- 3 - JR姫新線 姫路駅~播磨新宮駅
1日目
高速神戸>>山陽明石>>明石港>>岩屋港>>淡路IC>>洲本IC>>洲本>>志筑>>竹屋>>伊弉諾神宮前>>高速舞子>>舞子公園>>山陽姫路>>姫路【桜、楓花、カメリア、ひまわりの現在地】
四人はJR姫路駅のホームに立った。
すでに姫新線の播磨新宮行きの列車が停まっており、銀色の車体が曇り空の光をやわらかく反射していた。ドアが開くと、ローカル線らしい落ち着いた車内が待っていた。座席はきちんと並び、窓から差し込む光が淡く床に伸びている。ささやかな静けさが、これからの旅を静かに演出していた。
桜はカメラを肩にかけ直しながら、ふっと息をもらす。
「さて、次は播磨新宮やな」
13時25分、列車はゆっくりとホームを離れ、街並みを後ろへ押しやった。大きな駅ビルやビル群がすぐに遠ざかり、住宅地や空き地が点々と姿を見せる。左手には、かすかに手柄山の稜線が望めた。
「楓花、あれ。新駅ができるらしいな」
桜が窓の外を指さした。JR山陽本線沿いに、工事用の囲いがわずかに見える。
「そうね。山陽本線の新駅ね。少し離れているけれど、工事は進められているみたいだ」
楓花は軽く視線を窓に送ると、それ以上詳しくは語らず、流れる景色に目を戻した。
やがて線路は市街地を抜け、田園地帯へ差し掛かる。
小さな流れが曇り空を映して淡く揺れ、ひまわりが身を乗り出す。
「ねえカメちゃん、この川って?」
「夢前川なの。播磨の山間を貫く川で、透明感のある流れね。少し遡ったところに塩田温泉もあるわ」
カメリアが穏やかに言う。
この辺りの地形図も、彼女の頭の中には入っているようだ。
「温泉かあ、行きたいやん!」
ひまわりが少し行きたそうに声を弾ませる。
桜は窓の外を眺めながら、カメラを構えてシャッターを切った。
「昔は姫路の奥座敷って呼ばれよった温泉地らしいんよ。昔は、ね」
シャッター音が、ささやかなBGMのように車内に響いた。
桜がシャッターを切ったあと、ひと息つくようにリュックを開いた。
「そういや、コンビニで買ったやつ、食べとくか」
差し出されたおにぎりを受け取りながら、ひまわりが小さく笑う。
「移動ばっかりで、ちょっとあわただしいねん」
そう言いつつもしっかり頬張り、どこか楽しげだった。
楓花も黙って口に運び、窓の外を眺めたまま「こういうのも旅らしいな」とつぶやく。
わずかな昼食のひとときが、静かな車内に心地よい間を作っていた。
列車は橋を渡り、小さな駅舎に到着する。
余部駅だ。木造の駅舎は改装されているものの、昔の面影を残していた。
「こういう駅舎、見るとちょっとワクワクするんよな」
桜が声をもらす。
「鉄道好きにはたまらない駅ね。分かる気がするわ」
カメリアは淡々と頷いた。感情を大きく見せることはないが、その一言には確かな共感が含まれていた。
列車は、揖保川の手前から緩やかなカーブを描く。本龍野駅を過ぎ、そして東觜崎駅へと近づく。
沿線には「揖保乃糸」の文字があちこちに見え始めていた。
「ねえ、揖保乃糸って素麺やろ? さっきの川の水が関係してるんやろか」
ひまわりが興味深げに尋ねる。
「こちらは揖保川よ。水が澄んでいて、素麺づくりに向いているの」
カメリアが即答する。
「へえ、だからあの辺は昔から名産なんやな」
ひまわりが感心したように頷くと、桜も窓に顔を寄せて
「確かに、看板もいっぱい出とるな」
とつぶやいた。
そして列車は揖保川を渡り、やがて播磨新宮駅に滑り込んだ。
13時56分。ドアが開くと、空気が街中とは違い、のどかで柔らかいものに変わった。四人は順にホームへ降り立つ。
桜は辺りをぐるりと見回し、カメラを軽く抱え直す。
「やっぱり駅ごとに空気が変わるな」
ひまわりは肩をすくめ、にっこり笑った。
「さて、次の散策に行こかやろ」
楓花は時刻表を確認しつつ、「ここからはバスやね」と口にした。
カメリアはゆっくりと視線を巡らせる。
「揖保川沿いの道を走れば、播磨の山間の集落や地形もよく分かるはず。伊和神社に近づくにつれて、土地の成り立ちも見えてくるわ」
その落ち着いた言葉に、四人の期待が少しふくらむ。




