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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜特別編・夏のホラー2025  作者: 兎深みどり
2025年特別編:屍村編

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第玖話『沈みかけた祭壇』

 ーーその日の夜ーー


 夢の中に、あの母子が現れた。


 少女は水の中でじっとこちらを見つめていた。

 その隣で、母親の霊が静かに言った。


 ――“まだ、終わっていないの”


 ――“陽蔵おじいちゃんが……あの場所に、全部かくしたの”


 ――“沈みかけた祭壇。その奥に、わたしたちの村の“ほんとう”があるの”


 ーー“根源はすでにここにはいません、すでに解き放たれました……ですが、あの人は、また呼び出そうとしています……悪意の根源を……”


 悪意の根源……それは、一体……!?


 夢の中なのに、何か悍ましいものにこちらを覗き見られる感覚……見られている……!!


 ーー知らない方がいいです、あれは人が関わってはいけないものーー



 ――目覚めた時、修は息を荒げていた。

 夢なのに、胸が痛むほど“現実味”があった。

 そして、異常な寒気も……

 


 そして今

 彼らはその夢に導かれるように村の奥――

 地図にも載らぬ旧参道の奥へと向かっていた。


「……雨城君。どうしてこの道を?」


 結が不安げに尋ねる。


「昨夜、夢を見ました。少女と、その母親が出てきたんです。 “陽蔵おじいちゃんが、全部かくした”って。

“沈みかけた祭壇”って、そして陽蔵が、あの少女を贄として捧げてまで、呼び出そうとした悪意の根源とやらの事も……はっきり言ってました」


「夢で……?」


「ただの夢じゃないと思います。あれは、あの親子が“伝えようとしてきた”もので“それはとても重要な事である”と……俺には、そう感じました」


 その真剣な口調に、結は黙ってうなずいた。



 やがて彼らは、朽ちた鳥居の前へと辿り着く。


 その先には、苔と湿気に包まれた石段が続いていた。


 降り立った地下空間は、ぬめるような湿気と濁った水に満たされている。

 足首まで浸かる水が、ひやりと冷たい。


 


「これが……祭壇……?」


 中央には、黒ずんだ石の台座。

 焼け焦げの跡。縄で縛ったような痕。

 そこだけ、空間の空気がよどんでいた。


「……誰かを“捧げた”痕跡だ」


 修の声に、愛菜が思わず身をすくめる。


 ノクスが低く「にゃ……」と唸った。

 その目は、水面の一点をじっと見ていた。


 


「空気の流れが変だ」


 先生が天井を仰ぎながらつぶやく。


「音が……吸い込まれてるみたい」


 結が肩をすぼめるように言った。


 


 その瞬間、修がアプリを構えた。

 波紋は赤く脈打ち、中心に黒い渦が現れていた。


「……まだ、いる」


 


 バシャリッ!


 水面が揺れ、修の目の前に“それ”が現れた。


 視えるのは、修だけ。


 濡れた髪。

 顔のない影。

 石の台座の裏から、ゆっくりと這い出してくる。


 


「動くな……囲まれてる」


「え……何? ボクには……」


 愛菜がきょろきょろと視線を泳がせるが、何も見えていない。


 ノクスが「シャッ!」と短く鳴いた。

 と同時に、来た道で――


 ドゴゴッ! ガラガラガラッ!


 崩れるような音が響いた。


 


 振り返れば、通ってきた石段が瓦礫で塞がれていた。


「……閉じ込められた?」


 先生の声が、わずかに低くなった。


 


 修はゆっくりと石の祭壇の奥に歩を進める。


 石壁に刻まれた模様。焼け落ちかけた“印”。

 そこに、何かを封じた痕跡。


「少女が……言ってた。“陽蔵おじいちゃんが、ぜんぶかくした”って」


 波紋がさらに激しく揺れた。


「もしかして、それって……」


 そして水面に、泡が浮かび、やがて――


 “顔”が浮かび上がる。


 それは、夢で見たのと同じ。

 羽生陽蔵の顔。

 目だけが笑っていない、唇の端だけが歪んだ、静かな嘲笑。


 そして無数の霊達。


「ーーここに、隠していたんだなーー」


 次回予告


 第拾話『見えすぎた代償』


 かつて捧げられた“贄”。

少女が信じていた“おじいちゃん”が隠したものとは。

視える者だけが知る呪いが、今、動き出す。


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