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異世界でエッセンシャルオイルのお店始めました  作者: ミルクティーのアイス
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前世を思い出しました

初投稿です。暖かく見守ってください。

朝、ふと目を覚ましたら、前世が蘇ってきた。

桜井優季としての前世、日本という国で過ごし、アロマセラピストとしてアロマの普及やオイルマッサージで人々を癒す仕事をしていたことを。アロマサロンを経営していたことを。

そして、今の現世では、子爵令嬢ローザ・カンタレス15歳であることを。


考えを整理していると、トントンとノックの音がする。侍女のエルサが来たのだろう。

「お嬢様、おはようございます。よく眠れましたか?」

「おはよう、エルサ。眠れたわ。今日もいい天気ね。」

「そうですね。今日も気持ちのいい日ですね。さあ、お嬢様お着換えをしましょう」

会話をしていても混乱はない。うん。良かった。今の状態は、生まれ変わり、転生なのだろう。

よく読んでた小説にあったな…なんて考えていると、もう朝食が終わっていた。


カンタレス子爵領では、花の栽培がメインの農業が盛んな地域だ。王都にも近く、馬車で30分ほどの距離にあるため、カンタレス領の花畑はデートスポットとして有名で良くプロポーズしているカップルを見かける。

花の栽培だけでやっていけるのかと思うが、この世界にはエッセンシャルオイルがある。領で育てた花はほとんどがエッセンシャルオイルになる。それも前世の使い方、アロマテラピーやオイルマッサージなどと違って、魔法を使うときの補助として使っている。

一般的には5歳の誕生日に魔法を授かるが、全部の魔法が使えるわけではなく得意、不得意な魔法がある。また、ほんの稀にだが、5大魔法(火、水、土、風、木)以外の魔法を授かることもある。

かくゆう私も、公表はしてないが特殊魔法の分析魔法を授かっている。

だけど、全部の人がオイルを使って魔法を使うかというとそういうわけではなく、魔術師や聖魔法が使える治療師など魔法系の仕事に就いた人たちが使っている。オイル自体も高いのだ。

魔法を使うときに使うと魔力が増幅されるらしく、どうやって使っているのかはわからないが、威力が増すらしい。しかも、使用するオイルによって使う魔法の相性があるらしく、それを調べている研究機関もあるほどだ。

わかっているのは、ラベンダーは癒しの効果があり特殊魔法の聖魔法全般と相性が良いとか、オレンジオイルは火魔法と相性が良いとか。前世での効能と似ているような似ていないような感じだ。


だけど、私は運がいい。エッセンシャルオイルがあるのだ。すぐそこに。前世、大好きで仕事にまでしていたエッセンシャルオイルが。それは、使いたくなるではないか。なのに、一般の人には使われることがない、魔法専用だと思われれている。

私だって、オイルを使いたい。魔法が使えなくても前世のエッセンシャルオイルのように使いたい。あわよくばアロマサロンをもう一度やりたい。ならば、子爵領にあるオイル工房に行ってみたい。やってみたいと思ったら行動だ。


「お嬢様、今日はどうされますか?」

「オイルを作っている工房に行ってみたいのだけど、今からアポイントはとれるかしら」

「オイル工房ですか?また、どうしてそのような所に」

「だって、子爵領のメインの特産物でしょ。私も領のことを知って役に立ちたいのよ」

「勉強嫌いのお嬢様が珍しい」

「勉強はあまり好きではないけど、自分にできることがあるんじゃないかと思って」

「まぁ、お嬢様も成長なされて。わかりました。アポイントを取ってまいります」

領のことも考えてはいるけど、本当は行ってみたいだけなんだけど。

でも、取ってくれることは行けるってことで大丈夫そうだ。

サラはアポイントを取りに部屋を出たがそれほどかからずに戻ってきた。

「お嬢様、午後からなら良いそうです」

「わかったわ。よろしくね」


午前中は、家の図書室でオイルのことを下調べして過ごすことにした。子爵領で作っているオイルはローズ、ラベンダー、ジャスミン、ローマンカモミール、ネロリ等の花のオイルがメインで、少しだがオレンジやライム、レモンの柑橘系のオイルもあるらしい。

午後から行くところは、花のオイルがメインで水蒸気蒸留法で抽出する工房だそうだ。



工房に行くと工房主である主人が迎えてくれた。

「初めましてお嬢様、工房主のロッジです」

「初めまして。ローザ・カンタレスです。急なお願いを聞いてくださりありがとう」

「いえいえ。領主のお嬢様が興味を持ってくださるのはうれしいことです」

と笑顔で迎えてくれた。

ローズのオイルは大体20日前後でしか生産ができないため今はとても忙しいが、ありがたいことに少しならと時間を空けてくれたようだ。


早速、工房をのぞかせてもらうとローズのいい香りが広がっていた。

「今、ローズを蒸留しています。一日かけて蒸留するのでとても貴重なのですよ」

と前日に出来上がったオイルの入った瓶を見せてくれた。

分析魔法を使用すると、入っている成分は前世と同じ成分で効能も美肌やリラックス効果など同じだった。

作り方は前世と同じようだ。ということは、ローズウォーターもあるということだ。

前世ではローズウォーターは化粧水代わりに使っていた。香りもいいし、美肌効果もある。

「取れたオイルはこのようにボトルに詰めて王都に出荷します。」

「オイル以外の残った蒸留水、ローズウォーターはどうするのですか?」

「お嬢様よくローズウォーターなんて知っていますね。それはほとんど使用しないので処分ですね。」

「えっ捨てるんですか?」

「ええ、使い道も従業員が部屋の芳香に使ったり、体を拭くときに少し入れたりするぐらいであまり使い道もないものですから」

とたまたま部屋の芳香用にとって置いたローズウォーターを持ってきてくれた。

なんともったいないことだろう。

「そのローズウォーター、もらうことは出来ませんか?」

「ほとんど、捨てるものなのでいいですが」

主人は不思議そうに何をするのだろうという感じで許可をくれた。

いやいや、前世と同じなら化粧水に使える。美肌の効能がある。香りもいいし、売り出せばご婦人方に売れることは間違いない。分析してみると美肌の効能もしっかりある。

とりあえず、自分で使ってみて良ければお父様に相談しよう。


侍女のエルサも不思議がっていたが

「分析魔法を使って見てみたら、美肌成分が入っているのよ」

とこそっと伝えると

「ぜひ、持って帰りましょう!」

と張り切って受け取っていた。




ローズウォーターを化粧水代わりに使い始めて半年、とても肌の調子がいい。

使って数日の私の肌を見たお母様は、

「私も使いたいわ!」

とローズウォーターを持って行ってしまった。

今では社交界でもお母様の肌は有名らしく何を使っているのかよく聞かれるらしい。

お母様もまだ秘密にしたいらしく

「特に何もしてないのですけどオホホ…」

とごまかしているらしい。

この調子なら売り出しても大丈夫じゃないかとお父様に相談することにした。

お母様は残念そうだったが。


お父様の書斎でお母様を交えながら話をする。

「お父様、来年の生産からローズウォーターを商品化したいと思います。見てください、私とお母様の肌を!とても若々しいでしょ」

「ローザはまだ若いからよくわからないが…確かに、サラの肌は見違えるように綺麗になったな」

「そうでしょ。いろんな方から聞かれるのよ」

「俺もご婦人のプレゼントにサラの肌の秘密が知りたいと何人からか言われたよ」

「では、お父様、売り出しても良いですね」

「ああ、いいだろう。半年後の生産が始まり次第売り出すことにしよう」


お父様の許可も出たので、早速工房に行き、売り出す手配をする。

何度かお邪魔しているので工房主のロッジさんとは砕けた話ができるようになった。

「お嬢様、ほんとに売り出すんですか?」

「そうよ。私の肌も調子がいいし、お母様の肌は社交界で話題なのよ」

「そうですか。嫁に少し使わせたら肌の調子が良いと言っていましたが、オイルの残りがねぇ。不思議なもんですなぁ」

とぼやいていた。

オイルの残り=出涸らしというイメージが強いらしく、まだ戸惑ってるようだ。

「お母様の社交で貴族からの注文が入ると思うの。きれいな形の瓶を用意して化粧水としての価値を高めましょう」

売り出すまで一年あるとしても何もしないわけではなく瓶の手配や化粧箱など売り出す為の準備はしている。

貴族用なので見栄えも良いものにしないと売れないし、贈答用としての価値もなくなってしまう。

瓶を消毒してローズウォーターを詰めてくれるのは従業員の奥様方がやってくれるそうだ。

早速サンプルとして小瓶に詰めた今年のローズウォーター持って帰りお母様に渡す。

社交界で広げてもらうためだ。

少しずつではあるが、領の特産品であるオイルの副産物がお母様の肌の秘密だってことが広がってきた。

そのため、お父様への問い合わせがかなりあるようだ。

お父様とお母様で優先して融通する貴族を厳選しているらしく、サンプルとして小瓶に入れた商品を渡しているらしい。

今まで使っていた化粧水より倍近く高い設定価格なのにこぞって予約購入したいと連絡が来るそうだ。ただ今は、それほど多く量がないため、一家に一つとサンプルを渡すのみにしている。

王家からも連絡があり、流石に他の貴族と同じように一つとはいかず、王妃様と王女様の分で2本用意をした。


ある日、お父様に呼び出され書斎に行くとお母様もそろって待っていた。

「お父様、お母様、どうしましたか?」

「ローズウォーターなのだけど、評判がいいでしょ。ほかのオイルの蒸留水ではどうなのかしらって思って」

「ラベンダーも同じように肌に良いですわ。ローマンカモミールも皮膚炎などの炎症に効果があるかと。あとはネロリとかですが、樹齢20年以上の樹木のものでないと効果がないのでこちらも貴重なものになるかと」

「そう、ラベンダーにローマンカモミールね。来年のローズウォーターと同時に販売できないか相談してくれるかしら」

「わかりました。工房に相談してみますわ」

少し考えるふりをして、ある提案をしてみた。

「それよりもっと効果があるのがエッセンシャルオイルなのですが、魔術師に売る以外は難しいですか?」

「どういうことなのかしら?まったく言っている意味が分からないのだけど」

「エッセンシャルオイルにも蒸留水と同じいやそれ以上の効果があるんです。原液で肌につけてしまうと強すぎるため希釈オイルやクリームで薄めて使用しないといけないのですが」

「ローズウォーター以上に!あなた、どうにかできないかしら」

さすがにお母様は美肌のこととなると本気だ。

お父様に強く迫っている。

「そうだなぁ。ローザがそういうってことは分析魔法でもつかったのか?試してみて大丈夫なら売り出すこともいいだろうが。」

「はい。オイルの分析は済んでいます。すべてのオイルが美肌に良いというわけではないのですが。希釈オイルもいくつか探して用意していますわ。また、エッセンシャルオイルは原液を素焼きの陶器や木材などに含ませ部屋に香りを広げると精神的な効果もあることも分かっていますわ」

これが実現できればアロマサロンのお店を持つという目標も近づく。何としても結果を出したいところ。

「どのオイルでもか?」

「そうですね。オイルによって効能が違いますが」

「わかった。ローザ、やってみなさい。いつの間にかずいぶん成長したんだね」

お父様は優しい笑顔で私の顔を覗き込んだ。お母様も優し気に私を見ている。

「はい、ありがとうございます。絶対結果を出して見せますわ」

また、エッセンシャルオイルはお父様にお願いして工房ギルドに掛け合ってもらい一定以上の品質を保持したものを融通してもらうことになった。


3か月後、エッセンシャルオイルを使用した化粧水、クリームが完成した。好みの香りや肌の状態によって選べるようにローズ、ラベンダー、ローマンカモミールの3種類を用意した。どれも美肌の効能が入っているオイルだ。

また化粧水は蒸留水のみ、精製水にエッセンシャルオイルをキャリアオイルで溶いたものをいれて作ったもの、蒸留水にエッセンシャルオイルをキャリアオイルで溶いたものを入れて作ったものの3通りだ。

実際にお母様や、お屋敷の侍女たちに使ってもらい肌がどうなったのか試してもらった。

また、お茶会で知り合った仲の良い友人たちにも試してもらった。

魔術師が使っているエッセンシャルオイルを使っているというととても驚かれたが、肌がきれいになるのなら使ってみたいと言われサンプルを渡した。

アレルギーがあると困るので使用する前にはパッチテストをしてもらい、香りの好みや肌の状態から選んでもらった。

その結果、見違えるように肌の調子が良くなった。お母様はますます綺麗になり王妃様より化粧水の催促が来たそうだ。貴族に販売する前に、王妃様にはサンプルを渡す約束をしてきたと言われた。

友人たちには早く販売しないのかと直接私に手紙が届くようになった。





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