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黒の創世  作者: uyu
四章 開戦

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13/24

開戦①

 「遂に見つかったね」

 「二千と五百の時を越えて」

 「でもあれは今じゃ半分だよ」

 「だけど大部分は彼が持っているからね」


 「魔力のこと?」

 「そうでもあるしそうでもないね」

 「たましいだよ」


 「あくまはまたくるよ」

 「あしたがいつもくるように」

 「なんかいだってね」


 「神さまはどうかな?」

 「むかしむかしにこの地でうまれた神」

 「まだみつからないよ」

 「もしかしたらもう来ないのかもしれないね」

 「だけどぼくらは見てるだけ」

 「やくめは終わっているからね」


 「かたわれは?」

 「いまもないているよ」

 「今も囚われているね」


 「でも聞こえる」

 「きこえるね」


 「神と双子は分からないけれど」

 「竜はもうすぐ目を覚ます」

 「楽しみだね」


 「でもけっきょくいつくらいになるのかな」

 「さぁ」


――――王国・王都【サンクチュアリ】――――



 ゼオン達がアークボルトの策略によって、遠く離れた教国まで転移させられて翌日。

 未だ、彼等がダンジョン『魔モノ達の塒』に囚われている最中だ。


 それと時を同じくして、(みやこ)の数ある酒場、その一つでの事。


 「聞いたかい!?この国が冒険者ギルドと戦争するって話!」


 「聞いた聞いた。耳にタコが出来る程なぁ……」

 「しかしなんでまたギルドと?いまいち意味が分からないわ」

 「そりゃあ皆、そう思うだろうよ……でもなぁ。なんにしたって王が決めたなら従うしか無い……よな」

 

 「……なんでも、今度の戦はこちらに正義がないそうじゃぞ」

 「どういう事だ?じいさま。その話は知らねーぞ」

 「儂も聞いた話じゃがな。この戦に大義名分などありゃあせんのじゃよ。王国とギルド間にも、目立った問題などまるで無い。むしろ、関係は良好だったらしい。じゃが聞くに、王の独断で……しかも突然に決まった戦じゃそうな」

 「…………はぁ!?なんだぁ、そりゃあ……!!」


 寝耳に水。

 緊張が高まっている国民達にその情報の真偽等、関係が無かった。

 彼等、一般の国民にとっても理解し難い王の行動に酒場は一瞬にして、王……いや、国への非難の場へと変わる。


 「ふざけんじゃねえ!何が欲しいのか知らねぇが、そんなのに付き合わされんのか!?俺達は!」

 「まぁまぁ落ち着きなよ、お前さん。(いくさ)ったって私達が戦う訳でもないんだろう?」

 「馬っ鹿野郎!結局割を食うのは俺達だろうが!」


 「そうだ!それに、冒険者ギルドには俺達王国だけでなく世界各国が助けられて来た筈だろ!?」

 「ギルドと戦争をして、王国に何の益があるってんだ!」


 大声を張り上げ不満を隠そうともしない者達に、そうだそうだ!と声を合わせる群衆。

 騒ぎは店内に留まらず、店の外にも波及していく。


 「噂なら俺も聞いたぞ!そもそもが、どこぞの大貴族様がギルドに対して私利私欲に走ったのが原因だってなぁ!」

 「あぁそうだ、僕も聞いた!()()()()()近くが領地のあいつだろう!?」

 「馬鹿の尻拭いをさせられんのか?どうなってやがる!」


 平民の貴族に対するこの様な物言いは、王国では本来、侮辱罪に当たる。

 重罪だが……今やこの場に、誰一人としてそれを咎める者は居ない。


 「んじゃあ結局、それを隠したい王の暴走って事か!?」

 「ギルド相手に不毛な戦を仕掛けて迄、隠したいのか?……自分達の不備を!?」

 「そうに決まってる!じゃなきゃあ、なんで冒険者に対して戦いを起こすんだ!?こんな戦、やってられっかよ!」


 騒ぎは益々大きくなり、もはや暴動も待った無しの熱量だ。

 しかしそれも、国民の感情を考えれば当然の事ではあるが。

 だが騒ぎが大きくなれば当然、収めようとする者達が出張ってくる。


 がしゃがしゃと、鉄が奏でる鈍い音を立てて歩いてくる集団。

 王国軍・王都守護、第五軍団所属の兵士達だ。

 先頭を歩く、この部隊の指揮官らしき男が声を張り上げる。


 「静まれ、静まれ!この集会を至急解散し、各自家に戻るように!現在は緊急時であり、これは王命である!」


 「おい冗談じゃねえぞ王国軍!お前等は何を隠してんだよ!?」

 「そうだ!説明される迄、俺達はここを動かないからな!」


 「貴様ら国民に説明出来る事は今、無い!どうか大人しく帰ってくれ!」



 彼等、王国軍も……貴族・平民関係なく、王国に住む国民である。

 彼等の家族も仲間も友も皆、この国に生きているのだ。

 しかし王に逆らおうとも、どうなる訳でもない。


 ……元々、王国軍というものは王国貴族のみで構成される軍団だった。

 その慣例を変え、市井からも兵士や騎士を徴用出来る仕組みを作ったのが現国王『ドニ・マルタ・ドルバード』である。

 勿論、誰でもホイホイと入れる訳では無いが……仕組みを作った当時は世界を巻き込む大戦中であり、人員が不足していた事もあった。

 それに門戸を広げ、平民でも兵士になれるこの仕組みは確かに良策ではある。


 王の狙いは人員の確保、そして人材の確保。

 ……だけでは無かった。

 長らく続く王国の歴史。その結果出来てしまった、貴族と平民間の軋轢。

 その()()の一助になれば、と……そう願い、作った仕組みでもあった。


 この世界のどの時代を紐解いても、戦いに彩られている。

 そんな世界にあって、国防を任せられる貴族が強権を持つのは必然だった。

 人は権力を持てば必然、それを使うもの。

 その対象はいつでも、()()を持たない者達だ。

 線引し、虐げ、絞り上げる。

 それは、王国にあっても変わらない。


 そんな歴史を変えたいと願い尽力してきたドニは、正しく賢王であった。

 その賢王が引き起こした今回の事態。

 王の心中は……未だ誰にも、謎に包まれていた。



 「ふざけんな!納得いくまで帰れるかよ!」

 「そうよ……!こんな訳の分からない戦に、息子を送り出せって!そう言うの!?あんた達は!」

 「あぁ!いくらギルドったって、敵には容赦無いだろうよ!冒険者を甘く見てんのか、王国は!?」


 「黙れ!黙るんだ!!」


 「それでどうなる!?黙って従えってか!?」

 「到底、敵とも思えない冒険者達を恨めって言うのか!意味が分からない戦をやった結果、家や家族を失って!?」

 「ふざけないで!そんなのごめんだよ!!」


 指揮官らしき男……部隊長は、遂に言葉に詰まってしまう。

 彼が率いる部隊は、その全員が平民出身の兵で構成されている。


 言葉に詰まったのは、彼にとっても、いや兵士達にとっても……今回の戦に納得がいっていない事もある。

 が、何よりも大きいのは……

 今、眼前で叫ぶ国民達の心情が、痛いほどに分かる事。

 そういう意味で言えば……、軍に平民を組み込んだのは、弊害なのかも知れない。


 軍というものは時と場合によっては、武力に依る圧力を以て、自国民すらも黙らせる事が必要な事も十分にあり得るからだ。

 ()()()()事は……やはり貴族のほうが向いているのは言うまでもない。


 しかしここで、民衆に押され気味になっていたこの部隊に助け舟が来る。

 平民と貴族という枠すら超えて、王国を象徴する存在。

 国と民の守護神、王国の希望。


 ――王国騎士だ。


 「一体、何の騒ぎですか!今は国中が厳戒態勢なのは知っている筈です!」


 たった一人で、しかし堂々とした佇まいで歩いてくる女性。


 王国騎士『リエット・リーフセイム』。二十五歳。

 王国軍・第五軍団所属の騎士だ。

 彼女は騎士でありながら、王国騎士が着用する鋼鎧を着けていない。

 代わりに、王国の紋章<飛び立つ鷲獅子(グリフォン)>が胸部分に大きく刺繍された短めのローブを着用している。

 そのローブは戦闘時、動きやすい様に袖部分は切り取られ、腿の部分にはスリットが入っている。

 背には彼女の武器である大きな魔法杖を背負っている。


 「……騎士様!」

 群衆が、息を揃えた様にして一斉に彼女の方を向く。


 「ねぇ、騎士様!この国は一体どうなってしまうんだい!?王様はどうしてしまったんだい!私らは……!」

 「なぁ騎士様よ!俺達みたいな……馬鹿にだって分かる!例えこの戦に勝てたって、()()()()地獄だ!この戦の意味はなんなんだ!?」


 「――静まりなさいッ!!」


 ピーン……と、一瞬にして静まり返った場に緊張が走る。

 「例え何があろうとも、貴方達国民と国、そして王は!私、そして我等王国騎士と王国軍が守り抜きます!!その為に我等が居る!その為だけに!!」


 リエットは背から杖を抜き、天高く掲げる。

 「剣と、杖とッ!王国に誓って!!」


 彼女の覚悟を見た民衆は、誰からともなくその場を離れ家路に着く。

 それぞれの不満と疑念、不安を飲み込んで。

 それ程に、この国での騎士という存在は……絶対だ。


 彼女だけでなく、王国騎士各々が、王国中を飛び回りこの様な役に駆られていた。

 しかし、それでも徐々に抑えきれない感情が、この短い期間で国民に高まってきているのも又……事実だ。

 それくらい、誰にとっても理不尽で、理解出来ない王命だった。


 ……だが本来は、開戦を命じた理由等は極秘であり、決して国民に知られる筈も無い事。

 つまり。

 既に戦いは……始まっている。


 リエットがその場に居る部隊に指示を出す。

 「周辺の警戒と、怪しい人物の捜索・情報収集に当たりなさい!急いで!」

 「はっ!!」


 (……もう、こんな時に団長が居ないなんて……!)


 第五軍団長『ダグニー・シルフィード』。

 彼女は今、遠く離れた教国の地に居る。

 加えて、先日に第五軍副団長へと任命された騎士『エルネア』も、未だ魔国にて傷付いた身体の治療中であった。

 当人のたっての希望により、復帰を早める為の試験的な秘薬の被験等を行い、もう間もなく治療を終えるとはいえ……完治にはまだ数日は掛かる見込みだ。

 畢竟……組織の頭を欠いた第五軍団は現在、窮地に立たされていた。


 (()()()()、偶然では決して有り得ない。()()()()()()何者が……)

 また別の場へ、次の騒ぎを抑えに向かいながら、リエットは考えを巡らせる。



――――――――



 ここで、第一から第五の各王国軍における所属騎士と兵士の数、そして各々が主に守護を請け負っている地名を紹介しておく。


 第一軍……団長『ライアン・テグジュベリ』以下、騎士・二十名。兵士・三万人。

 魔国内・王国統治【デカール】を守護。


 第二軍……団長『サイクス・イルベルグ』以下、騎士・十五名。兵士・五万人。

 王国南方都市【バウム】・王国南東都市【ジーランド】を一括守護。


 第三軍……団長『イルセン・ラグフォード』以下、騎士・十名。兵士・四万人。

 王国北方都市【スノ】・王国中央都市【ハイランド】を一括守護。


 第四軍……団長『ライオット・ランサー』以下、騎士・五名。兵士・三万人。

 王国北東都市【シュウイン】を守護。


 第五軍……団長『ダグニー・シルフィード』以下、騎士・五名。兵士・五万人。

 王都【サンクチュアリ】を守護。



 この他に、王と王族の守護を直接に司る騎士【ロイヤルガード】が十数名、存在する。


 これが、王国の全戦力である。



――――――――



 先程騒ぎがあった酒場の、裏路地。

 影に隠れて良く顔は見えないが、その体付きからして恐らくは男性が、誰かと通信魔法で話している。


 「――――あぁ。扇動は今のところ、上手くいっている」


 〘もう、王国軍には勘付かれているか?〙


 「流石にな。これで不審に思わぬ様な間抜けしか居ないなら戦にすらならん」


 〘良い所で切り上げろよ。今は開戦前夜だ……捕まればどうなるか〙


 「誰だと思ってる?そんなヘマやらかす訳が……ん!?」


 男は気付く。

 薄っすらと壁に写る己の影の、小さな異変に。

 良く見れば、己の影に重なる様にもう一つ、小さく動く影があった。


 「何奴!?」

 男が振り向きざまに、手に持つ刀を横一線に薙ぐ。

 しかし手応えは無く、刀は空を切っただけだった。

 「帝国の忍?だっけ?その格好」


 「貴方、帝国出身でケイブ支部所属のBランク冒険者『さいち』で間違いない?」

 そこに居たのは水人形とでも言うべき物体。

 ふよふよとした水の体で、何処から発しているのか分からない声で男に問いかける。

 「あ――。……いや、言う訳が無いだろう!」

 「答えてるようなもんじゃないの」


 水人形がそう喋った次の瞬間、その体が溶け出した……と思いきや一気に広がり、男の全身を水で覆う。

 男は一言も発する事も出来ずに呑み込まれ、水と共に壁の中へと消えていった。


 そうして、路地裏には誰も居なくなった。

 男が手にしていた、老人の顔を模した皮の様な被り物を残して。



――――王国・辺境都市【ケイブ】――――



 冒険者ギルド・ケイブ支部。

 この建物の二階、大会議室では今、緊急の会議が昼夜を問わず続いている。



 中に居るメンバーは


 ・冒険者ギルドマスター・Sランク冒険者序列五位『サラ・ワンダー』


 ・ケイブ支部長『マイルズ・グリンエア』


 ・獣人国支部所属・Sランク冒険者序列七位『ゲンオウ』


 ・ケイブ支部所属・Aランク冒険者『ザイン』通称【影】


 ・ケイブ支部所属・Aランク冒険者『ミレイア』


 の五名。



 「……くぁ〜~…………。……むぅ。……状況は?」

 寝不足からか、椅子に座ったまま居眠りをしていたサラが忙しそうにしているマイルズに問いかけた。

 マイルズはペンを取る手を止め、サラの質問に答える。

 「はい。取り決めに従い、ギルド側から王国に対して開戦の理由を問い質し、同時に世界各国に対して王国の不義理と開戦の是非を問いました。が、しかし……」

 マイルズが口ごもる。

 「ふん……。よい、よい。大体分かったからの」

 「……は」


 サラの予想通り、王国は全ての回答を拒否。

 そして王国以外の各国の反応も、芳しいものでは無かった。


 ギルドとしての初動は当然、戦の回避だった。

 王国側に立ってみても損得の差が大き過ぎる、益の無い戦。

 ギルドにとってみれば尚更、損しかない。

 戦の回避に動くのは必然である。


 ドルバード王の望みは何なのか。それさえ分かれば戦の回避は容易だと、当初サラは考えていた。

 少しばかりギルドが損を被ろうとも、戦が回避出来るならばそれで良いと。

 だが……あの時、この大会議室でドルバード王が宣戦を布告した時から、いやその直前から。王には取り付く島もなかった。

 まるで……()()()()()()が目的だとでも言う様に。


 (いくらなんでも、そんな筈が……あるものか)


 サラは何度も、頭の中でその可能性を否定していた。

 賢王と呼ばれて久しいドルバード王。

 その異名こそ【激烈王】という物騒な名前だが、それは大戦中に呼ばれたもの。

 大戦後には内政に力を入れ、外政にも精を出し……国の内外から、大戦の影響を拭い去ろうと尽力した。

 そんな彼だからこそ、有り得ないと思うのだ。


 誰よりも王国を愛し、誰よりも民を慈しんできた。

 そんな彼を、知っているから。


 だけれども、何度、否定しようとも。

 ()()以外の理由が浮かばない。

 王の、世界に対する野心を……否定出来ない。


 (それしか残らんではないか。……王よ)

 サラは強い憤りを感じる。

 (いや、もしやそれすらも民の為なのか?だとしても……)


 で、あれば。

 ギルドとして取る行動指針は決まっている。


 世界に対する危険の排除だ。


 元々、ギルドは政治や戦争には関わらない。

 それが冒険者ギルドの()()()であるサラの方針であり、これまでの、そして今現在も多くの冒険者の賛同を得ているからだ。

 だが……身に降りかかる火の粉を払い除けない馬鹿など居ない。

 冒険者の【自由】を侵害する敵がいるならば、排除するのみだ。


 勿論、民間には極力……、被害を及ぼさないように。

 冒険者ギルドの矜持を以て。


 「ま……そろそろじゃな」

 「ギルド長……」

 「仕方あるまい?マイルズ。私とて家を守るのが先決よ」

 「…………はい」

 サラが椅子に座り直し、姿勢を正す。


 「ザイン。各都市の状況は?」

 「は。……某の部下達による情報操作……いや()()()()()は功を奏した様子。民草の暴動に迄は至らぬものの、厭戦ムードは広がりを見せている模様。少なくとも、この戦に民兵等は立ち上がらぬと」

 「ふむ。ミレイア、冒険者達の集まりはどうじゃ?」

 「えーっと……Aランクが200、Bランクが5000。それ以外が合計で……ん……んん?」

 「?」

 ミレイアは手元の資料をガサガサと漁る。

 しかし目当ての資料が見つからないようで、

 「あれ〜?おっかしいなぁ……ね、ゲンオウ。分かる?」

 横に座るゲンオウに話を振る。


 「む……」

 ゲンオウは立ち上がり、ゆっくりとした口調で話を引き継ぐ。

 「約……80000人、だ」

 そうして告げた後、ゆっくりとした動きで再び椅子に座る。


 それを見届けた後ミレイアは大きく頷き、

 「ですって、マスター!」

 「かかっ。全く……お主は変わらんの」

 ミレイアはぺろっと舌を出して誤魔化す。


 「なるほどなるほど。85000人程か……まぁ思ったよりは少ないが……なんとかなるじゃろ」

 「なにぶん急な話ですからね……。その中で今、このケイブに居る者は7000人程になります」

 「かかっ!重畳じゃな。これで……あぁ、もう一つあったわ。Sランク達はどうじゃ?誰が来る」


 「上位陣は全員不参加の様です」

 「うむ……ま、そうじゃろな。ルイズはもとより、アリスは黒の小僧を追って不在。アークボルトは暫く顔を見せんじゃろうし……」

 「そして残る1人ですが、未だクエスト中だそうです」

 「あいつはどっちにしろ()んじゃろ。戦争なんぞにはな」

 確かに、とマイルズは頷く。

 「続いて下位陣ですが、此処に居るゲンオウは参加。グウェインは国の事情により辞退。【爆嬢】……ソフィアは間に合えば参加すると」


 「ん?あやつもクエスト中だった筈じゃが」

 「えぇ。なので間に合えば……と。なんでも〘ギルドの危機と聞いたら黙ってられないもん!急いで片付けて行くから☆〙……と、言っていたそうで」

 「相変わらず可愛い奴じゃの」


 「ま〜……取り敢えずソフィアの事は置いといてじゃな。肝心要のカイルはどうしている?」

 その名を聞いて、マイルズは難しい顔を作る。

 「カイル君は……ササラさんの無事を確認しない事には何とも……ですね」

 「ササラ・アースランドは黒の小僧……ゼオンと共に教国のダンジョンに飛ばされたんじゃったか」

 「えぇ。その情報を聞いた後、彼は【精霊女王】と【銀氷】に同行を直談判しました。にべもなく断られたそうですが」


 「ルイズじゃからの」

 「そうですね」


 「ん〜……っ!……そういえばマスター?一緒に飛ばされた中に【風姫】がいるんでしたっけ?」

 ミレイアが椅子の背もたれに体を預け、思いっ切り伸びをしながら聞く。

 「そう聞いておるの」

 「気になってたんですけど、それってどうしてです?たまたま?」

 「……色々あるんじゃろ。あの小僧の周りは、な」


 ミレイアは目を輝かせる。

 「え〜っ!?それってアレですか!?そうなんですか!?」

 ガタッと音を鳴らし、机の上に身を乗り出す。

 「良いなーっ!ゼオン君、でしたっけ?私、この前見かけたんですよ!確かに格好可愛い男の子だったなぁ……すこーしだけ子供だけど有りっちゃ有りですね!ね、マスター!」

 「私は何も言っとらんぞ」

 「いやぁ、無理があるんじゃないですか……ギルド長」

 「某も同意する」

 「いやホントじゃからな」


 「じゃけどミレイア?あの小僧を狙うのは勧めんぞ。これは親切心じゃ」

 「えー?どうしてですか?」

 「あの小僧の後ろには、世にも恐ろしい魔人が控えておるからじゃ!かっかっ」

 ヒュッ……と喉を鳴らした後、ミレイアは無言で椅子に座り直した。


 「……まぁ()()()の話は置いといて」

 「んむ」

 「実際、彼って強いんです?どっかで聞いた話じゃあSランク相当はありそうって」

 サラは右手で己の髪を弄りながら疑問に答える。

 「()()()()()()()()()()()()()ならの。総合的に見た実力は……ま、Bランク上位からAランク下位ってとこか」

 「えー。そんな事あるんですか」

 「……ん?……何がじゃ?」

 「だってその2つが人並み外れているんなら、それだけで大抵の相手はゴリ押しでいけるんじゃないです?それこそ登録後即Sランクとか有ると思ったのに〜」


 「経験と修練が足らんのよ。あの小僧にはな」

 「……む〜?」

 「ピンと来んか?ミレイアよ」

 「だってだって……」

 「かかっ。ならお主にも分かりやすく簡潔に説明しよう。例えばじゃな」

 「ふむふむ」

 「手札が少ない格上の相手とは……()()()()()()?お主から見て決して勝てないと、そういうものか?」

 パチパチと瞬きするミレイアに、更に問いかける。

 「お主はあの小僧を見て、負けると思ったかの?」


 「なるほど!そういう事か〜」

 「そういう事じゃ」

 ミレイアは納得がいったのか、うんうんと頷く。

 「それに、登録と共にSランクなどギルドの歴史でも1人しか存在せんよ。それこそ【銀氷(アリス)】だけじゃ」


 「で……ギルド長?話が逸れましたが……」

 「おぉ、すまんすまん。カイルな」


 「えぇ。前述の通り2人に同行を断られた彼は自身に出来る事が無いと分かると、各ダンジョンでひとしきり暴れ回った後、現在自宅に閉じ籠もっています」

 「相変わらず、案外ナイーブじゃのー。妹の事になると」

 サラは嘆息する。


 「カイルの生い立ち、今回の因縁。……それらを考えれば奴の存在はかなり重要になると踏んでおるのにの」

 彼女はそう言った後、遠い目をして過去に思いを馳せる。

 その深い眼差しには一体、何が映っているのだろうか。



――――――――



 ケイブの街、その中心部。

 ギルド支部の建物から少し離れた場所に、Sランク冒険者【灰燼】カイル・アースランドは二階建て地下付きの家を構え1人、暮らしている。

 ちなみに近くには妹、ササラが住む家も在る。


 その家の地下室で今、カイルは自責の念に駆られていた。


 「俺様は……」


 「俺様はなにしてやがんだ。こんなとこでよ……」


 床に座り込み、下を向いたままずっとこうしている。

 情けない、と自分でも思いながらも……

 戦闘以外には能の無い自分には、ササラの為に今、何も出来ない事を分かっている。

 ササラの無事を、祈るしか出来ない事を。


 「ごめん。……ごめんな…………」


 「父さん……母さん」



――――――――



 時は十年前に遡る。


 世界は大戦末期。

 その中にあって王国軍は大戦に参加しながらも、自国内の脅威とも戦っていた。

 王国ではそれ以前から内戦が永く続き、現在でもその火種は燻っている。


 その相手とは『アースランド族』。

 王国が在る大陸の東側、大きく広がる丘陵地帯に住む民族だ。

 この民族が住む地一帯がアースランド、と呼ばれる。

 カイルとササラの故郷でもあるこのアースランドの地は未だ王国に呑み込まれた事は一度もない。

 ただ……局所的に言えば、幾度となく、王国による侵略に晒され、取って取られてを繰り返している。

 その結果、最盛期と比べれば、アースランドの土地は大きく減った。


 血塗られた……王国とアースランドの歴史。

 そしてこの年、大事変が起こった。


 王国における事件の名は【第四十三次・辺境西方の戦い】。


 アースランド側から見た事変の名前は……


 【西方大虐殺】だ。



 ――その年、長引く大戦の影響も有り、そして予て狙う、彼の地に眠る資源の確保を目指し……今までに無いほどの勢力を以て本格的に大陸統一に乗り出した王国。

 実に総勢二十万の兵をアースランドの地に送り込み、短期間で攻め滅ぼそうとした。


 対してアースランドの兵力は一万人にも満たない。

 だが、かの民族にはある特徴があった。

 それは、アースランドに暮らす民、その大多数が生まれつき魔力が強い、というもの。

 その中で特に魔力が強く、更に火の魔力に恵まれた者は『ホープ』と呼ばれる。

 カイルとササラの両親は、共にホープ……一族の実力者だった。

 アースランド側は一万人の兵力の内、十分の一をこのホープ達で固めている。

 ホープの総数は、凡そ七万人が暮らすアースランド全体でも、たった千人と少し。

 しかしその程度の数でも、容易に戦局を進められる程に……彼等の力は強大であった。


 この事件の日迄は。


 迫る王国軍を見ながら、一族の長老は各実力者達に指示を出す。

 指示というよりも、いつもの様に力で追い返せ……と。

 大量の兵を連れてこようが、所詮は()()()()だと。

 いつもなら、それで済んだ。

 圧倒的な個の力を見れば()()()()()()()()()

 だが、この日は違った。


 いくら被害を出そうとも、強引に進んで来る。

 屍の上を歩いて来る。


 敵の覚悟を知った長老は、指示を出し直した。

 これは、生き残りを掛けた『全面戦争』だ、と。

 長老の指示を受けたホープ達は戸惑いながらも覚悟を決め、敵の殲滅に掛かった。

 ホープでは無い他の民達も、それに続く。


 戦いは熾烈を極め……双方に甚大な被害を出した。

 最前線で戦うホープ達だけでなく、他のアースランドの民、戦闘要員達にも。

 何よりも多かったのは、王国軍の被害だった。

 開戦から一時間も経たぬ内に、なんと王国軍は二万人強の死傷者を出す。

 草が生い茂り、なだらかな斜面が続く丘陵は血と死体で埋め尽くされ、見るに堪えない惨状となる。

 だが王国軍は、決して攻めを緩めはしなかった。

 止む事の無い攻撃と大軍に、アースランド側は徐々に劣勢へと追い込まれていった。


 ……この時、戦う彼等から、やや離れたアースランドの里の一つには五千人程の非戦闘員達が居た。

 戦えない老人や、あまり戦闘魔法、武器の扱いには秀でていない人々。

 そしてカイルやササラを含む、多くの子供達が。

 長老や他の上層部は、いつもの事と高を括り……膨大な数の王国軍を見ても、遠く離れた場所に在る別の里へ人々を避難させる事を怠った。

 これまでとは違う王国軍を見ても尚。

 ……アースランド側に、十分な情報伝達手段の構築とその運用能力が備わっていれば又、違ったのかも知れないが。

 戦闘に特化した魔法しか発達していないアースランドでは、それも無理な話だった。

 生まれつき、無属性魔法が得意な者も居るには居るが……極少数のみだ。

 兎にも角にも……油断、慢心。その他様々な要因が複合し。


 ――更なる惨劇を生む引き金となった。



――――――――



 「俺も行くよ!俺だってもう戦えるんだ!」


 カイル・アースランド、五歳。

 彼は二才になる妹を連れ、大人達が集まる建物へ来ていた。


 「なぁ!良いでしょ!?みんな!」

 「いかんと言っておるだろう……カイル」

 「……叔父さん、なんでだよ!?俺はここの誰より強いんだぜ!」

 「だからこそ、お前には役割が与えられたのだ。この里の皆を守るという役割がな」


 カイルは傍らの妹に目をやる。

 ギュッと握られた手からは、守らなくてはならない温もりを感じた。

 だが……


 「……だけどさ!今度の王国軍は数が多いんだろ!?俺、戦いに出てるみんなも心配なんだよ!だから……!」


 「だから、誰かササラを頼むよ!こいつが一緒だと何も出来ないじゃんか!くっそ……やっぱり、妹なんて邪魔なだけだ……!」

 未だ幼く、いまいち兄の言葉が理解出来ないササラは兄の顔をジッと見上げるだけだ。


 「こ……ンの、馬鹿者が……!滅多な事を言うなッ!!」

 カイルは叔父の大声に、身を竦ませながらも反論する。

 「……なんだよ!!俺は誰にだって負けないくらい強いんだ!なら俺が戦いに出たほうがみんなのためになるだろ!?」

 「儂には分かるぞ、カイル!お前のそれは優しさでは無く、遊びの延長線上に有る好奇心だ!……違うか!?」

 「そんな事ねぇっ!!もしそうでも、俺の言ってる事はまちがってないだろ!」

 「そんな事も……!間違いだと分からん程に子供だから……いかんのだ!!」


 その言葉にカッとなったカイルは、ササラの手を強引に振り解く。


 「なら、もう良いよ!!みんなの許しなんかいるもんか!!俺は勝手にする!」 

 「待て、カイルッ!!!」

 勢いよく扉を開けて、外へ飛び出そうとするカイルの足元へササラが駆けよっていく。


 「ぉ……にぃちゃん……」

 「……来るなッ!!()()()()()なんだよ!!」


 兄の大声に、目に涙を浮かべ……今にも泣き出しそうなササラ。

 その顔を見て一瞬、足を止めたカイルだったが、振り切り外へ飛び出していった。


 「あの馬鹿者が……!!」



 外へ出て、覚えたての浮遊魔法を使い空高く浮かび上がったカイルの目に飛び込んできたのは異様な光景だった。

 見慣れた緑色の風景が、見渡す限り赤黒く染まっている。

 それが血の色だと気付くのに……時間は然程掛からなかった。


 「なんだ……!?なんだよ、これ……!!」


 自分が知っているいつもの戦いなら、怪我人が少し出るくらいの……死者など滅多に出ない、小競り合いで終わる筈のぶつかり合いだ。

 今回も、いくら敵の数が多くとも……すぐに決着が着くと、そう考えていた。


 「これが、戦…………!?」


 想像した事も無い、死屍累々を見て……

 これが……本当の戦なんだと思い知らされる。


 「くそっ!!父さん、母さん……何処だ!?」

 その時、遠くに一際大きな戦塵が巻き起こる。

 「……あそこか!?」


 まだ不慣れな魔法で、高空をふわふわと……ゆっくりとした速度で向かう。

 その時、カイルの丁度真下を通る王国の一団には気付かずに。


 二十分程掛かって着いた現場には、目当ての両親は居らず……代わりに、カイルは知った顔を見つけて下へと降りる。


 「義兄(にい)さん!」

 「……カイル!?お前、こんなとこで何してる!?」


 カイルの兄。

 といっても義理の兄であり、カイルと十歳離れた実姉の夫に当たる。

 夫妻ともにホープであり、義兄は強力な炎魔法を使って辺りの王国軍を一掃した所だった。


 「俺、みんなが心配で……!」

 年相応に、不安そうな顔を見せるカイル。

 その表情を見て優しく笑った義兄は諭すように話す。

 「……そうか。……でもなカイル、此処は心配無い。俺達が負ける訳無いだろ?……俺とアイツ、2人いりゃあ最強だ。だろ?」

 「う、うん……!でも姉さんは何処にいるの?それに父さんと母さんは……?」


 「父さんと母さんは、皆を別の里に避難させる為に一旦、里に戻ったんだ。予想よりも敵の勢いが強かったからな……だから、お前も戻るんだ……カイル。父さんと母さんは、そこにいるはずだ」

 「でも、それなら俺もここで……」

 義兄は、カイルの肩にポンと手を置く。

 「頼む、カイル。それにお前はササラと皆を守らなくちゃ。特にササラは身体が弱いんだ。……な?」

 カイルはグッと言葉を飲み込む。

 「……分かったよ」

 そしてこの場へ来た時と同様に、空高く浮かび上がる。

 そこから見渡せば、義兄の周りには未だ無数に見える敵の軍勢が居た。

 「またな、カイル!皆に……よろしく!元気でな!!」

 義兄が笑顔で手を振る。

 一度だけその顔を見て、それきり振り返る事無く……カイルは来た道を急いで戻る。


 実のところ、カイルは気付いていた。

 確かに……両親は里へと戻ったのだろう。

 だが、姉は……恐らく無事ではない事に。

 もしかしたら、既に……と。


 アースランドの民の戦法の要は二人以上での連携。

 カイルもそれを叩き込まれて育った。

 だけれども、あの最前線で……義兄はたった一人で戦っていた。

 そんな状況は……両親に伝令を頼んだ以上、おかしい。というより、有り得ない。


 それでもカイルは急ぐ。

 ゆっくりとした速度で、だが必死に。

 まだ、救えるかも知れない命を救う為に。

 後悔の念と、共に。



 その頃、既に事件は始まっていた。

 カイルの両親が戻る前に、王国軍が戦士不在の里を狙い奇襲をかけたのだ。



――――――――



 「何故だ!?何故、この場所が分かった!?ここには不可視の幻影魔法が掛かっていた筈!現に今までは……」

 カイルの叔父が王国軍へと叫ぶ。

 その腕の中には、既に事切れた妻が抱かれている。

 「王国軍を舐めるなよ蛮族共!!」

 「なに……!?」

 「何度も、何度も……!蛮族如きに退けられる屈辱!!それを素直に()()()()()()()()()()思ったのかと聞いている!!」


 「……まさか!?ここ数年の貴様らの攻めの緩さは……」

 「はッ!ようやく気が付いたか?愚かな民族よ!不本意ながらも、お前等は戦闘だけには秀でていた事は認めてやろう!……だからこそ我等は、策を講じるしか無かった事を!!」


 調略しようにも出来ず、武力に対しては堅固なアースランド領に対し、誇り(プライド)を捨てて形振り構わぬ全力での侵略を決めた王国軍の戦略は、まず徹底的な情報収集に努める事から始まった。

 散発的にアースランド領を攻めて、敵の反撃を受けて退却する……フリをする。

 そうして隠術に長けた者をその場に残し、少しずつ……極、少しずつ、情報をかき集める。

 情報の()()を拾った後は、アースランド側に気取られる事の無いように即離脱という行動を何度も何度も繰り返した。

 数年を掛けて。


 そして、今。

 アースランド側に察知されぬ様にゆっくりと集められた数々の情報を以て、確信と共に、王国軍は攻め込んで来たのだ。

 二十万もの巨大兵力は、王国軍の本気度を如実に表していた。


 「大方、大戦の影響でも有ると思ったのだろう!?あの緩さに!ははっ、慣れと驕りというものは!恐ろしいなぁ!!」

 「侵略者共め……!」

 「あぁ?……そうだ!我等は侵略者!貴様らは、ただ奪われるだけの弱者だ!!!それならば精々怨みを残して世界から消えるが良い……!!」


 「貴様らの屍から、貴様らの大地から……吸い上げて!それを以て我等は大戦を勝ち抜き!!そうして王国は勝者となるのだッ!!」

 「くそっ……!(みな)、何処にだって良い!逃げるんだっ!!アースランドの為にも生き延びねばならん!!!1人でも多く……!!」

 「逃がすと思うか!?既に包囲済みだ!……さぁ兵達よ!!良いか、ただの1人も生かしておくなよ!?誇りも尊厳も財産も!全てを奪って……殺せッ!!!」



――――――――



 「なんだ…………これ」


 カイルが戻った時、里は既に壊滅状態となっていた。

 草原の上に立ち並んでいた家々や、そこで暮らしていた人々の影は何処にも無い。


 「なんなんだよ!!?アイツら……何しやがったんだ!?」


 家は打ち壊され、燃やされて形も残ってはいない。

 人々は血を流し、身ぐるみすら剥がされ、無惨にも地面に転がっている。

 五千人が暮らしていた里は、見渡す限り、そこら中から火や煙が上がり……空気中には血と肉が焦げる臭いが充満し、地獄の様相を呈していた。

 堪らず、胃の中のモノを戻してしまう。


 「ぅえ……!ゲホッ、ゲホ……!」


 「っぐ……どうして……!?父さんと母さんが来ていたはずじゃ……」


 「そうだ……!!ササラっ!!」

 里長である叔父の家に置いたままの妹を探しに向かう。

 叔父の家の前に着いたものの、やはり家は壊され……周りにはいくつかの死体が転がっていた。

 「頼む……頼むよ……!ここにいないで……!」

 周りの死体を確認して回る。

 大きさから見て、全て大人のものだった。

 損壊が酷く……誰の死体か迄は判別出来ないが、間違いなくササラでは無い。

 唯一、判別出来たのは叔父。

 叔父は他の大人と比べても、一際身長が高かったからだ。

 

 「うわぁっ!!お、叔父さん……叔父さん……!くっそぉ、ちくしょう……!」


 その時、里の奥……森の方へ続く道の先から爆音と共に煙が大きく上がる。

 「……!?…………まだ生き残りがいる……!行かなくちゃ……!」

 カイルは急ぎ走る。

 襲いかかる焦燥感を抱えたままに。

 「母さん……父さん!!無事でいて……!!」

 そして、未だ姿の見えない妹が両親と共にそこにいる事を期待して。


 「…………ササラ……!!」

 地獄の様な風景が高速で流れていく。

 その中には至る所に、()()()()()()()()()遺体も転がっている。

 それが妹のものではない保証等、何処にも無かった。


開戦②へと続きます

以降はナンバリング表記に変更します

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