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GHOST  作者: 十月 十陽
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筆記者 赤羽幸四郎



 日記を書くにあたって、俺が思い出したことを書いてみようと思った。

 それがまだ小学生の頃でさ。帰り道で子猫を拾ったんだ。ダンボール箱に入ってる子猫。なんと四匹もいたんだぜ。その時のことは本当によく覚えてる。だって可愛かったから、家に持って帰って親に見せたんだ。

 でも親は、猫を家で飼っちゃダメってことで。俺はしぶしぶ、自分の部屋に連れて行ってその日は一緒に寝た。それで明日にはもといた場所に戻してこようって思ったんだ。

 だけど、その次の日は雨で、しかも土砂降りだった。

 そんな日に子猫を外に出すのってあまりにも可哀想だと思ったんだ。寒くて死んじゃうかもしれない。俺の親だったらできたのかもしれないけどな。

 それでも俺にとってとは大切な命で、俺の膝の上でニャーニャー、ゴロゴロ甘えてくれる。それが本当にうれしくて。でも、やっぱり飼っちゃダメなんだ、って気持ちが強かったんだ。

 だから、首を絞めて殺すことにしたんだ。

 一匹の子猫を掴んで首を絞める。そうするとさっきまで甘えてくれていたその子猫は俺に噛みついてきたんだ。俺は思ったね! 命って大切なんだって。その子猫をもう一度掴んで、もう一度首を絞めた。また噛まれた。でも、噛まれた後も俺はその子猫の首を絞め続けた。

 すると、だ。

 ポキって、音がしたんだ。耳に心地のいい音だった。

 俺は自分の幸せに気づいたような気がしたよ。そして他の三匹の子猫も同じように首を絞めて殺した。それをてるてる坊主の代わりにしたら、不思議なことに雨が止んだんだ。虹がかかって空がはれたんだ。奇跡みたいだろ?

 子猫たちは虹の橋を渡って天国に行ったんだ。

 そのことを親に話したら怒られた。

 こんなことしちゃいけません、ってそりゃもう天変地異かってくらい怒られた。

 だから、俺はそんなことをもうしないように、と思って大人になったら警察官になろうって将来を決めた。俺には才能があったらしく、すぐに昇進したよ。

 そしてひとつの事件が俺を待っていた。

 愛すべき事件だ。

 『HERA』の殺人だ。そのほとんどが首を絞めて殺されている。そして、俺が一番感動したのはその死体で、てるてる坊主を作っていたことだ。それからは積極的に『HERA』の殺人に関わった。

 もう最高だ!

 俺は自分が肯定されたような気がして、射精した。

 それぐらい最高だった。

 俺は家に帰って両親の首を絞めてみることにした。そうすれば、あの子猫たちのことを思い出せるような気がした。

 殺すことに不安はあった。けれど、そんなものよりずっと、ワクワクしていたというか、楽しみで楽しみで、もう、仕方がなかったんだ。

 どうやって殺したのかも書いておこうかな。

 最初に母親が帰ってきた。母親は殺さない。あとで殺したかった。手錠で拘束して床に転がしておいた。子供の頃は母親のほうが力は強かったのに、大人になったら簡単に拘束できた。そのことが嬉しくて、つい、母親の耳を切り落としてしまった。叫ぶ声を今でも覚えてる。切り口を舐めてやるとまた叫んだ。よっぽど嬉しかったらしい。

 父親が家に帰って来たら、イモムシになった置物の母親を見せた。すぐに襲い掛かってきたから、首に縄をかけて、締め上げた。

 動かなくなった父親をてるてる坊主にして、母親に見せてあげたんだ。

 そしたら母親は感動で泣き出してしまった。やっぱり俺たちは家族なんだ。理解し合える。最高の家族だ。母親は身体をねじりながら、俺に近寄ってきて、俺の足首を噛んだ。その時の歯形は今でも残っている。これはきっと自分のことを忘れないように、って母親が俺にくれた愛のプレゼントで、最後のメッセージなんだ。

 母親もてるてる坊主にした。

 二人が揃うと、曇っていた空が晴れて、オレンジ色の満月が二人を照らした。

 両親を殺したことは間違ってなかった。俺は、この月が見たかったんだ。ようやく自分を手に入れたような気がして。嬉しい。

 自分が歩いていくべき道を知ることができたんだ。




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