plrologue
長い黒髪の少女……と言うには少々トウがたった女性が叫ぶ。
それは肉声では無く、ベースの重低音であったが。
それでもそれは僕の心に突き刺さるかのようだった。
Tシャツにブラックジーンズという普通の出で立ちだったが、彼女の細い長身にはそれが不思議と決まって見えた。
唯一、〝それっぽい〟のは首から下がったシドチェーン。
汗を飛び散らしながらベースで歌うその姿は何か、訴えかけるものを感じさせた。
格好いい。
素直にそう思った。
そう思ったその直後にはボーカルの子がステージ上で煙草を吸おうとして退場させられてたけど。
漏れ聞く声からはどうやら未成年だったらしい。
やっぱり、少女でよかったのだろうか。
「カイリ」
そう呼ぶ声に手を振って、僕は立ち上がる。
最後、目があったそのベースの少女は、苦笑の表情を浮かべていた。
∇
私がバンドに入ろうと思ったのは、わけが無い。
楽しみたかったから。
だから、不必要に仲良しこよしなポップバンドとか、プロを目指す気満々な熱心なロックバンドには最初から興味が無かった。
だからこうして気が向いたときにベースやギター、スティックを取り、それ以外のときは部屋の隅っこで煙草を吸ってるだけのこのバンドは気に入っている。
私はそも、ライブで楽しめれば良いのだ。
それは皆同じ見解のようで、ことライブとなると何も言わずにこの部室に集まる。
中途半端な、パンク。
別に衝動があるわけでも、何か社会にしてやろうという気も無い。
ファッションパンクだからなんだ。
楽しめればいいのだ。
だから意外とみんな私生活では真面目なヒト。
そうでも無ければ女子大になんて入れないだろうし。
だからきっと、そんな閉鎖的な空間で貯めた鬱憤を晴らしたいのだろう。
だから、笑えることに貼ってあった勧誘のビラにもこういう風に書いてあった。
〝君も飛び込んでみないかい?〟