2.魔法の基礎知識について。
ここまででオープニング。
次回から1章です!
「それで、グングニルはボクの中にいるんだよね……?」
「はい、そうです。有事以外は外に出ると、かさばりますので」
「自分で自分のこと、かさばる、って言うのか」
帰宅し、自室で姿の見えないパートナーと言葉を交わす。
ベッドに横になっていても、常に頭の中に相手の声が聞こえてくるのはとても不思議な感覚だった。それでも嫌な感じではなく、むしろ心地良いくらいだ。
そう考えていると、グングニルは感心したように言う。
「ほう……。マスターの魔法の才は、なかなかに面白いですね」
「へ……?」
まったく予想もしていなかった言葉に、ボクは面食らう。
しかし、少し考えて笑いながらこう答えるのだった。
「……あ、あぁ。からっきし、でしょ?」
そう苦笑する。
だが、すぐにグングニルは否定した。
「いいえ、そうではありません。マスターの潜在魔力量は、類稀なものを持っていると、そう言っているのです」――と。
つとめて真剣な声色で。
そのことにボクはまた面食らいつつも、どうにか訊き返した。
「それって、どういう……?」
「本来、魔法というものは魔力を秘めた人間であれば『誰でも使える』ものなのです。問題はその魔力にかかった――鍵のようなものを、上手く外せるかどうか。【この世界】の人々は、どうやらそれを親から子への伝承によって行っているようですが、ね?」
すると、グングニルはつらつらと魔法理論を語る。
この槍の言ったように、魔法の才というのは何世代にもかけて研磨していくものだ。ボクのように突然変異的に魔力に目覚める場合もあるが、基本的には前者が多い。
しかしグングニルの言葉を追ってみると、少し常識からは離れているようだった。
「それってつまり、鍵を外せればボクでも魔法が使える、ってこと?」
なので、理解できた範囲で訊いてみる。すると――。
「はい、そうです。要はコツなのですが、マスターであればすぐに可能かと」
「本当に……!?」
あっさりと応えられて、思わず大声で驚いてしまった。
ボクの中に眠っている潜在魔力量、というのがどれだけかは知らない。それでも、もしそれを解放することができたなら。と、考えていると……。
「あの、お兄様。先ほどからいったい、誰とお話しておられますの……?」
「え、あ……ココ?」
ドアを薄っすら開けて、二つ下の妹がこちらを覗き込んでいた。
彼女の名前はココ・アルケイオス。去年からボクの代わりに騎士学園に通っており、非常に優秀な成績を修めている自慢の妹だった。
金の髪に、少し攻撃的な印象を受ける青の瞳。
小柄ながらもココから感じる圧力は、なかなかのものがあった。
「え、えっと……あ! いや、本の朗読をしていたんだ!!」
「朗読、ですか?」
「うん!!」
ボクが慌てて言い訳をすると、ココは少しだけ訝しむ。
だが、すぐに興味を失ったのか一つため息をついて言った。
「……もう、夜も遅いですから。気を付けてくださいね?」
「ご、ごめん」
「では、おやすみなさい。お兄様」
「おやすみ、ココ」
彼女が去っていくのを確認してから、ボクはホッと胸を撫でおろす。
そして、今度は小声でグングニルに訊ねるのだった。
「それじゃ、ボクに鍵の解き方を教えてくれない、かな?」
すると槍は、あっさり。
「承知いたしました。それでは、まず――」
そう快諾し、マンツーマンでの魔力解放講義が始まるのだった。
◆
――翌日。
魔法学園の授業の中には実践訓練というものがあり、今日はその日だった。
王都の外れにある森から、極めて弱い魔物を弱体化させ、管理を徹底した上で連れてくる。そして、それを生徒が魔法で倒すというものだ。
ボクは今年でこの課程を修了する予定なのだが、点数によっては留年。
それを知っている周囲は、ボクの番はまだなのに茶化してきた。
「おいおい、大丈夫なのかよディン!」
「あーあ、来年から後輩って呼ばなきゃいけないのかー」
「せっかくだから、一緒に進級したかったんだけどなぁ~!」
誰もかれも、心にもないことを言っている。
それは普段の口振りや、態度からしてハッキリと分かっていた。でも、このような扱いは今に始まったものではなく、また十二分に慣れてしまっている。
ボクは彼らにとって、鬱憤の捌け口なのだ。
「――次! アルケイオス!!」
「は、はい!!」
だけど、このままで終わるつもりはない。
ボクは檻の中から出てきた『スライム』を見据えて、意識を集中させた。
そして――。
「頼む、上手くいってくれ……!!」
どれくらいの威力になるかは、分からない。
だけど、せっかく足掻けるところまできたなら足掻いてやる。
そう考えてボクは、できる限り最大の魔力をもって【ファイア】を放った!
【ゴオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!】
――瞬間、唖然とした。
だが、目の前で起きたことを理解した時。
ボクはただその場に立ち尽くし、拳を震わせ続ける。
「な、なんだよこれ……!?」
教員の一人が、あからさまな動揺を見せた。
それもそのはずだろう。
何故なら、ボクの【ファイア】は――。
「こんな馬鹿げた威力、あり得ない……!!」
目の前にいたスライムはおろか、訓練場の多くを吹き飛ばしていたのだから。
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