表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/5

第一章 白色の世界4

 そのひと言を聞いて俺は困惑した。素直に喜ぶべきなのか、それとも「そんなことはない早く逃げろ」とここにいる奴ら全員を無理矢理にでも走り出させるべきなのか。困った、頭が回らねぇ。まあそうだよな。物理的にも精神的にも頭は参っちまっているからな。

 「どうすりゃいいんだ……?」

 俺は呟くと同時にふと玄関ホールにいる多種多様な構えをしているやつらを一瞥する。半数近くが「ああ、またか」と言いたげな面持ちになっている。ということは、この子が言ったことは正しいと判断していいのだろうか。

 俺は大きな安堵の溜息をついた。訳が分からないがひとまず助かった。この洋館から発せられていた弱々しい光はチョウチンアンコウの灯りじゃなくて、『蜘蛛の糸』みたいにお釈迦様が地獄の中に用意してくれた極楽への光だったんだな。俺が善行を積んでいたかどうかは知らんが。

 俺が勘違いをしている可能性がなきにしもあらずなので、念のために一応確認しておこう。俺は目の前で俺の顔をじっと見つめている女子に、

 「なあ、化け物が入ってこないということはここは安全と捉えていいんだよな?」と、言った。

 聞くとその子は頷き、平坦な声で言った。

 「うん、今のところはね」

 「でも、何でここに入ってこないって分かるんだ?……もしかして、俺と同じようにこの洋館に入る直前まであの化け物に追われていた人がいたとか?」

 またしても平坦な声で、

 「うん、正解」

 「合ってたのか!?」

 「うん」

 「何人くらだ?君は?」

 「 違う」

 なんか調子狂うな。まあ喋り方は人それぞれか。俺が矢継ぎ早に質問をしたのもあると思うが。

 全員があの化け物に追われてここに逃げてきたわけではないのか。この洋館の出現条件が「化け物に追われる」だと思っていたが違ったらしい。まあよくよく考えてみたら追われる前から洋館は見えてたな。じゃあ、化け物と遭遇したらこの洋館の扉を開けられるようになるってのはどうだ?……どうでもいいか。何が正しくて何が間違っているかなんてのは俺には分からんし、この洋館の真実を知ったとしてもこの狂気じみた白一色の世界から脱出できやしねぇと思うからな。

 どうでもいいと思いながらもあれやこれやと考えていると、

 「そういえば、自己紹介がまだだったね。私は神村恵美かみむらめぐみ。東京にある楠並くすなみ高校の二年生」

 目の前にいた女子生徒が先ほどの平坦な声ではなく心地良い声で自己紹介をした。

 小柄。高校生ではなく小学生と間違えてもおかしくないようなあどけない顔。ぱっちりとしていて二重である大きな双眸。雪のように真っ白ではないが白くて綺麗な肌。綺麗な黒髪ストレートロングヘア。さっきも思ったけど可愛いな。この子は天使か?Oh yeah,she is angel!神村が天使じゃないなら何を天使というのか。もし違うと言う奴がいたら問答無用で俺の全力右ストレートでぶっ飛ばしてやるからな。

 神村は汚れのない純白の歯を見せながら微笑んでいる。

 楠並高校か。俺の高校と近いな。特に理由はないが後で連絡先を聞いておこう。特に理由はないが。ここ重要。

 俺は自分で笑顔だと思う表情を作りながら、

 「神村さんね。俺は涼盛夏希すずもりなつきひがし高校の同じく二年生」

 「東高校って東京の?」

 「そうだよ」

 「へー、頭いいんだね」

 「俺は賢くないよ。周りの奴らは優秀だけど。合格できたのは奇跡ってやつだ」

 直視できなくていつの間にか下に行っていた目線を上げると、神村さんの微笑みが消えていて、暗い表情になって俯いていた。もしかして俺不味いこと言っちゃったかな。いや、違うか。この常軌を逸した世界で笑顔を続けるなんてことは作り笑顔でもできないだろうからな。できるやつは状況を理解できないお馬鹿者や詐欺師だろう。

 神村さんの暗い表情を払拭するために笑い話をしようと口を開いた瞬間、

 「あっ、気にしないで。大丈夫だから」

 俺が心配そうな面持ちになっていたからか神村さんに制された。

 俺は口の前にある小さな右手を優しくどかして、

 「本当に大丈夫か?」

 「うん」

 神村さんは頷いた。俺でも分かるような作り笑顔で。

 「涼盛君は他の人にも自己紹介した方が良いかな。ほら、向こうの人達に」

 そう言いながら玄関ホールで佇んでいる奴らの方へと指を差した。

 うげー、めんどくせぇ。

 俺は神村さんに会釈すると、神村さんはニッコリと笑顔をした。

 笑顔を確認した俺は身体を翻し、ぶつくさ言いながら野郎共へと歩んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ