表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/70

- 11 - 神姫バス 龍野橋東詰~竜野駅

高速神戸>>山陽明石>>明石港>>岩屋港>>淡路IC>>洲本IC>>洲本>>志筑>>竹屋>>伊弉諾神宮前>>高速舞子>>舞子公園>>山陽姫路>>姫路>>播磨新宮>>新宮駅前>>山崎>>一の宮伊和神社前>>山崎>>龍野>>【桜、楓花、カメリア、ひまわりの現在地】

龍野橋東詰のバス停は、夕暮れの静けさの中でほのかに灯る街灯に照らされていた。


街路の先には、ゆるやかに沈みかけた空が広がる。四人はバス停のそばに立ち、短い待ち時間を静かに過ごした。周囲にはほとんど人影がなく、まるでこの土地自体が夕暮れを待っているかのようである。


「人、少なすぎやな……」

桜が小声で呟き、肩のストラップを直した。


「まあ、田舎やからねん」

ひまわりが頷く。道沿いに見えるのは瓦屋根の民家や木造町家。落ち着いた空気が漂い、かすかな醤油の香りが風に乗って届くように思えた。


やがてバスが、揖保川の西岸を沿うようにしてゆっくりと入線してきた。赤と白の車体は薄暗い夕光を受けて鈍く光り、窓の奥には生活の気配を運ぶかのように車内灯が点った。


運転手がドアを開けると、四人は静かに乗り込む。車内にはすでに数人の利用客が座り、買い物帰りの主婦や制服姿の学生がちらほらと見える。


楓花が四人に説明する。

「次に降りるのは竜野駅です。山陽本線の駅ですね」


ひまわりが首をかしげる。

「竜野駅って、旧市街から結構離れてるんやろ?」


「そうです。地図で見ると、旧市街の中心からは少し距離があります」

楓花は指で地図をなぞりながら丁寧に答える。


カメリアが静かに付け加える。

「竜野駅はもともと揖保川町の方にあった駅が起源です。旧市街に近い本竜野駅は、姫新線の開業に伴って作られたものだね」


桜が目を瞬かせる。

「へえ、駅の名前と町の名前、ちょっと食い違うんやな」


ひまわりも続く。

「“龍”って字、ちょっと難しいし、市の名前をひらがなにしたんも、なるほどやなあ」


楓花がスマホを見ながら補足する。

「“龍野”という地名には由来があって、揖保川の石で作ったお墓が野に立ち並ぶ景色から“立野”と呼ばれるようになり、それが変化して“龍野”になった、という説があります」


桜が肩をすくめる。

「でも漢字とひらがなをあちこちで使い分けるから、かえって混乱しそうやね」


四人は思わず笑い合った。その空気は軽かったが、地名の歴史の深さだけは、しっかりと胸に残った。


バスは揖保川沿いをゆるやかに進む。川面には夕暮れの光がちらちらと反射し、住宅や瓦屋根が赤みを帯びて浮かび上がる。


窓の外は灯りのまばらな郊外へと変わり、暗がりに沈む田畑や住宅の影が連なる。旧城下町の面影は次第に遠ざかっていった。


やがてバスは小さな交差点を曲がり、竜野駅へと続く直線に入る。沿道には街灯や店舗の光が点々と並び、幹線道路沿いらしい雰囲気がじわりと漂い始める。


ほどなく、闇の中に駅前広場の明かりがにじみ、その光が近づくにつれ、四人の旅も一区切りに向かっていることを静かに告げていた。


楓花が声をかける。

「ほら、見えてきました。あれが竜野駅です」


ひまわりが小さく声を上げる。

「うん、旧市街からはだいぶ離れとるね」


カメリアが補足する。

「今は市の一部として町の駅扱いですけれど、歴史的には興味深い事情がありますね」


桜も頷き、地図で旧市街との距離を再確認した。


バスは静かに竜野駅前に滑り込み、穏やかなアナウンスが降車を告げる。乗客たちはそれぞれの生活や旅路へと歩き出す。四人もゆっくりと外に出る。


夕暮れはすでに濃く、街灯が町を淡く照らしていた。町並みは、沈みゆく空の下で静かに佇んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ