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GHOST  作者: 十月 十陽
開式(調整中)
23/25

開式(17)

 千堂の家までくると、玄関はすぐに開いた。

「入りなさい」

千堂の出迎えてくれた時に見せる怪しい目の色は一生慣れることはないと思う。

 お茶を出されて、千堂は目の前に座った。一瞬目がって、今度はすぐに探偵のほうを見た。

「話があるんだろう?」

「そうですね」

 お互いに腹の中の蛇を探している。目を離そうともしない。前回の話と違って、今回はこちらが殺されてしまうという警戒からだ。

「千堂さんは、あなたは氷室のこと日記に書いていた。当然、港での事件も知っていますよね?」

「ああ、知っている。集団自殺だね。私が彼と話して決めたんだ」

「否定しないんですか」

「そうだね。否定してもいいが……。それを信じないんだろう?」千堂は続ける。「これからが本題だ。どこまで知っているのか。どんな結論を出したのか。聞かせてくれたまえ」

「私たちが欲しい答えを、あたなが持っている、と約束できますか」

「それはキミたち次第だ」

「わかりました」

 探偵は語り始める。

「まず、私たちが氷室という名前を知ったのは日記に書かれていたことでした。日記に従って、私たちは神社村に行き、そこで氷室が首を吊って自殺しているところを発見し、彼が港の事件に関わっていることを知りました」

「その死体が氷室清司だという証拠はどこにあるのかな?」千堂が割って入る。

「名札です」

鞄から名札をテーブルに置いた。

「この名札は氷室が首を吊っていた足元に落ちていました」

 千堂は黙ったまま聞いている。

「もちろんこれだけじゃありません。千堂が神社村で死んでいた、ということを私たち以外にも知っている人物がいます」

「暮屋玲子だな」

 千堂の発言に、喉がつまる。

「そうです。彼女が教えてくれました」探偵は怯むことなく続ける。「彼女の話では、神社村にあった死体は氷室清司で間違いない、と」

「確認が取れているわけか」

「いいえ。これはあくまでも、暮屋玲子を信じた場合の話です」

 千堂は一拍置いて、

「……失礼なことを言った。申し訳ない」

「暮屋玲子が見たのは間違いなく、氷室清司の死体だった。ですが、私たちが見つけた死体が氷室清司だとハッキリとした答えが得られない」

 千堂は黙ったまま、目の光をいっそう怪しく光らせる。

「私たちが見つけた死体は、この名札以外に知る方法がないんです。だから、この答えを半信半疑でも信じるしかない」

「なるほど。確かに、名札だけじゃ目の前にいるのが誰か分からない」

「そして神社村の死体は私たち以外に見つからず、消えました」

「不思議な話だね」

 探偵は一息つくと、また語り始めた。

「氷室がどうして集団自殺を計画したのかについてですが」

「知っているよ。楽園に行くためだ。彼はずっと楽園に行きたがっていた。そしてその方法も見つけた、と。私はそれを援助した」

「倉庫での事件はあなたも関わっていたんですね」探偵が聞いた。

「驚いたかな?」

「少し。でも、これから先の話には何も問題ありません」



「神社村の消えた死体を、まず、氷室の死体だと仮定します。本来なら港で死ぬはずだった氷室は、機械の不具合によって楽園に行くことを阻まれる。彼は、ただ目の前で二十人が楽園に旅立つ瞬間を見ていた。

 その時の氷室の気持ちは、楽園へと旅立っていく魂を見て喜んでいたのかもしれないし、もしくは自分だけが現世に置いて行かれたことに酷く落胆したのかもしれない」

「氷室のみぞ知るってやつだね」

 探偵は頷きも、微笑みもせず、淡々とした調子で千堂を見る。

「そして、ひとりになった氷室は千堂さん、あなたという男のことを思い出す。

 氷室はあなたに会いに行く。自分が見送った二十人。その準備は千堂さんがしていた。自分だけが楽園に行けなかったことをあなたに質問するために。

 しかし、氷室は港からの帰り道で暮屋玲子という女性と出会った。この暮屋玲子は日記の筆記者でもあります」

 探偵と目が合う。

「彼が聞いた暮屋玲子の話だと───氷室清司は弱っていたところを暮屋玲子に保護された。でも、これで終わりじゃない。暮屋玲子も人を殺した後だった。彼女も恐ろしかったでしょうね。自分が人を殺した現場を見られたかもしれないんだから。

 だから、彼女は喜葉くんにした時と同じように、氷室を殺そうとしたはずです」

「しかし、そうはならなかった」

 千堂の言葉に、探偵は頷く。

「氷室清司は暮屋玲子の殺人を目撃した。これは確かです。

 だけど、暮屋玲子は氷室清司を殺さなかった。殺した誰かを処理することだけを考えてた。目撃者を殺すこと、殺害した誰かを隠すこと、この二つの選択で動けなくなった暮屋玲子はどうすればいいか分からなかった。

 そんな時、氷室はこう言ったそうです。

『あなたも楽園の道を知っているんですね』

 氷室はあなたに会いに行こうとしていた。千堂さんならもしかすると、暮屋玲子が殺した死体の処理を手伝ってくれるかもしれないと希望を持って」

「面白い推理だね。その後はどうなったのかな?」

「氷室はあなたに殺され、神社村に吊るされた。

 神社に吊るされた死体を暮屋玲子は氷室清司と言っているわけですしね。警察も氷室が暮屋玲子と一緒に行動していたと思っている。

 おまけに、暮屋玲子が誰を殺したのかまだ分かっていません。

 だから、私たちが見つけたのは氷室清司の死体だった。

 とりあえずここまで。

千堂さん、質問はありますか?」

 探偵の問いに千堂は手を叩いて満足そうに笑う。

「素晴らしい推理だ。実をいうとキミがそこまで推理できるとは思っていなかった。これは謝罪をしなければいけないね」

 ニヤリと笑う千堂に探偵は、

「ありがとうございます」

 感謝の気持ちを込めず、お礼を言った。

「私からは特に何もないよ。先を続けなさい」

「本当に何もない、と?」

「ああ、何もないよ。探偵さんの話は私の好奇心を満たしてくれるものだ。余計な言葉でキミの推理の邪魔をしたくない。さあ、続けて」

 手を招き猫のようにして煽ってくる千堂。そこには一切の雑念がないような気がした。完成したものを壊していく子供のような表情にぞっとする。

 探偵は促されるまま、口を開けた。

「次に神社村の死体を、千堂王壱とする……不思議なことにこれも証明できる。

 氷室が千堂さんに会いに来た理由は暮屋玲子という女性の事を相談するためだった、と先ほど話しましたが、しかし、そこで氷室はあなたに殺されそうになり、抵抗した。そして誤って千堂さんを殺してしまった、というのが次の話になります」

「今度は私が死んでしまっているのか」

「そのことを暮屋玲子に相談しに帰る。もしかするとこの時点で、氷室と暮屋は同じ犯罪をしていた可能性がある。警察はその事件を調べているみたいですから。

 だけど、暮屋玲子と千堂王壱に直接的な繋がりはない。

 繋がりがないこと、存在を知らないこと、それは協力する昼用がないということです。話し合いの結果。氷室は、千堂さんの死体に名札を付け、暮屋玲子と口裏を合わせ、神社村の死体を氷室清司だと思わせたかった」

「今キミたちの目の前にいる私が、氷室清司……その理由は」

「もちろん、お聞かせします」

 探偵は言った。

「港で起こった集団自殺の件で警察は氷室清司を探し回っている。その追跡から逃れるために、自分は死んだことにする。そうすれば解決出来ると踏んだんでしょう。

 もしそうなら、氷室は千堂さんに成り代わって、この家に住んでいることになる。そして私たちが神社村で見つけた死体は、千堂さん、あなたの死体だった」

 そう言って探偵は氷室清司を睨みつける。

「次に問題になったのは氷室清司と暮屋玲子が同じ犯罪をしていたのなら、それは何か? ということです。

 もちろん、暮屋玲子が殺した人間を隠すことだったかもしれません。でも、それじゃあ少し違和感があります。同じ犯罪をするためには、同じ志が必要になる。

 氷室清司にとってのそれは『楽園に行く方法』です。

 暮屋玲子にも何か氷室と似たような志があったのかもしれませんが、それは分かりません。日記には氷室の死体が神社村にあること、それから殺人をしたことしか書かれていませんでした。

 違和感は、暮屋玲子の日記には不自然なほど氷室と一緒にいることの方が多く書かれていることでしょう」

「ん? そんな事が気になるのか? 同じ犯罪をしていたのなら、協力者に感謝の言葉を残すくらい問題ないと思うがね」

「確かに。この日記の特性を考慮すれば別に違和感はありません。だからこそ、問題なんです」

 探偵の強い口調に、氷室は黙る。

「話を戻します。

 氷室と同じ目的。この場合、『楽園に行く方法』ですが、暮屋玲子はこの事を知っていなければいけない。

 だけど、氷室清司も千堂王壱も、暮屋玲子とは初めましてのハズだった」

 探偵は言葉を切って、氷室の動きを待った。

 もどかしい……遊園地開園前のような時間だった。やることもなく手に持った時計をじっと見つめて今か今かと身体が左右に揺れる。

腹の読み合いというより、お互いに無言で威圧しあっているような空気感。

「続けなさい」

 氷室は言った。

 余計なことは何ひとつ言わず、ただ二度、三度頷いただけだった。

 探偵は、氷室のそんな態度が気に食わなかったのか……いつになく厳しい表情を浮かべ、それからゆっくりと呼吸をした。

「私は少なくとも暮屋玲子とあなたが繋がっていたと思っています。そのことについて教えていただけませんか?」

「何も言うことはないよ。彼女のことについては何も知らない。今どこにいるのか……何をしているのか。淋しいような気がするよ」

「それは建前でしょう?」

 氷室の顔にわずかながら影が落ちる。

 探偵は続けた。

「あなたが殺したんじゃありませんか?」

「それどういう……」氷室は声を落として。「説明を求めてもいいかな……?」

「単純ですよ。昨日、喜葉くんが会った暮屋玲子の行方が今も分からない。だとすると、殺された可能性が高いと思うのは可笑しなことですか?」

「なるほど……。それならまず、私と暮屋玲子についてだ。私は彼女と親しいわけじゃない。日記仲間という感じだな。彼女については疎遠になった親戚ぐらいにしか思っていない」

「では、なぜ……彼女に喜葉くんを襲わせたんですか?」

 探偵の声色が変わる。

「昨日の夜。彼は暮屋玲子に襲われ、あやうく殺されるところでした」

「なるほど。タイミングが良すぎるわけだね」

「その通りです。加えて、暮屋玲子は日記を要求してきた。あなたも日記を欲しがっていて、彼女と細い糸でも繋がりがある───推理するには十分すぎると思いますけど」

 氷室はテーブルに置かれた湯飲みに口をつけ、時間をかけてお茶を飲み込む。

「釣り針を噛んだのは……私か」庭から鳥が飛んだ。「すばらしい。本当に見事だ。確かに、私が彼女に頼んで彼を───喜葉くんを襲わせた」

「認めるんですね」

「ああ。そうじゃないとここまで推理したキミにも失礼だろう?」

 続けなさい、と氷室は促す。

 探偵は語り始めた。

「私はどこかで二人の入れ替わりが合ったんじゃないかと思うんです。もちろん、その前段階で入れ替わっていたかもしれない。例えば、港の倉庫の事件───あの場所に行ったのは千堂王壱───あなただったかもしれない。

 喜葉くんが会ったという暮屋玲子は、あなたを氷室清司と答えるかもしれないし、千堂王壱と答えるかもしれない。

 あるいは、知らない、と答えるかもしれない。

 これは現段階ではわからない事ですね。この場所に必要な暮屋玲子はもうどこかに消えてしまったわけですから。

 次の問題はあなたが暮屋玲子を知っていた、という事実です。

 あなたが氷室清司を殺した時に暮屋玲子に会ったのか、それとも千堂王壱を殺した時に暮屋玲子に会ったのか」

「私と暮屋玲子の出会い? そんな事が気になるのか……」氷室は少し考え込んで。「あまり関係無いような気がするな」

「そこに疑問があったんです……本来、千堂王壱と暮屋玲子は出会うことが出来なかったんじゃないか、と」

「だが、現実に私は彼女と知り合っているよ。それをどう説明するんだい?」

「入れ替わり、ですよ」

「最初に言っていたね。では、誰と? 誰が?」

「私の考えは───。

 氷室は千堂に殺された───千堂は氷室になった。

 千堂は氷室に殺された───氷室は千堂になった。

 氷室も千堂も殺された───誰も知らない三人目。

 この三つが頭のなかに浮かんだんです。

 それに、神社村にあった首吊り死体は二人の『死』を意味しているような気がしました。

 一つの死体が二つの意味を持っている、というのは推理というより、子どもの妄想のようだと自分でも笑ってしまいます。

 でも、もしかすると、神社村の死体にも入れ替わりがあったんじゃないか。

 これが私たちの出した答えになるんです。

 私たちは……あなたを千堂とするか、氷室とするか、わからなくなってしまった。だから三つ目の、私たちからは見えない誰かなんだろう、と考えることにしたんです」

「なるほど」

 殺人鬼は小さく首を傾げる。

「ひとつ質問してもいいかな?」

「どうぞ」

 探偵が答えた。

 ありがとう、と殺人鬼はそう呟いて笑みを消す。

「暮屋玲子と赤羽幸四郎。この二人の関係性はキミの推理には登場しなかった。つまり、可愛い探偵さんからすれば二人は全くの無関係な存在……ということになるのかな」

「耳が痛いです」

 探偵は凛として、怯む気配を見せない。

「なぜ二人を事件から外したのか教えてほしい」

 殺人鬼からの詰問。声を低くしてより効果的に。

「分からなかったからです」

「それじゃあ答えになっていないよ。赤羽幸四郎はともかく、暮屋玲子……彼女に関しては推理できる材料があるはずだ。なぜなら───」

 品定めをする料理人のような目つきで、

「キミの隣に座っている彼は暮屋玲子と直接話をしたんだからね」

 殺人鬼は面白がっている。その無味無臭な表情から読み取れるものは、これまで見え隠れしてきた男の本質だろう。

 まだ、相手の仕掛けた罠から抜け出せていないような感じがした。

「見えない誰かを妄想する材料はほとんどありません。ただ、あなたが暮屋玲子の事を最初から知っていた、と考えればどうでしょう? 最初から暮屋玲子と協力関係にあり、氷室と千堂を殺して、最初から二人に成り代わっていたとしたら?」

「最初から知っていた? 私と彼女はつい最近知り合ったばかりだとキミが言ったんじゃないか……何が言いたいのか、さっぱりだね」

「いえ、ただこの突拍子もない妄想もあながち間違っていないのかもしれないという話です。思いついたのはついさっき、ここに来る途中で喜葉くんから聞いた話を基に組立てたものですから滅茶苦茶なのはご愛嬌ということで───」

 探偵は、男に笑いかける。

 それはありえそうで、ありえない話。

「今まで一度も表舞台に上がったことがない人間───暮屋玲子が不自由になった原因。それがあなたなんじゃありませんか?」

「喜葉くん……それ私が言いたかった」

 探偵はキメ台詞を取られて、さっきまでの凛とした表情がしゅんと崩れる。

「ごめん」

「別に……いいけど……」

 はは、と男は笑って。

「つまり、『私』が氷室と千堂を殺し。キミたちの前に座っているということか。そしてその正体は暮屋玲子に密接な繋がりを持っている、と……うん。それはひとつの意見として面白い発想だ。一考の余地がある」

「ただの妄想ですよ」

 膨れ上がった情報を整理するために沈黙が落ちた。

 暮屋玲子と一番近くにいて、氷室でも千堂でもない誰か。その答えを出すために必要だったのは、日記から受ける先入観を消すこと。

 神社に吊るされた死体───氷室清司。彼を殺したいと思う人はたくさんいるだろう。なにせ『楽園に行く方法』が集団自殺というふざけた方法なのだから。彼の口車に乗せられてお金を使った人も多い。その復讐という単純な理由がある。

 小さな町で見つかった死体───誰なのかはわからない。この事件に関係があるかどうかも本当は曖昧だ。しかし、赤羽という名前があったことから少なくとも日記に関わりがあると思った、という推理とも言えない理由。

 最初は日記を書いた誰かがこの事件を起こした、と思っていた。しかし、探偵が辿り着いた答えは日記には何の関わりのない人という、霧に隠れた誰かを証明するものだった。

「まだ、あるのかな?」

「もちろん」

 男の声に探偵が頷く。

「もし私の妄想が正しかったとすれば……氷室清二と千堂王壱は同一犯によるものではなく、別々の人間に殺されたことになります。

 暮屋玲子は氷室清司を。あなたは千堂王壱を殺した」

「なるほど。理屈は分かった。だが、観客の立場から言わせてもらうなら……それは流石に無理があるんじゃないかな」

「いいえ。案外、道があるものですよ」

 探偵は男の声を跳ね返して続けた。

「問題になったのは死体をどう処理するか。これは人を殺そうと思った人たちが必ずぶつかる壁になります。そこであなたは筆記者の一人である、河原田直嗣の犯罪を借りることにした」

「しかし、河原田直嗣の殺人は運頼みの部分が多い。一歩でも間違えばすぐに足が付き、警察に捕まってしまう。そんな不安定なものを採用する理由は───」

 赤羽幸四郎の存在。

「最初の筆記者だね」

「はい」男の言葉に探偵は頷く。「私たちは河原田の住んでいた町で赤羽という名前を耳にしました」

「別人という可能性は考えなかったのかい?」

 千堂の顔つきがだんだんと険しくなっていく。

 納得のいかない曖昧な気持ちが膨れ上がり、焦っているような、苦しんでいるような……これまでの男とは明らかに顔つきが変わっている。

 探偵は眉をひそめた。

「もちろんその可能性は否定できません。しかし、私は信じなければいけない立場にあるんです。あの町に……死体のすぐそばに赤羽幸四郎が来ていた、ということを」

「本当に何の確証もないんだな……」

「あと少し私の妄想に付き合ってください」探偵は続ける。「そこで私はある疑問を思いつきました。もしあなたが千堂王壱の死体の処理に河原田の事件を採用し、赤羽と知り合いだったとすれば?」

「そう考えるなら……確かに、河原田直嗣の事件を採用することができる」

「警察側と直接的な繋がりがあれば、運の要素に頼らなくても確実に再現できますからね」

 それだけ言うと、探偵は一度話すのを止めた。

 目の前の男の顔を観察しているようだった。

「どうです? 見えない誰かは存在しているような気がしてきませんか?」

 質問です、探偵は語気を強めた。

「あなたは誰ですか?」

 質問を受けてから答えるまで、少しの間があった。男は両手で顔を磨く。次に目が合った時にはさっきまで話していた男はいなくなり、殺人鬼の顔になっていた。

 男は笑って、答える。

「私は、GHOSTだ」


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