- 11 - 神姫バス 龍野橋東詰~竜野駅
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龍野橋東詰のバス停は、夕暮れの静けさの中でほのかに灯る街灯に照らされていた。
街路の先には、ゆるやかに沈みかけた空が広がる。四人はバス停のそばに立ち、短い待ち時間を静かに過ごした。周囲にはほとんど人影がなく、まるでこの土地自体が夕暮れを待っているかのようである。
「人、少なすぎやな……」
桜が小声で呟き、肩のストラップを直した。
「まあ、田舎やからねん」
ひまわりが頷く。道沿いに見えるのは瓦屋根の民家や木造町家。落ち着いた空気が漂い、かすかな醤油の香りが風に乗って届くように思えた。
やがてバスが、揖保川の西岸を沿うようにしてゆっくりと入線してきた。赤と白の車体は薄暗い夕光を受けて鈍く光り、窓の奥には生活の気配を運ぶかのように車内灯が点った。
運転手がドアを開けると、四人は静かに乗り込む。車内にはすでに数人の利用客が座り、買い物帰りの主婦や制服姿の学生がちらほらと見える。
楓花が四人に説明する。
「次に降りるのは竜野駅です。山陽本線の駅ですね」
ひまわりが首をかしげる。
「竜野駅って、旧市街から結構離れてるんやろ?」
「そうです。地図で見ると、旧市街の中心からは少し距離があります」
楓花は指で地図をなぞりながら丁寧に答える。
カメリアが静かに付け加える。
「竜野駅はもともと揖保川町の方にあった駅が起源です。旧市街に近い本竜野駅は、姫新線の開業に伴って作られたものだね」
桜が目を瞬かせる。
「へえ、駅の名前と町の名前、ちょっと食い違うんやな」
ひまわりも続く。
「“龍”って字、ちょっと難しいし、市の名前をひらがなにしたんも、なるほどやなあ」
楓花がスマホを見ながら補足する。
「“龍野”という地名には由来があって、揖保川の石で作ったお墓が野に立ち並ぶ景色から“立野”と呼ばれるようになり、それが変化して“龍野”になった、という説があります」
桜が肩をすくめる。
「でも漢字とひらがなをあちこちで使い分けるから、かえって混乱しそうやね」
四人は思わず笑い合った。その空気は軽かったが、地名の歴史の深さだけは、しっかりと胸に残った。
バスは揖保川沿いをゆるやかに進む。川面には夕暮れの光がちらちらと反射し、住宅や瓦屋根が赤みを帯びて浮かび上がる。
窓の外は灯りのまばらな郊外へと変わり、暗がりに沈む田畑や住宅の影が連なる。旧城下町の面影は次第に遠ざかっていった。
やがてバスは小さな交差点を曲がり、竜野駅へと続く直線に入る。沿道には街灯や店舗の光が点々と並び、幹線道路沿いらしい雰囲気がじわりと漂い始める。
ほどなく、闇の中に駅前広場の明かりがにじみ、その光が近づくにつれ、四人の旅も一区切りに向かっていることを静かに告げていた。
楓花が声をかける。
「ほら、見えてきました。あれが竜野駅です」
ひまわりが小さく声を上げる。
「うん、旧市街からはだいぶ離れとるね」
カメリアが補足する。
「今は市の一部として町の駅扱いですけれど、歴史的には興味深い事情がありますね」
桜も頷き、地図で旧市街との距離を再確認した。
バスは静かに竜野駅前に滑り込み、穏やかなアナウンスが降車を告げる。乗客たちはそれぞれの生活や旅路へと歩き出す。四人もゆっくりと外に出る。
夕暮れはすでに濃く、街灯が町を淡く照らしていた。町並みは、沈みゆく空の下で静かに佇んでいた。




