1.現れたのは。
ここから第1章。
短いですが、キャラの濃いのが出ます(;^ω^)
――翌日、ボクの進級は決定した。
ただ、それ以上に最下級の基礎魔法【ファイア】で叩きだした異例の威力。それによって、魔法学園はボクという落ちこぼれの話題で持ちきりだった。
というのも、決してすべてが好意的なものではなく……。
「どんな不正をしたんだ……?」
「さぁ? いずれにせよ、いつかは化けの皮が剝がれるさ」
そんな内容が大半だった。
この評価に対しては、ボク自身も納得している。
今までまともに魔法を使うことができなかった奴が、いきなり異様なまでの成果を上げた。学園が認めはしたものの、周囲が簡単に信じるとは思えなかった。
ボクも、いまだに半信半疑だし。
「……でも、さ。あれって、現実なんだよね」
「はい、そうです。あれがマスターの中にある潜在魔力です」
しかしながら、ボクの中にいる神槍はそれを肯定した。
曰く、こちらの中にある潜在魔力の一部が制御できなかった結果らしい。そのあたりはまだまだ改善の余地があれど、自信は持って良いとのことだった。
グングニルが面白いと呼んだ潜在魔力。
それはすなわち、規格外とも云える力の塊のことだったのだ。
「……うーん…………」
「どうしたのですか、マスター?」
でもそこで、ボクは一つ悩む。
どうしたのかと訊ねてくる相方に、ボクは素直な心の内を吐露した。
「いや、ね。あまり悪目立ちしたくないな、って……」
というのも、今回の一件で変な噂が立っている事実について。
ボクは努力が認められることが嬉しい反面、悪評が立つのを恐れていた。そもそも今まで期待されていなかった学園生活。
いきなり評価されなくても良い。
ゆっくりと、正当な評価が下されればいいと思っていた。
「ふむ、なるほど……」
それを聞いて、グングニルは考え込む。
こちらの意図が伝わったのか、神槍はこう提案してきた。
「それではまず、魔力制御の訓練から始めましょう。差し当たっては――」
そして、それに耳を傾けようとした瞬間だ。
こんな声が響き渡った。
「やあ、キミがディン・アルケイオスくんだね!!」
「…………へ?」
なんとも芝居がかった口調。
声高に放たれたそれは、静かだった廊下に広がった。
ボクは思わず呆けた顔をしながら、目の前に立つ声の主を見る。
「さあ、この私――トール・ディアミスと決闘をしようではないか!!」
「………………」
長い赤髪に、自信満々な金の瞳。
端正な顔立ちをした上級生男子は、嬉しそうにそう言っていた。
これがボクと学園主席のトール先輩との出会い。
そして、事件の始まりだった。
面白かった
続きが気になる
更新がんばれ!
もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより評価など。
創作の励みとなります。
応援よろしくお願いいたします。