを控えたこの日は、朱里の実家に挨拶に行く日だ。昨日と同じスーツを着込み、病室で朱里が迎えに来るのを待つ。

暫くすると朱里が病室に迎えに来た。今日の朱里はカジュアルな服装だ。(ゆったりとした長めキャメル色のニットワンピースに、白色のフーディーベスト、黒色ショートブーツ)

彼女自慢の胸部装甲が少し控えめに見えるのは残念だが、童顔な朱里の可愛さが際立っていて、僕には十分魅力的だ。


 朱里はレンタカーを借りており、彼女の運転で実家へと向かう。護衛の車もその後ろについてくるのは昨日と同じだ。


 車内で朱里の母親や家族について尋ねる。朱里は一人っ子で、母親の愛理(あいり)さん(43歳)と二人暮らしだという。愛理さんは奈月の母親、葉月はづきさんとは旧知の間柄で、「沖ホールディングス(株)」の役員をしている。奈月や美月みつきさんとは幼い頃から姉妹のように親しく育ったらしい。


 父親については既に亡くなっており、多くは語らなかったが、あまり良い関係ではなかったらしい。生前の父親は、母子共に興味を持たれていなかった様で、朱里は数えるほどしか会ったことがないという。

ちなみに愛理さんは第12夫人で、祖母も既に亡くなっており、他に親戚との付き合いもないとのこと。


 愛理さんは高校在学中に朱里を身籠り出産し、当時存命であった母親(祖母)の助けを借りながらも、育児と学業を両立させたそうだ。


 高校生での出産には、とても驚いたが、この世界では特に珍しいことではないらしい。

寧ろ、一クラス30人いたとして、3人は在学中に婚姻と出産を経験しているそうだ。


生前の祖母は沖グループの役員をしていたそうで、奈月の祖母である月子さんとは親友でもあったそうだ。


 車を走らせること40分弱、タワーマンションに到着し、駐車スペースに車を停める。護衛も隣に停車し、ここで待機となる。軽く礼を言うと、護衛の女性たちは照れていた。


 マンションの1階エントランスはホテルのようで、フロントには20代前半くらいのコンシェルジュが二人いる。彼女たちは僕を見るなり驚いた顔をした。


 エレベーターに乗ると、朱里は迷いなく最上階のボタンを押す。贅沢なタワーマンションの空間に圧倒され、「住む世界が違う」と感じたが思い直す。朱里の母親が大企業の役員だとすれば当然の住環境だ。


 最上階に到着すると、玄関先で愛理あいりさんが出迎えてくれていた。黒いシンプルなワンピース姿の愛理さんは朱里にそっくりで、見た目20代前半くらいと若々しく、まるで朱里の姉のようだった。

髪型は朱里と同じボブヘアーだが、つややかなプラチナブロンド(銀髪)が目を引く。そして何よりも朱里と同じく見事な胸部装甲が印象的だ。


僕は挨拶をし手土産を渡すと、愛理さんは微笑みながら応じ、僕たちを家に招き入れてくれた。


 広々としたリビングには、自然の温もりを感じさせる緑色のソファがあり、3メートルはあろうかという大きな窓からは都会の景色が一望できた。落ち着いたインテリアが愛理さんのセンスの良さを感じさせる。

愛理さんは僕たちをソファに座らせ、上質なコーヒーを淹れてくれた。


「天馬さん、朱里がいつもお世話になってます」


と、愛理さんが柔らかく微笑む。

彼女の声には大人の余裕と品格が漂い、何よりも一つ一つの仕草が妖艶で、つい目を奪われてしまい引き込まれそうになる。


——というか、何だろう? 朱里がいなければ、僕は愛理さんを押し倒してしまうかもしれない……とても魅惑的な女性である。


「いえ、こちらこそ朱里さんには、いつもお世話になっております」


と、僕は少し緊張しながら返答する。

そして僕は直ぐに愛理さんに向かって深々と頭を下げて挨拶した。


「愛理さっ……いえ、お義母かあさん! 本日はお忙しい中お時間を割いてくださり、ありがとうございます。先日、朱里さんと結婚致しました! 未熟者ではありますが、必ず幸せに致します! 今後ともよろしくお願いいたします!」


 僕が顔を上げると、愛理さんと朱里は驚いた表情で固まっていた。僕は朱里をゆすって再起動を促すと、しばらくして動き出したが、愛理さんはまだフリーズしたままだ。朱里が愛理さんをゆすってようやく再起動した。


「へぁっ!? えっ! お母さんって……アイリって呼んで!」


再起動した愛理さんが蕩けた表情で僕を見つめる。潤んだ瞳がとても色っぽく、僕は赤面してしまう。


すると朱里が眉をひそめて愛理さんに注意する。


「何ふざけてんの?」


愛理さんは我に返り、シュンと俯くと右手人差し指を自身の唇に当てて僕を見上げながら鼻にかかった声で囁いた。


「だって~~すごーくいい男なんだもん……」


(くっ!……何て色っぽいんだ!!)


朱里が僕の腕にしがみつき、少し苛立った声で言い放つ。


「お母さん! 変なこと言わないでよ!」


「あはっ!?  冗談よ。でも、素敵な奥さんを見つけたわね」


愛理さんはやんわりと朱里を躱し、悪戯っぽく笑った。

朱里は俯き顔にはうっすらと紅が差す。


 その微笑ましいやり取りの後、僕たちは食事をすることになり、愛理さんが手料理を振る舞ってくれた。

愛理さんが用意してくれた食事は、シンプルな和食ではあるが、見た目も味もプロ顔負けのものだった。テーブルには色とりどりの料理が並び、その香りが食欲を刺激する。


「お母さん、相変わらずすごいね」

と朱里は感嘆の声を漏らす。


「本当に美味しいです」

と僕も感謝の気持ちを込めて伝えた。


「ありがとう。こうやって娘の夫に美味しいと言ってもらえるのは嬉しいものね(…素敵)」


愛理さんは照れたように微笑みながら応じた。だがその視線には、依然としてどこか妖艶な輝きが残っている。


「朱里が好きなものばかりよ。天馬さんの好みも、これから少しずつ聞かせてちょうだいね」

と、愛理さんは僕にウインクし意味深に続けた。


「お母さん、あんまりダーリンにちょっかい出さないでよ!」


朱里がそんな母親の言葉にすかさずジト目で警戒するように注意する。


「ふふ、わかってるわよ。でも、熱いわねぇ……羨ましい」

愛理さんは笑いながら悪戯っぽく微笑む。


 その後も、食事をしながら様々な話題が飛び交った。愛理さんが高校生で朱里を出産したことや、沖ホールディングスでの仕事の話、そして朱里が子供の頃のエピソードなど、次々に語られる家族の歴史を聞いていると、朱里がとても愛されて育ったのがよくわかる。


愛理さんが微笑みながら僕たちを見つめる。


「でも、本当に素敵なお婿さんね。朱里には勿体ないくらいにね」


そう言うと、愛理さんは目を細めて朱里を見つめた。

彼女の表情には母親としての優しさと、どこか楽しげな様子が混じっていた。


「お母さん……」


朱里が少し照れたように言う。


「こんな素敵な人と結婚できて、母としても安心だわ……というか、羨ましいな」


朱里がますます赤くなり、僕はその様子を微笑ましく見守る。すると愛理さんが突然、真面目な表情に変わり僕に向き直った。


「天馬さん、朱里をよろしくお願いします。彼女はまだ若いし、いろんな面で頼りないこともあるかもしれないけれど……きっと天馬さんを幸せにしてくれると信じてます」


 愛理さんの瞳は真剣そのもので、その言葉には深い母親としての愛情が込められているのを感じた。僕は改めて深く頷き答える。


「朱里さんを必ず幸せにします」


そう言いながら、僕は自分の中で強く誓った。彼女を幸せにするために、どんな困難があろうとも全力で立ち向かうと。


 愛理さんは目を丸くして驚き、数十秒ほどフリーズしてしまう。しばらくの沈黙の後、彼女はポツリとつぶやいた。


「……男性からそんな目で見つめられると……」


愛理さんは僕を見つめて顔を赤く染める。


朱里が不思議そうに母親を見上げる。


「お母さん…? 」


「いえ、何でもないわ」

愛理さんがそう言って静かに笑った。


「天馬さん、朱里を選んで下さってありがとう。こうして朱里の幸せな姿を見られて嬉しいわ」


愛理さんの言葉には母としての愛情が滲んでいる。朱里が母の言葉に少し照れたように笑う。僕も思わず頬が緩んだ。


「朱里がこんなに素敵に育ったのは、愛理さんのおかげですね」

僕は感謝の気持ちを込めて言った。


「まあ、天馬さんったら。そう言ってもらえると嬉しいわ」

愛理さんは柔らかく微笑んでそう返してくれた。


 食事を終え、そろそろ帰る準備をしようとしていた時、愛理さんが僕にふと近づいてきた。彼女は朱里に気づかれないよう、僕の耳元で囁く。


「天馬さん、またいつでも来てくださいね。今度は二人きりで……ね」


 その声には、ほんのりと艶やかな響きと色香が混じっていて、僕は一瞬動揺した。朱里は気づいていないようで、僕は軽く微笑み返す。


「はい、またお伺いさせていただきます」


 玄関で愛理さんに別れの挨拶をし、朱里が玄関の方を向いた瞬間、愛理さんは素早く僕に近づいて朱里に聞こえない様、小声で囁いた。


「(…きっとよ、まってるわ…)」


 そして僕と朱里はマンションを後にした。朱里は全く気付いてない様子。車に乗り込むと、車内は先ほどまでの賑やかさが嘘のように静まり返っていた。


「お母さん、本当に変わってるよね」

朱里が笑いながら言う。


「うっ……うん… でも、すごく優しい人だと思うよ」

僕も笑顔で返した。


 これからの新生活は、きっと色々なことが待ち受けているだろう。しかし、その全てを朱里と一緒に乗り越えていこうと、僕は心の中で強く決意した。


 それにしても……愛理さんのあの色香は……理性が負けてしまいそうだ。先が思いやられる。


 車は静かに夜の街を走り僕たちは新しい日々に向かって前進していく。



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愛理さん攻略パーとはありますか!?
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