02c
「まぁ、気楽にしてよ」
「う、うん」
そうは言ったもののアミの表情はひきつり、おっかなびっくり部屋の中央にある机の前に座る。
まぁ、この状態で気楽って言うのも無理だろう。
何故ならば……
「じと~」
擬音をわざわざ口に出す謎生物が彼女の後ろ、ベッドの上に鎮座しているのだから。
「エリちゃんが女の子連れ込むって珍しいよね」
その謎生物あらため七海が酷く不機嫌そうな顔で言う。
眉間には二、三本深い縦皺が刻まれている。
「まぁ、そう拗ねるなって」
私が言うと、すねてないもーん、とクッションを抱き抱えて七海はそっぽを向く。
まったく困った奴だ。
「え……と、七海さん? とエリってどんな関係?」
エリちゃんを呼び捨てなんて、と七海が大袈裟に驚く。
「ん、義理の姉妹」
「義理の……?」
当然不思議そうにアミは返すがその疑問に答えは返さない。
わざわざ人に話す事も無いだろう?
「ほい、珈琲」
インスタントだけど、と付け加える。
とはいえ、珈琲にはちょっと譲れない所があるので、飽くまでクライスのインスタントコーヒー。
「あ、ありがと」
アミは七海の雰囲気に圧倒されながらもそれを受け取る。
「エリちゃん、私も」
「お前は自分で淹れろ」
ぶーぶーいう七海は無視する。
「悪いね、狭くて」
すこし七海を見る。
「騒々しくて」
「む、悪口?」
「事実だろう?」
「エリちゃん酷い、私の事は遊びだったのね」
前後の文脈が合ってない気がする。
アミは見ればくすくすと笑っている。
「何がそんなにおかしいのく・じょ・うさ~ん?」
七海がムッとした顔のまま言う。
「ごめんなさい、ただエリの同室って言うから修行僧みたいな人かと思ってたから」
「それも失礼な話だな、私はそんな風に見られていたのか?」
「……こんなに楽しそうにエリが話すなんて御二人は仲が良いんですね」
私の言葉は見事にスルーされた。
七海と視線が交わる。
イヤににやにやした顔。
さっきまで急転直下だった機嫌は回復したらしい。
「ふっふー、エリちゃんと私の絆は誰にも邪魔出来ないのデス」
そのにやけ面が若干我慢ならなくてついつい頬を引っ張ってやる。
「いひゃいいひゃい」
アミはずっと笑っていた。
少し寂しそうに。