最終話『終焉の牢獄』
夕暮れの地下祭壇。
冷たい水面が微かに揺れている。
修、結、愛菜、そしてノクスは互いに視線を交わし、覚悟を決めていた。
浜野先生も静かにその輪に加わっている。
「ここで終わらせる……村長の呪いも、この村の悲劇も」
修がスマホのアプリを起動する。
画面は激しく赤く点滅し、霊力が溢れ出していた。
「陽蔵、お前の支配は終わりだ!村人達を解放しろ!」
地下水面が割れ、羽生陽蔵の姿が現れる。
肌は腐敗し、瞳は狂気に燃えている。
「俺がこの村を作った!この村を最高の観光地にしなくてはならん!!犠牲は当然の代償なのだよ!!お前達にそれが何故理解出来ん?理解しろ!!低脳な痴れ者どもが!!」
陽蔵の声は冷たく、理想を押し付ける狂気そのものだった。
「理屈はどうあれ、人の命を弄ぶ事だけは許せん。」
先生は拳を固め、修達の側にしっかりと立つ。
「命は奪われる為に存在してるんじゃない!てめぇの私利私欲で命奪われた者達を取り戻す!」
修はスマホを見つめながらも、強い決意を胸に叫んだ。
結が持ってきた塩の束を撒くと、薄暗い空気が切り裂かれ、陽蔵の姿が揺らぎ始める。
「にゃう!(気をつけろ!)」
「ノクス、ありがとう。気をつける!しゅーくん!今だよ!みんなの思いを集めて!」
愛菜がノクスの声を頼りに叫ぶ。
修はアプリを最大出力に切り替え、全力で陽蔵の狂気を断ち切ろうとする。
「陽蔵!!お前が望んだ“完璧”は、独りよがりの悪夢でしかない!!」
陽蔵が叫び、狂った波動が辺りに拡散する。しかしノクスの咆哮がそれを抑え込み、修達の絆が抗う。
「にゃぉぉぉっ!!(やらせはせん!!)」
次第に陽蔵の体は崩れ、最後の叫びを上げた。
「こんな結末など……認めん……認めんぞぉぉぉ!」
「もう終わりだ、陽蔵!」
その叫びと共に、陽蔵は黒い霧と共に消え去った。
静寂が戻り、地下空間には温かな光が差し込んだ。
水面に、村人達の笑顔が浮かび上がる。
彼らは解放され、ようやく安らかな時を取り戻した。
結がそっと呟く。
「これで、本当に救えたのね」
愛菜がノクスを抱きしめながら微笑んだ。
「にゃう!(よかったな、しゅー!)」
「ノクスがしゅーくん良かったね!って」
「うん、ノクスありがとう」
修も深く息をつき、未来への一歩を踏み出した。
浜野先生は少しだけ微笑み、こう言った。
「みんな、よくやったよ。」
◆
村の呪いが解けて、俺達の戦いは終わった。
大学のキャンパスはいつも通りの朝を迎えている。
蝉の声が夏の空気を揺らす中、俺はゆっくりと歩いていた。
人は誰だって間違う。間違いを繰り返す生き物だ。
でも、俺達は違う。
「結先輩、今日も心スポ行きますよね?」
「修君大丈夫?疲れてない?」
「大丈夫ですよ!」
「にゃう(怖い事はもう終わったにゃ)」
「そうだね、ノクス」
あの村で起きたことは決して忘れない。
でも、俺達は同じ過ちを繰り返さない。
浜野先生が遠くから静かに見守る。
「お前達は強い。恐怖に負けず、最後まで立ち向かった」
間違いだらけの世界でも、俺達は正しい道を選ぶ。
それが――俺達の、誇りだから。
さあ、また日常が始まる。
けれど、もう何が来ても怖くない。
俺達は間違えない。絶対に。
幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜
屍村編ーー完ーー
そしてメインストーリー次回予告!
第20話『図書室の昼下がり』
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