王族がカルト宗教にはまってしまい、大韓帝国は滅びに向かってる。金正論はカルト宗教相手に戦いを挑み勝利する
差別をする気は一切ありません。でも、正論を言う気はあります。むしろお願いがあります。
差別しないで下さい。
私は日本人です。差別を受けていると感じて生きてます。
せめてこの片隅で、正論を言うことを認めて欲しいです。
「このハズレ野郎が!」
俺は今、国を乗っ取った化け物……王妃に罵倒を受けている。
「あたしの課金を、邪魔するんじゃねえ! このハズレ文官がよ!」
俺はぎゅっと握り拳を作りながら、頭を下げる。
「すみません。閔妃様。ただ、お願いがございます」
閔妃……大韓帝国(帝国と言うには実は無理があるけど)の王妃に、俺は恭しく一礼する。
「国費を……怪しげなカルト宗教に使わないで欲しいのです」
その言葉で閔妃は悪魔の様な顔を浮かべた。
そして、近くにあった物を手当たり次第に投げてくる。
痛い。
「ムーダンは、我が朝鮮の伝統文化である! それをカルト宗教とは何事だ!」
「その……何事にも限度というものがあります! 国が傾くほどの課金なんてしないで下さい!」
俺は一礼する。
それは全て、生まれた祖国の為に頭を下げるのだ。
隣の国……日本という我が国より歴史がある国の情報が入ってきた。
武士道、というものが日本にあると言う。
内容はどうせかっこつけだと思ってたが、聞いてみると「理不尽な殿(上司)がいて、無茶な政策をやろうとする。逆らったら打ち首になったり左遷させられたりするかもしれない。でも国や人の為に死を覚悟して上司に提言する」という内容だと聞く。
今の俺に……いや、朝鮮にぴったりの言葉だと思った。
俺は朝鮮人だが、先祖に日本人の血も混じってると聞く。新羅のとある将軍に、倭人の血を引く人がいるのだ。
俺は武士道をリスペクトし、閔妃という廃課金者に頭を下げる。
「お願いです。ムーダンというのが……半島の伝統というのは分かります。しかし国が傾くほど課金するのはいかなものかと」
閔妃は、より強い力でものを投げてきた。痛い。
「このハズレ! 死ね! 王族のあたしにお前なんかが逆らうんじゃねえ!」
こうして俺の意見は聞いて貰えなかった。
別にまじないなり宗教なり課金は構わない……それが良心の範疇であるのなら。
だが閔妃は明らかに国費を使いすぎている。
この激動の時代に、どうしてこんなことをするのだろう?
宗主国の大清帝国はアヘンで大英帝国にやられてたこ殴り状態。
日本みたいに脱亜入欧しないと終わるぞ、この国。
そして俺は王宮を後にした。
というより、無理矢理つまみ出されてしまった。とほほ。
クソ塗れの朝鮮の首都を歩く。
日本では『最近朝鮮事情』という本が書かれたと聞く。
はぁ。祖国を愛している俺が物を投げられ、祖国の国費を好き放題国益にならないことに使う閔妃がお偉い様かよ。
革命でも起きないかな?
はぁ。
そんな俺にも、親友がいる。
「よう、金正論!」
正論とは今更ながら俺の名前である。
呼んで来たのは――、
「金玉均!」
「ははは、会えて嬉しいぞ、親友!」
俺の親友。金玉均だった。俺と違って比較的イケメンのナイスガイだ。
俺は身長が高いもののエラが同胞の中でも張りすぎてて、ぶっちゃけ不細工の陰キャである。
「日本に留学してたんじゃないのか!?」
「あぁ。慶応大学ってのを作った福沢諭吉って人に出会った。あの人は凄い」
「大学を作った!? それは凄い一だな」
俺の心は小躍りした。
俺には……いや、俺達には野心があった。
数百年属国だった朝鮮を……独立国にすること。そして日本を参考に維新を起こすことだ。
日本に維新志士、なるものがいるという。
俺達はまさに、朝鮮の維新志士、なのだ。
この国を変えてやる。俺達の……愛国心でな!
俺と金玉均は場所を変えた。彼の家だ。
安酒を取り出し、俺達は談笑をして十分ほどたったら彼が切り出してきた。
「聞いたぜ、お前……閔妃とやちあったんだってな」
重々しい顔で彼は俺に言ってきた。
俺は重く、頷く。
「あ、あぁ」
「止めとけ、馬鹿。死んだお前の親父さんだってお前が幸せになることを望んでる」
「……」
「正論って名前を付けたのはお前の親父さんだ。だが……絶対にお前の不幸を願ってのことじゃない。大きな流れの中では正論を控えなきゃいけない時はある」
「だが俺の親父の形見だ」
「おい、正論……」
「正論、それを貫くことが……死んだ親父を俺の人生で生かすただ一つの孝行なんだよ」
玉均は面食らっているようだった。
「くっくっく……ここまで頑固ものだったとはな」
「すまん」
「いや、面白い」
「……面白い?」
「……俺達がやろうとしてること、何か分かるか?」
「……革命だ」
「そうだけど違う」
「?」
「国を乗っ取った悪い奴らから、国を取り戻す愛国事業だ」
「――」
俺は面食らった。仮にも王族となった閔妃を……悪と表現できるとは。
「祖国を愛してる。やらなきゃいけない」
「玉均……」
「日本を見てきた。……ぶっちゃけ、この国よりずっと良い」
「そんなにか?」
「あぁ。そもそも江戸時代の時点で朝鮮のどの時代より遥かに進んでるな」
「……どうして向こうは朝鮮より発展したんだろうな」
「簡単だよ。中国に貢いでねえ」
「……」
「そして、職人を大事にしてる」
「しょ、職人を? 信じられない。だって職人なんて他人の為に生きる人々で……馬鹿にされるものだろ?」
「日本では好かれるらしい。それどころか、尊敬さえされてる」
「……そうか。朝鮮戦争の時も、倭寇の時も日本の技術力に驚いたという昔の本があったけど……それは人を尊重する精神があったからこそなんだな」
俺はしみじみと歴史に思いを馳せた。
「そうだ。それはこの朝鮮に一番ないものだ。国を愛する俺達より……閔妃の奴は、呪術師の『真霊君』に課金する方が大事なんだよ」
「あの野郎だけは許せねえ……」
俺は肩をぷるぷると震わせた。
真霊君、それは朝鮮民族にとって最大の癌である。
国の為に生きるのでなく、呪術を信仰させる詐欺士に他ならない。
まさに国賊。閔妃はそいつの呪術に……国費を使っている。
そんなのより技術者に金を出せばいいのに。
それで日本みたいに発展すればいいのに。
だというのに、俺達みたいな真面目な奴を同胞の中でも罵倒してきたりする奴がいる。
それが悔しくてたまらない。
だが希望はある。
目の前の男だ。
「福沢先生って、信頼できるんだよな?」
「あぁ。俺が維新を起こしたいって言ったら金くれたぜ」
「金を!?」
「あの人は善人そのものさ」
「凄いな……」
「だけどまずいのは貰った金を俺の仲間は風俗代に全て使ってしまったことだ」
「ぶーーーーー!」
俺は酒を噴き出してしまった。
「ま、まずいだろそれは……」
冷や汗がどろっと出てきた。気持ち悪い。
いや、そんなことより福沢諭吉さんに嫌われたら大変だろ。慶応大学ってのがどれだけ凄い大学かは知らない。
だけど大学を作ることが出来るなら知識人とのコネや資産力がある。
そんな人の面子を丸潰しにしてしまったら、大変だ。
日本の助力を受けられなくなるかもしれない。
そうなれば朝鮮は日本のようにゼロから脱亜入欧しないといけなくなる。
それは恐らく不可能だろう。
クソ塗れで汚いソウル、それを変えることが出来るなら……お人好しの日本人に頼るしかない。
恩を仇で返してはいけないんだ。
だが今はダッシュする前のスタートで躓きそうだ。
どうすんだよ、祖国。
これでいいのかよ。
「幸い、福沢先生にはまだバレてないが、バレるのは時間の問題だ」
「だよな……」
「福沢先生、滅茶苦茶綺麗な眼で言ってきたんだ。朝鮮の独立を応援するって」
「いい人だな」
「身分の低い武士だったらしくてな……自分より馬鹿だけど生まれだけは良い奴らに頭を下げてたのが嫌だったらしい」
俺は閔妃のクソむかつく顔を思い出した。
「共感するわ、その話」
「だからな、その……欧米に見下された日本を嘆いてるから、朝鮮が独立してくれるのを歓迎する……その為の努力を友好国として惜しまない……そこまで言ってくれたんだ」
「天皇かなんかか? いや、その……なんでそこまで高潔なんだ? というか、本当に存在するのか、その人」
ここまで上手い話はくそったれカルト宗教でも聞かない。
福沢諭吉、なんていう存在は……いや、日本そのものが架空の存在なのではないかとさえ思えてくる。
俺は疑問の目を金玉均に向けたが、奴は苦笑した。
「普通の日本人だよ、福沢諭吉先生は」
「まじか……」
「衣食住足りて礼節を知る。朝鮮人も衣食住が足りれば……礼節を知れると福沢先生は言われた」
「そうだと良いな」
出来る、だろうか。日本みたいな綺麗な精神を朝鮮が持つことは。
あの王宮にいるような奴を悪として裁くこと……裁かなくても追放されること、出来るのだろうか?
「カルト宗教に乗っ取られた国を、変えたい」
「カルト宗教、ね。正直ムーダンがカルト宗教とは思ってない」
「何……玉均、閔妃の肩を持つのか?」
「信仰は自由だ。問題は、国税を使って課金してることだな」
「……その通りだな」
「今となっては昔の朝鮮でムーダンを規制したのは分かる。入れ込みすぎて国税を使う奴を規制しようとしたんだな」
「まさに、その被害を受けているのが俺達……いや、全ての朝鮮人ってわけか」
「閔妃は異常だ。そして国王は閔妃の言う通りに動く」
「もう少し国王が真面目に政治やってくれたらいいのにな」
「大院君……前国王がまだ国王やってくれていたら良かったんだが」
「そうだな」
俺と金玉金は同時に溜息をつく。
やれやれ。
朝鮮はまるで地獄のような状態だ。
綺麗な朝鮮を俺達が拝める日は来るのだろうか?
溜息が止まらない。
翌日。
俺は会計部門に行って、閔妃の遊行費を調べた。
それはもう散々だった。
「酷いな。自分の生まれた国を……大切にしてくれる人じゃない」
王族は尊いと言う。
本当にそうだろうか?
俺の目の前には、悪魔の帳簿とでも思しきものがある。宗教を否定しない。
だけど、国を乗っ取って、国税を私利私欲に使うってんなら話は別だ。
止めて欲しい。
俺の生まれた国が、何でこんな腐敗してなきゃいけないんだよ。
俺は帳簿を閉じる。
そしてそこからはしばらく文官として真面目に勤め、嫌な上司や職場の同僚に嫌がらせをする日々を送るのだった。
しばらくして。
俺の目の前には、親友の生首があった。
「玉均……」
悲しい。
国を思った国士。
いつか一緒に、救国の英雄になろうと誓い合った友。
それはあろうことか、閔妃に殺された。
そして広場で見せしめとして晒されている。
俺達は……日本の維新志士のように、国を救おうと思った。
未来の朝鮮民族に誇れる朝鮮を残そうと思って真剣に生きた。
「その結果が、これかよ」
俺はむしゃくしゃした。
ただでさえ不細工な俺の顔は、今もっと不細工になっているだろう。
許さない。許さない。
何でこんな酷いことをするのか。
閔妃は国の為に何もしてくれていない。
酷いにも程がある。
国費で宗教に課金するのも、まだ許せた。俺より国を思って無くても、俺より馬鹿でも、まだ許せた。
だけど。
「親友を……ここまでされて何も思わないわけにはいかねえ」
俺は玉均の生首に一礼する。
「……」
仇をとろうだなんて思ってない。
未来の朝鮮人は、俺のことより閔妃を庇うクソ野郎共かもしれない。
でも俺は今、正義を思わずにはいられなかった。
閔妃と大院君、どちらも政争を考えていて国の未来も朝鮮の民のことも考えてなどいないかもしれない。
だがはっきりしているのは閔妃より大院君の方が国益になることだ。
閔妃はロシアから借金した金で、ムーダンの真霊君とか言うゴミに課金してると言う。
ふざけんじゃねえ。
国費どころか、外国から借金してまで、カルト宗教に貢ぐ?
それなら日本の助力がある大院君の方が幾分マシに運営するだろう。
閔妃の課金で、ただでさえか細い民は、ますます痩せ細っている。
閔妃達は気付いていないだろう。
こんなに誇れないような惨めな状態にしたのが、カルト宗教への課金だということに。
伝統文化への保護、とでも言えば何でも通ると思ってやがる。
「そろそろ、動くか」
俺は大院君の元へと向かった。
しばらくして。
あれから数年が経った。
色々あって、閔妃は死んだ。
日本人が殺したとも朝鮮人が殺したとも両方聞く。
まぁ、どっちでも良い。
問題は、目の前の光景だ。
「ソウルがこんなに綺麗になるなんて、日本に着いて良かったぜ」
俺は目の前の光景を見てご満悦。
今までの朝鮮には無かった綺麗な建物の数々が建っている。
日本から資材を運んで日本の金で日本の職人が作ったのだ。まぁ、地元の雇用も考えてくれて朝鮮人も大量に雇用してくれているのだが……。
あれから、風の噂で聞いたところによるとやはり福沢諭吉先生は大激怒したらしい。
しかし、俺は思わずそれを聞いて泣いてしまった。
福沢先生は脱亜論を書いたが……彼が激怒したのは、俺の親友……金玉均の処刑に何より怒ったらしい。
「差別とはどこまでも遠い人々だな、日本人とは」
俺は町を一望する。
俺は親日派として未来の朝鮮人に罵倒されるのか、それとも尊敬されるのか。
あわよくば、思ってしまう。
「認めて、欲しいな。俺は朝鮮を思って……日本に併合を願い出たんだ」
喜ばしいのは、クソ塗れのソウルが映っていることだ。
写真。あれは凄い技術だ。
あれがあることで……俺のやり遂げたことは証拠として残る。
朝鮮の民の為で無く、自分の宗教熱の為に国費を使ったり外国から借金したり、愛国者さえ手に掛けた閔妃を俺は絶対に許さない。
朝鮮民族一番の敵とは誰か、閔妃である。
そう言わざるを得ない。
完全なる悪魔だった。
そして……恥ずかしながらロシアからした借金、あれを払ってくれたのは日本だ。
「日本には一生、頭があがらないな」
俺は頭をかく。
全く、やることは山積みだ。
俺は今、朝鮮総督府で働いている。
愛国者の俺は……『一進会』として工作活動をした。
人口七百万人の朝鮮で、百万人の朝鮮人を加盟させ、朝鮮側から『日韓併合』を要求した。
その最大の立役者が俺だ。
全ては、朝鮮の民を幸せにする為に行ったのだ。
そんな俺は、国の私利私欲が渦巻く国政からもはや身を引こうと思っていた。
しかし、とある日本人が……俺に声をかけた。
「お前みたいに勤勉で、愛国心がある頑固者を遊ばせておくやつがあるか。俺の部下を紹介してやる。朝鮮の為に尽くせ。それが墓で眠る金玉均とお前の父も望むところだろう」
……ひょんなことから、俺は日本を観光し、福沢諭吉先生に出会ってそう言われた。
俺は、正論を言われて……泣いた。
ぼろぼろと、大の大人が、泣いた。
嬉しかった。
正論を言われて……俺はどうしようもなく嬉しかった。
福沢諭吉先生は、俺に朝鮮の辞書を作れとおっしゃった。
そして尊敬できる方を紹介してくれて、俺に「人生をかけてやり遂げろ」と激励を飛ばした。
俺は彼に会った時、こう言った。
「朝鮮に辞書なんて必要ですか? それよりも日本語や英語の辞書が必要だと思うのですが」
彼は言い返してきた。
「俺はな、相手の国の文化を尊重するんだよ。日本の金で、朝鮮の文化を大切にしてやる」
……閔妃の朝鮮と、天皇の日本とはこうまで違うのか。
福沢諭吉さんが生まれたのが日本で良かった。
朝鮮にいたら、金玉均のように殺されていただろう。
俺は、ふと笑って返した。
そして今、沢山の文章を見て四苦八苦している。
国費。それは血税である。
朝鮮民族の生き血を啜った悍ましい女、それが閔妃だ。
国税でカルト宗教に課金するんじゃねえ。外国から借金して、カルト宗教に課金するんじゃねえ!
「……福沢先生の面子を潰すわけにはいかない」
俺は日の丸のはちまきを巻いて、仕事を始めた。
ハングル。
朝鮮語の、初めての辞書を作るのだ。
綺麗な建物を建ててくれた。これから小学校も大学も病院も農場もダムも造ってくれると言う。
噂で小耳にしたのだが、何でも朝鮮北部の水豊には世界最大のダムを造る計画があるらしい。
俺は……そこまでお膳立てされたら、やるしかない。
「良い辞書、作らないとな」
俺は執筆を開始した。
1920年。
俺の書いた辞書が、朝鮮総督府から出版された。
嬉しい。
俺はその辞書を金玉均と父の墓に見せに行った。
実は子供はいない。妻もいない。
だけど満足だ。
俺のやったことは……ハングルを残したことは、未来の朝鮮人に良いと思われているだろうか?
罵倒されているだろうか?
それとも、何とも思われず普通に使われてたり使われてなかったりするだろうか?
分からない。
だが、目の前には俺が仕事をしたという結晶がある。
日本は京城帝国大学という大学を作ってくれることになった。そこで、俺の辞書がちょっと教えてくれたら……まぁ嬉しいな、なんて妄想している。
でも何で京城帝国大学なんだろう? その内改名して欲しい。
ドイツの一番良い大学はベルリン大学、日本の一番良い大学は東京大学だ。
なら、朝鮮で一番良い大学はソウル大学としていいだろう。いつか、改名して欲しい。
なんかその方がすっきりする。
……俺は辞書を持ったまま、独立門をくぐる。
独立門。
そう、属国だった俺の祖国は……大清帝国から独立したのだ。
近くにある門を一瞥する。迎恩門。
そう、あそこで昔……大清帝国の役人が来たら朝鮮の王が土下座をしていたのだ。
屈辱の歴史。
日本の天皇は朝鮮の王族にそんなことを決して要求しなかった。
それどころか、独立さえ与えた。
閔妃がやったロシアへの借金を、肩代わりしてきた。
だからか、今の朝鮮の民は……とても穏やかな目をしている。
違うのは、元貴族の連中だ。
リャンバン。
あいつらは、まぁ……働かなくて良い身分から働く身分になったので、日本を嫌っていたりする。
あと虐めていた平民に仕返しされていたようだ。身から出た錆、だと思うのだが彼等は日本を恨んでいる。
……国がカルト宗教に汚染されて、それが浄化されるまで人生が終わるほどの時間が経った。
そして、日本も上級国民というのはいるらしい。
爵位持ちの、藤原五摂家。
彼等に対して日本人は何も言わないのだろうか?
福沢諭吉先生に聞いても、これには答えをはぐらかされてしまった。
だが……日本は国が傾くほど宗教に課金はしていない。
結局、成り上がってしまう一族、というのはいるのだろう。
良かれ、悪しかれ。
未来に生きる日本人と朝鮮人が、憎み合っているのか、愛し合っているのかは分からない。
だが……子孫達よ。恥知らずにはなってくれるな。
日本はこれだけのことをしたのだ。
恩を仇で、返さないでくれよ。
心臓が、痛む。
激務に追われた人生だから無理もない。
……親日派。それを悪口で言われて辛かった。それを言うなら親露派の閔妃は借金して、カルト宗教に課金したじゃないか。
俺は日本から恩を貰って、大学や病院に課金したようなものだ。
閔妃よりはずっとずっと上等の人生のはずだ。閔妃を庇うなら、それは愛国者じゃない。国賊だ。
心残りは、ある。
……恩、返せるような男になりたかった。
日本に、恩を返したかった。
とぼとぼと歩くうちに、俺は……家に着いた。
家には、お手伝いがいる。
「正論さん、遅かったですね」
「あぁ……人生をかけた大仕事が、今日終わったんだ」
俺の顔はとても穏やかな笑みをしていると思う。心が、安らいでいる。
「じゃあ、何か特別なものを作りましょう!」
お手伝いの少年は、笑顔を向けてくる。
「いや、良い。簡単な粥にしてくれ」
お手伝いの少年は不満そうに、台所に向かう。「腕によりをかけて作ろうと思ったのに-」と言って。
……俺は戦った、カルト宗教に対して。
……俺は頑張った、私利私欲を貪らず、ただ愛国を……朝鮮にも日本にも出来る限り果たした。
ふと、気付く。
俺の体は透けて浮いていた。
「正論さん? ……! 正論さん!」
お手伝いの少年が、俺の体を揺するのを……肉体から離れた状態で見ている。
……そうか、俺は死んだのか。
帰るんだ。
金玉均や父がいる場所に、俺も帰る。
来世は……日本人に生まれて、日本に恩返しをしたいな。
他の朝鮮人は俺を裏切り者というかもしれない。
だけど俺からすれば、カルト宗教に課金していた閔妃を……誰も止めてくれなかった。
それどころか、閔妃についた奴が多かった。
そして俺は気付いている。
……きっと俺は、感謝なんて未来の朝鮮人にされないということに。
俺の意識が消えて行く。
今いる場所が、どこか分からない。自分が何ものかさえも分からなくなっていく。
眠い……。
……。
…。
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