他人から家族に、そして恋人へ
俺の名前は高城亘、今度高校に進学する15歳だ。勉強は平凡で運動神経には結構自信はあるけど帰宅部希望、顔は割とイケメン寄りだと思う。
割と普通な俺だけど、普通じゃない点としては母親が子供の頃に病死した点と、新しい家族が今度増えることだ。しかも同じ年の女の子がいるということでテンションがあがっている。
両家の顔合わせで会った連れ子の文香ちゃんは笑顔が素敵な可愛い子だった。その笑顔に俺は一気に惹かれて行った。
文香は家事も積極的にこなし両親が二人になれる時間を作れるよう配慮し、俺とも仲を深める為に積極的に関わってきた。
そんな状況で俺は勘違いをしてしまい、文香に襲い掛かってしまった。
文香が必死に抵抗して俺にビンタしたことで正気に戻ることが出来たのだが、俺は文香の態度を恋愛的に変換してしまったのだが、文香はあくまでも家族として仲を深めようとしていたことに文香の涙をみてこの時初めて気づいた。
それ以降両親の前では仲の良い兄妹を演じてくれていたのだが学校では無視されるようになった。
それからは文香に必死に謝罪をしたのだが無視される生活が続いたのだが、ある日転機があった。文香が強引なナンパを受けていたのである。
チャラい大学生っぽい3人組に文香が囲まれてるのを見て怖い気持ちを抑えて割り込んだ。
「ごめんごめん。待った?」
文香も意図に気付いてくれたので、すぐに合わせてくれて
「ちょっと遅いんじゃない?」
と合わせてくれたのでそのまま行こうとしたが、そうは問屋が卸さず
「なにそれ、助けに来たつもり?」
「邪魔してんじゃねえよガキが」
「今すぐ消えるなら忘れてあげるよ」
チャラい3人組に腕を掴まれてしまったので二人で逃げ出すことも出来なくなったので、逆に3人組を抱きつくように押さえ付けて
「早く逃げろ、俺の妹に手は出させないぞ」
「でも‥‥」
「いいから早く行け!」
「分かった警察呼んでくるから」
と言って文香は逃げ出すことに成功した。しかしそれで収まらないのがチャラ3人で
「取り合えずコイツをボコスか」
「舐めた事しやがって」
「妹ってこいつシスコンかよ」
3人組は格闘技でもやっているのか的確に痛めつけられて、警察が来る前に俺は気絶してしまっていた。
目が覚めると白い天井が見えた為
「知らない天井だ」
と、取り敢えず言ってみたら
「病院の天井だし知らないに決まってるわよね」
「文香?」
「はい、あなたの妹です。って何で泣いてるの?」
「文香が会話してくれたのが嬉しくって」
「そう思うなら襲わないで欲しいわ、襲われてから亘の事が怖かったのよ」
「優しくしてくれたから、文香も俺の事が好きなんだと思って」
「家族になったんだから、優しくしようとするのはおかしくないでしょ」
「俺はそれを勘違いしちゃって、今更謝っても遅いかもしれないけど許してもらえないかな?」
「どうしようかしら、私のファーストキス奪われたしなー」
「そっか、俺が文香のファーストキスの相手なんだ」
「なに喜んでるのよ、助けてくれたのに免じて許そうかと思ったけど止めようかしら」
「ごめんごめん、本当に反省してます」
「はあ、本当に反省してるのかしら。まあ取り合えず家族としてやり直しましょう」
完全に許された訳ではないけれど、家族として再出発してもらえる権利が貰えたので殴られた箇所は痛かったけれど、最高に嬉しい気分になれた。
しかし俺はすでに恋愛的に文香を好きになっていたので、文香の気を引くために家族を演じつつ文香の気を引くための努力を始めた。
ボサボサだった髪を切って爽やかな髪型にして、家にいる時もパジャマで過ごすのではなく清潔感のある服装にしてみたり、成績も文香に追いつけるように猛勉強したりと、取り合えず思いつく限りの事をして文香の気を引こうとしたがいまいち上手くいかなかった。
そこで冷静に考えてみて一度襲い掛かった俺は好感度がそもそも低いんだと気付いたため、自分磨きをすると共に文香の高感度を直接的に上げるために行動をしようと思った。
「文香、プリン買ってきたんだけど俺はやっぱりいらないから食べない?」
「う、うん。じゃあ貰おうかな」
「文香、参考書買いに行った時に文香がいつも読んでるファッション誌が売ってたから買っておいたよ」
「じゃあ、お金払うよ」
「いいよ、ついでだったし」
「う、うん。ありがとう」
といった具合に文香の好感度稼ぎをしていたら文香に問いただされた。
「亘さ、もしかして私を落とそうとしてない?」
「そそそそんなことないし、証拠でもあるんですか?」
「すごい動揺するじゃん」
「俺はお兄ちゃんとして頑張ってるだけだし」
「ふーん、まあいいけどさ」
なんとか文香の追求から逃れることが出来ほっとした。
「亘かー、義理とはいえ兄妹じゃなければ有りなんだけどなー」
ちらっと聞こえた声を聞き逃さなかった俺の耳を褒めてあげたいけど、魏兄妹という関係が足を引っ張ってると知って落ち込んでしまった。それと同時に家族としては完全に認められたということに喜びも感じて複雑な気分になった。
そんなモンモンとした気持ちを抱えながら数日が経ったある日、文香が学年一のイケメンと二人きりでいるのを見てしまった俺は、バレれば嫌われそうだとは分かっていながら、思わず二人の後を付けてしまった。
「高城さん、僕と付き合ってほしい」
あの野郎、俺の文香に何を言ってやがる。と思いながらもギリギリ我慢して成り行きを見守ってみたら
「ごめんなさい、好きな人がいるので」
と文香が断った。文香が断ったことに喜んだが、好きな人がいるという言葉が頭を叩きつけた。
「多少顔がいい程度の女が俺を振ってるんじゃねえよ!」
とイケメン君がまさかの逆切れムーブをかましたので急いで文香を守るために走って行った所、文香が殴られる寸前に体を割りこませて俺が殴られることに成功した。
「亘なんで」
「何邪魔してんだテメエ」
「俺の妹に手を出そうとしてんじゃねえ!」
気づいたら見覚えのある天井を見ていた。
「亘起きたの?」
「文香?」
「はい、あなたの妹です。それより気持ち悪かったりしない?」
「なんか頬が痛いけど大丈夫。あれからどうなったの?」
「亘が怒って殴りかかったけど、カウンターで殴られてそのまま気を失っちゃったのよ、それで向こうもヤバいと思ったのか逃げ出したのよ」
「なんかいつもやられてばっかりで俺恰好悪いな」
「そう? 人を傷つけるのに慣れている人の方が私は嫌いよ」
「文香はこういうことがよくあるの?」
「こういうことって?」
「告白されること」
「まあ、それなりに」
「じゃあ、それを防ぐために俺が彼氏の振りをするっていうのはどうだ!」
「私達が義理の兄弟だって知ってる人の方が少ないのに、付き合ったら兄妹で付き合ってるって変な目で見られるだけだと思うけど」
「変な目で見られたら告白されないかもしれないぞ」
「告白もされないかもしれないけど、友達もいなくなりそうよね。馬鹿な事言って無いで怪我治して頂戴」
「良い案だと思ったんだけどな」
「じゃあ今日は帰るわね、数日で退院できるみたいだからその時は快気祝いでパーティーでもしましょう」
そう言って文香は帰ろうとして、帰る直前にこちらに振り返り
「いつも助けてくれてありがとう。大好きよ」
と言って帰っていった、その夜は眠れませんでした。
文香はその後も毎日病院に通ってくれたので
「文香、俺も文香が大好きだ!」
と文香に伝えて見たら
「また襲うつもりですか?」
と笑いながら言われ、告白を躱されてしまった。
それでもしつこく文香に告白すると、
「はあ、私達は兄妹だよ?」
「それでも文香を好きになってしまったんだ」
「身近にいるからだけじゃないの?」
「それだけじゃない、文香は笑顔が可愛くて、優しくて、料理も上手で、気遣いも出来て文香異常の女性なんて考えられない。文香が誰を好きか知らないけれど渡したく無いんだ!」
「そこまで言われるのは嬉しいけど、好きな人ってなんのこと?」
「イケメンに言ってたじゃないか、好きな人がいるって」
「ああ、確かに言ったけど気にしなくていいわよ」
「気にするに決まってるじゃないか!」
「だって、亘のことだし」
「え」
「だから私が好きなのは亘、イケメンだしお洒落だし家事も積極的にやってくれるし気も使ってくれるけど、兄妹だから我慢してるのよ」
「両想いなら話は早い! 義兄妹は結婚出来るから問題ない」
「それは知ってるけど問題ないわけないでしょ、お父さんとお母さんの事も考えないと」
「じゃあ、二人が許可くれたら付き合ってくれるか?」
「その時は喜んで。頑張って一緒に説得しましょう」
その言葉と共に二人の距離が近づき、今度は無理やりでは無いキスをした。
その後俺と文香で両親の説得をしたが、中々許してもらえなかった。最終的には二人とも東京の某国立大に入学することを条件とされてしまった。猛勉強してた甲斐もあってなんとか二人ともA判定を貰えてたので油断せずに頑張りたい。だが親が現役合格を条件にしてなかった当たり交際を認めてくれていたみたいだ。
「文香、模試の結果はどうだった?」
「問題ない感じかな、亘は?」
「流石に難関学部は厳しいけど大丈夫そう」
「お母さんがこっそり教えてくれたんだけど、二人とも合格したら同棲するのを認めてくれるって」
「やべえ、テンション上がる」
両親や文香が上手い事俺のやる気をコントロールしてくれるのでなんとか合格を狙えそうだ。
「私達ほど関係が変わるカップルっていないわよね」
「というと?」
「赤の他人から家族になって仮面家族に代わって家族に戻って次は恋日に」
「更にそこから夫婦になってまた家族になれたら嬉しいかな」
「じゃあ今から子供の名前考えておこっか?」
最初の滑り出しこそ失敗してしまったが、彼女の優しさで何とか関係改善を出来た。自分磨きをしよそ見をせず大切な彼女だけを見ていたからこそ今があると思うので、これからも彼女の信頼を裏切らないように頑張っていこうと思う。
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